2013年05月01日

『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』お薦め映画

★★★★★ 2012年製作 日 (114 min)
【監督】吉田康弘
【出演者】三吉彩花、大竹しのぶ、小林薫、早織、立石涼子、ひーぷー、普久原明
【あらすじ】沖縄本島から360km東に位置する絶海の孤島・南大東島。 この島には高校がないため、進学する子どもたちは15歳で島を旅立つ。 地元の少女民謡グループ“ボロジノ娘”の新リーダーで中学3年の優奈は、さとうきび農家の父と二人暮らし。 母は兄と姉の進学に同行し、ずっと沖縄の中心地・那覇市で暮らしている。 優奈は北大東島のスポーツ少年・健斗と一緒に那覇の高校へ進学し、母と暮らすつもりでいたのだが…。 ふるさと青春ドラマ。
主題歌:BEGIN『春にゴンドラ』

『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』象のロケット
『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』作品を観た感想TB

画像(C)2012「旅立ちの島唄 〜十五の春〜」製作委員会

shimauta1.jpg 【解説と感想】沖縄県の南大東島は、沖縄本島から東へ約360km、飛行機で約1時間、船で約13時間かかるという断崖絶壁の孤島。ここは1900年に東京の八丈島から開拓団がやって来るまでは無人島で、終戦までは製糖会社の社有島だったという歴史があり、当時から現在に至るまで、基幹産業はサトウキビ栽培である。

本作は南大東島の少女・優奈(三吉彩花)が中学3年になってから卒業するまでの1年間を綴った物語だ。彼女は新垣則夫(実在の沖縄民謡歌手)が主宰する地元の民謡教室に通っており、そこの生徒たちで結成した少女民謡グループ“ボロジノ娘”(このグループも実在する)のメンバーだ。冒頭に彼女が舞台で歌うシーンがあり、まずはそのハレの民謡衣装姿に魅了された。大人になる前の純な美しさが何とも言えない。将来が楽しみだが、今のままの彼女でいて欲しい気もする。

shimauta2.jpg 優奈はサトウキビ農家の父(小林薫)と二人暮らし。島には高校がないため、母(大竹しのぶ)は、兄(小久保寿人)と姉(早織)の進学に同行して島を出て行った。15歳で一人暮らしをさせるのは心配だからか、中にはそういう母親もいるらしい。しかし、母は兄や姉が卒業した今も那覇で働いている。母は末っ子の優奈と一緒に暮らすのを待っているのだと言うが、島へ戻って来ないのは、そんな単純な理由ではないらしい。

優奈は、那覇での新生活への憧れと、住み慣れた島を離れる寂しさ、父を一人残していく不安、母への不信感、姉夫婦の心配、別の島に住むボーイフレンド健斗(手島隆寛)のこと、家族一緒に暮らしたいという願い、ボロジノ娘の卒業コンサートの準備など、考えることが多く忙しい。こんな純朴な少女も、島を出たらあっと言う間に大人になってしまうのだろう。

shimauta3.jpg もし島に高校があったら、優奈の一家は離れ離れにならなかったのだろうか?島で生まれ育ち、サトウキビ栽培しか考えられない寡黙な父親と、島の外から嫁いできた、どこでも働ける気の利いた母親の価値観の違いが、離島の複雑な事情を端的に表しているようだ。

どこまでも続く青い海や一面のサトウキビ畑を前に、独特の節回しの沖縄民謡が聴こえてくると、時間に追われ荒れていた心がスーッと癒されてゆく。行ったこともないのに、南大東島が自分の故郷だったような気がしてきた。しかしそれは、そこに住んだことのない外部の人間の観光感覚なのだろう。風光明媚で人情あふれる故郷を捨て、人々は都会のコンクリート街へ押し寄せる。

終盤に優奈が歌う南大東島の島唄「アバヨーイ(八丈島の方言で“さようなら”の意)」には、両親への感謝と島を旅立つ決意が込められていて、歌詞がそのまま作品のテーマになっているようだ。一言一句が心に染み入り泣けてくる。彼女の純情可憐な姿と歌声は、いつまでも心に残ることだろう。15歳で人生の岐路に立つ少年少女の揺れる思いを描いた、みずみずしい青春ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)



 
posted by 象のロケット at 18:04| Comment(0) | TrackBack(1) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月01日

