2013年09月29日

『42 世界を変えた男』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 米 (128 min)
【監督】ブライアン・ヘルゲランド
【出演者】チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリー、クリストファー・メローニ、アンドレ・ホランド、ルーカス・ブラック、ハミッシュ・リンクレーター
【あらすじ】1947年、アメリカ。 大リーグの野球球団ブルックリン・ドジャーズのオーナー、ブランチ・リッキーは、周囲の反対を押し切って黒人のジャッキー・ロビンソンと契約する。 背番号は「42」。 彼は当時、白人選手だけで構成されていた400人のメジャーリーガーの中でたった一人の、そして初めての黒人選手だった。 チームメイトはジャッキーを拒否する嘆願書を作り、野球ファンからは脅迫状が山のように届くのだが…。 実在のメジャーリーガーの物語。

『42 世界を変えた男』象のロケット
『42 世界を変えた男』作品を観た感想TB

画像(C)2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC. All Rights Reserved

42-1.JPG 【解説と感想】テレビドラマ「半沢直樹」のキメ台詞「倍返し!」が流行語となった。サラリーマン社会は忍耐の連続だし、世の中には腹立たしいことがあふれている。自分より大きな相手に立ち向かう半沢直樹の活躍は、なかなか「やられたら、やり返す!」ことができないでいる多くの視聴者の溜飲を下げ、大ヒットとなった。私はというと「やられている」ことにすら気づかないのんき者で、せっかくの「倍返し」の機会を多々逃している。

大昔から「目には目を、歯には歯を」、そして「左の頬を打たれたら、右の頬も差し出しなさい。」という言葉がある。解