『セデック・バレ』お薦め映画

★★★★★ 2011年製作 台湾
(第一部:太陽旗 144 min)
(第二部:虹の橋 132 min)
【監督】ウェイ・ダーション
【出演者】リン・チンタイ、ダーチン、安藤政信、マー・ジーシアン、ビビアン・スー、木村祐一
【あらすじ/第一部:太陽旗】台湾中部・山岳地帯。 台湾先住民であるセデック族マヘボ集落の青年モーナ・ルダオは、頭目の息子として村の内外に勇名をとどろかせていた。 1895年、日清戦争で中国・清が敗れると、モーナたちが住む山奥にまで日本軍がやって来て、先住民(蕃人:ばんじん)は、過酷な労働と服従を強いられるようになった。 …それから35年後の1930年、部族の若者が日本人警察官と衝突してしまう…。 

【あらすじ/第二部:虹の橋】1930年、台湾・霧社地区。 セデック決起部隊が警察官駐在所や霧社公学校を襲撃し、多数の日本人が殺されてしまった。 日本軍は直ちに報復を開始するが、山岳地帯という地の利を最大限に生かしたセデックの前に苦戦を強いられる。 襲撃で妻子を殺された小島巡査は、決起部隊のリーダー、モーナ・ルダオと反目していて襲撃に参加しなかった部落のタイモ・ワリスに、日本軍に協力するよう働きかけるのだが…。 「霧社事件(むしゃじけん)」に基づく歴史ドラマ。

アカデミー賞外国語映画賞台湾代表、台湾金馬奨グランプリ・助演男優賞・オリジナル音楽賞・音響効果賞・観客賞・最優秀台湾映画人賞、他受賞

『セデック・バレ 第一部:太陽旗』象のロケット
『セデック・バレ 第一部:太陽旗』作品を観た感想TB

『セデック・バレ 第二部:虹の橋』象のロケット
『セデック・バレ 第二部:虹の橋』作品を観た感想TB

画像(C)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production

seediqbale1.jpg 【解説と感想】 本作は1930年(昭和5年)に日本統治下の台湾で起こった、先住民セデック族の抗日暴動「霧社事件(むしゃじけん)」を題材にした、第一部144分、第二部132分の超大作である。私はこの事件を学校で習った記憶がないし、台湾の先住民のことも知らなかったが、合計276分の授業(上映時間)で事件の概要が掴めた気がする。非常に中立的な目で描かれており、「日本人が台湾でひどいことをした」「台湾の先住民に大勢の日本人が殺された」ことを抜きにして語れないのは当然だが、メインテーマは「台湾先住民の誇り」である。

先住民問題は世界各地に存在する。先住民で良く知られているのが、アメリカのいわゆるインディアン、北極圏のエスキモー、オーストラリアのアボリジニ、ニュージーランドのマオリ、アフリカのマサイだ。日本でも古代に新しい支配者層から追い払われた先住民がいて、北へ行ったのが北海道のアイヌ民族や蝦夷(えみし)、南へ行ったのが沖縄のいわゆる琉球民族や熊襲(くまそ)、山岳地帯へ行ったのが謎の民サンカではないかという説があるが、詳細は不明である。

seediqbale3.jpg 台湾にはもともとポリネシア系と推測される人々が住んでいて、多くの部族に分かれていた。ところが、16世紀半ばにポルトガルにその存在を知られてからは、オランダ、鄭氏(漢民族)、清朝(満州族)、そして日本と、常に外国の支配下に置かれることになった。長い間に混血も進んだだろうが、ずっと昔のままの文化を守って暮らしていた人々もいて、彼らは“蕃人(ばんじん:野蛮人)”と呼ばれて差別されていたのだ。台湾の国立故宮博物館の近くに原住民博物館(中国語では先住民を原住民と呼ぶ)があるそうなので、観光旅行の際にでも立ち寄られてはいかがだろうか。

seediqbale5.jpg 山岳地帯に住む先住民の狩猟民族セデック族は、男女ともに顔に入れ墨をするのが大人の証であり、戦った相手の首を狩ることが男子の通過儀礼であった。それを見た外国人は驚いて、ただでさえ蔑んでいる被支配者層を野蛮人と呼んだのだろう。本作中にも日本人が「俺たちがお前たちを近代化してやったのだ」と言うシーンがあるが、文明開化が余計なお世話の場合もある。彼らはそれまで何も不自由は感じていなかったし、日本的な生活を強要されたせいで、独自の風習が守れなくなってしまったのだ。支配した国を自分たちの様式に染めるのは古代からの習いであるが、中途半端な近代化はかえって混乱をもたらしてしまう。

seediqbale2.jpg セデック蜂起軍のリーダー、モーナ・ルダオ役を始め、先住民の血を引く多くの人々が出演している。モーナの青年期を演じるハンサムなダーチンは、幼い頃から狩りなどの訓練を受けて育ったとのことで、武道家とは一味違う野性味を放っている。壮年期を演じるリン・チンタイは、部族の長で牧師でもあるという。その鋭い眼光からは尋常ではないカリスマ性が感じられ、目が離せない。

seediqbale4.jpg 最後まで戦うことに乗り気でなかったモーナは、まるで大石内蔵助で、死を前提とした突入は、赤穂浪士の討ち入りのように見えた。第一部のサブタイトル「太陽旗」は日章旗・日の丸のことで、第二部のサブタイトル「虹の橋」は、先祖に恥じぬ生き方をした者だけが渡れる三途の川のようなものの意味である。「セデック・バレ」とは“真の人”という意味のセデック語(現在の台湾の国語は中国語)。命より誇りを重んじた台湾先住民の戦いが、今や多数の民族を内包した台湾全体の誇りとなっているように感じられる歴史アクション大作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
posted by 象のロケット at 20:11| Comment(0) | TrackBack(3) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月23日

『クラウド アトラス』お薦め映画

★★★★ 2012年製作 米 (172 min)
【監督】ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー
【出演者】トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー
【あらすじ】悪人で始まった“男”の人生は、6つの時代を越えて、いま、世界の運命を握る! 19世紀から24世紀の500年間を舞台に、時代と場所、性や人種を超えて何度も生まれ変わり、数奇な人生をたどる人々の生き方を通して、未知なる<人生の謎>が解き明かされる…。 SFスピリチュアル・ミステリー。

『クラウド アトラス』象のロケット
『クラウド アトラス』作品を観た感想TB

画像(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

cloudatlas1.jpg 【解説と感想】 基本的に、輪廻転生(りんねてんせい)=「魂の生まれ変わり」を信じる人には、現世(げんせ:今)、前世(ぜんせ:過去)、来世(らいせ:未来)という3つの世界が存在する。普通の人には前世の記憶がないが、稀に覚えている人もいるらしい。縁ある魂は男女・種・立場を変えて何度も出会いと別れを繰り返し、学び合う。下等な魂(悪)は学びを繰り返して進化し、最後には生まれ変わらずに済む究極の境地(善)に至る。現世は魂の修行の場で、出会いや出来事に偶然はない。そんな魂の約束事の全てが記録されている“アカシックレコード”なるものも存在するという。

一方で、生まれ変わりは全て自分自身が意識下で作り上げたもので、人生そのものが幻想に過ぎない、人生はひとつの夢なのだという神秘論もある。今の自分の境遇や人間関係を作っているのは自分自身なので、現世でも自分さえ変われば全てが変わるのだと言う。そんな新旧の宗教や哲学がミックスされた魂の諸説が、世の中にはあふれている。いずれも私には理解不能の不思議な世界だが、物語としてはロマンティックで面白い。影響を受けている映画作品も多い。

cloudatlas2.jpg 本作は、スピリチュアルな方面に興味のある方は必見の、壮大な生まれ変わりの物語である。たくさんの役者たちが、ある時は男性や女性になったり、別の人種になって登場する。
互いにそうとは知らずに再会を果たす人物(魂)同士の関係が進化したり、次の時代に思わぬ間柄となるのは面白いが、なるほどこれが魂の学びなのかといちいち頷いているヒマはない。19世紀から24世紀の500年間に起こる6つの物語は順番に描かれるのではなく、交錯している。上映時間172分と言うと長いが、それを6つに割れば30分弱。それが交互に現れる怒涛の展開だ。

cloudatlas3.jpg さて、「オレ、生まれ変わりなんて信じないし、興味ないよ!」という方は楽しめないのかというと、そんなことはない。そういう方には別の楽しみ方がある。一人六役も演じる役者が何人もいる。誰だが分からない程うまく化けている時もあり、驚いたり感心したり笑ったりで退屈しないのだ。役者としても非常に演じ甲斐のある作品だと思う。ただしこの場合も、「えーっと、この人はあの時の誰だっけ?」なんて、考えているヒマはない。答えが出ないうちに次の物語が飛び出してくる。

cloudatlas4.jpg オリジナル交響曲「クラウド アトラス六重奏」に乗せて紡がれる、南太平洋の航海物語と奴隷問題(1849年)、幻の名曲誕生秘話と禁断の愛(1936年)、原子力発電所の陰謀とエネルギー問題(1973年)、人殺しと老人問題(2012年)、クローン少女の恋と革命(2144年)、崩壊後の地球と人類の今後(2321年、2346年)という6つの物語は、それぞれ独立した物語としても楽しめる内容だ。決して「魂の生まれ変わり」に溺れてはいない。過去から未来へ至るまでに人類が遭遇する問題を提起し、現在の私たちひとりひとりの行動が、人類や宇宙の未来を左右するのだというメッセージが込められている。

目の前の恋人や家族、同僚や友人をじーっと見つめれば、前世の姿が垣間見えるだろうか? ピピッと来たこの人こそが元カレだと禁断の恋に走ったり、イケ好かないアイツは親の仇に違いないとイジメ抜きたくなるかもしれないが、大きな勘違いということもあるのでご注意を。愛する人との来世での再会も楽しみになってくるSFスピリチュアル・ミステリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)



 
posted by 象のロケット at 20:37| Comment(0) | TrackBack(11) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月01日

『脳男』お薦め映画

★★★★ 2012年製作 日 (125 min)
【監督】瀧本智行
【出演者】生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみ、太田莉菜、大和田健介、染谷将太
【あらすじ】都内近郊で無差別連続爆破事件が頻発していた。 刑事・茶屋は犯人のアジトを突き止め踏み込むが、犯人はアジトを爆破し逃走。 現場で犯人と格闘していたらしい男が共犯者と見なされ逮捕される。 鈴木一郎と名乗るその男の精神鑑定を依頼された精神科医・鷲谷真梨子は、全く感情を表さない彼に興味を持ち、鈴木の本名や過去を調べ始める。 そんな中、鈴木を乗せた護送車を、爆撃犯の若い女二人組が襲撃する…。 ミステリー。
原作:首藤瓜於 主題歌:キング・クリムゾン『21世紀のスキッツォイド・マン』

『脳男』象のロケット
『脳男』作品を観た感想TB

画像(C)2013 映画「脳男」製作委員会

nootoko1.jpg 【解説と感想】 たくさん映画を見ていると、題名や内容をあっという間に忘れてしまうことも多い。私の脳の記憶容量が小さいために、忘れ去ることで脳を守っているのだと勝手に解釈している。そんな私でも「脳男」いう強烈なタイトルは決して忘れない。ストーリーは…もちろん忘れたわけではないが、あまり多くを述べない方が楽しめるだろう。

爆破事件の容疑者である主人公の脳男こと自称:鈴木一郎(生田斗真)は、知能が高くハンサムで運動神経抜群。しかし、取調室での受け答えは人形のようで、感情のカケラも見えない。ワクワクさせる導入部である。ひょっとしたら脳男は犯人ではないかもしれない。だが、全くのシロではなさそうだ。

脳男は正体が明かされた後でもなお、理解し難い人物である。動機が今一つ断定できないのだ。何を考えているのか誰もが知りたいところだが、脳男は精神科医・鷲谷(松雪泰子)から虚を突くように「私とセックスしたい?」と繰り返し質問されても、動揺したり笑ったりするどころか、まばたき一つしない。(こういう際どい質問は松雪泰子のような美人だから許せる。)しかしながら、そこはかとなく悲しみが透けて見えてくる。見えない涙が見えてくる。

これまでの生田斗真主演作の中で、本作はピカイチの作品だと思った。劇中でかなりの量のセリフを喋るが、共演者に対してはずっと無表情で感情を見せない一方で、観客には脳男の内面をしっかりと伝えなければならないという、ハイレベルの演技が求められる。きっと彼も、こういう仕事を待っていたに違いない。筋トレや武術鍛錬、食事制限という肉体改造と、引きこもりになるほどの感情移入と、役作りにも力が入ったらしい。その準備は当たり前とも言えるが、人気者であればあるほど、その時間を取ることが許されないのが実情だろう。是非、今後も頑張って欲しい。

原作は2000年に第46回(江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於(しゅどううりお)の推理小説。異色のダークヒーロー“脳男”という設定が斬新な上に、どのキャラクターも魅力的に描かれている。医師・鷲谷と刑事・茶屋(江口洋介)は、数少ない脳男の理解者である。ダークヒロイン(原作では男性)として登場する緑川(二階堂ふみ)は、脳男に匹敵するほど知能指数の高い“脳女”。破滅的でエグいが、幼稚さが先に立つ。ハードボイルドな描き方は好きだが、ラストの展開には賛否両論が巻き起こりそうだ。

プレス資料はまるで写真集のようだし、スクリーンの中の脳男も徹底的に美しく魅力的に撮られている。ただ、残虐シーンも多いのでご注意を。動機は正反対でも、ためらいなく殺人を犯す若者たちの頭脳戦が繰り広げられる、戦慄のバイオレンス・サスペンス。役者・生田斗真の新しい魅力を発見できるお薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)



 
posted by 象のロケット at 13:59| Comment(0) | TrackBack(11) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月08日

『みなさん、さようなら』お薦め映画

★★★★ 2012年製作 日 (120 min)
【監督】中村義洋
【出演者】濱田岳、永山絢斗、波瑠、田中圭、ベンガル、大塚寧々
【あらすじ】1981年。 東京郊外の巨大な団地に母親と暮らす渡会悟は、小学校を卒業すると「一生、団地の中だけで生きていく!」と宣言! 中学へは一切通わず、早朝から乾布摩擦、ラジオ講座での英語学習、ランニングに読書、夕方は帰宅してくる同級生たちと語り合うという独自のスケジュールで健全な毎日を送ることに。 団地内パトロールも行う悟は、極真会館創始者・大山倍達に心酔し、筋トレに励むのだが…。 青春コメディ。 
原作:久保寺健彦『みなさん、さようなら』

『みなさん、さようなら』象のロケット
『みなさん、さようなら』作品を観た感想TB

画像(C)2012「みなさん、さようなら」製作委員会

minasan1.jpg 【解説と感想】 あまり「外出しない人」を「引きこもり」と呼んでしまうと、社会適応力のない暗い性格の人というマイナスイメージが付きまとうが、必ずしもそんな人ばかりではない。実際は、家にいる理由も性格も様々である。インターネットや通販、コンビニ、出前、便利屋、派遣サービス、在宅勤務の発達で、遠出しなくても済む用事が多くなったから、今後ますます「あんまり外出しない人」は増えるだろう。

minasan2.jpg 舞台は1960年(昭和35年)に建てられた東京郊外のマンモス団地。1981年(昭和56年)に小学校を卒業した渡会悟(濱田岳)は、「一生、団地の中だけで生きていく!」と宣言する。身体が弱いのでも、勉強嫌いなのでも、イジメを受けた訳でもなさそうだし、団地内に107人もいる元同級生たちとの関係も良好。いわゆる普通の登校拒否とはかなり違う。彼は「団地の外へ出られない病」にかかっているのだ。その病気にかかった理由が徐々に明かされていく。

minasan3.jpg 主役の濱田岳は現在24歳。昨年、9歳年上で19センチ身長が高いモデルと結婚し話題になった。年齢や身長が気にならないほどの魅力が彼にはあったのだろう。最近の作品で面白かったのは『ロボジー』と『ポテチ』。お人好しの役が多いが、『ゴールデンスランバー』の静かな狂気を秘めた役も良かった。若くして、演じる役にハズレなしの演技派だ。

今回は、悟の小学生から20年間の少年から青年期の終わりまでを、違和感なく演じている。年齢に応じたラブシーンの表現は見事で、思わず拍手したくなった。悟は人嫌いどころか、人一倍社会とつながっていたい寂しがり屋。外にさえ出られれば、普通以上にまともな青年だ。

minasan4.jpg 姉のような隣人・有里(波瑠)、聖母のような恋人・早紀(倉科カナ)、似たもの同士の友人・薗田(永山絢斗)、厳しいケーキ屋のオヤジ(ベンガル)、焦らず見守る母親(大塚寧々)、理解ある同級生やご近所さんなど、周囲に支えられて何とか健全な団地内社会生活を続けている悟を見ていると、それはそれでいいのではないかとも思えてくる。実際、普段は半径1キロ程度で暮らしている人も多いだろう。

minasan5.jpg しかし、賃貸住宅というのは出入りが激しく、成人するまで残った友人たちも進学や就職、結婚で去って行く。代わりに今まで見なかったようなタイプの人々が団地に引っ越してくる。住民は気心の知れた人ばかりではなくなった。このまま悟はずっと団地内だけで生活していけるのか? 同級生の彼女とめでたく結婚できるのか? ケーキ職人の仕事を続けていけるのか? そもそもなぜ、彼は団地の外へ出られないのか?

変遷していくマンモス団地の街並みや住民事情を背景に、心に傷を負った少年の成長をユーモアたっぷりに描く一風変わった青春ドラマ。悟の今後を応援したくなる、後味爽やかなお薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
posted by 象のロケット at 15:50| Comment(0) | TrackBack(9) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする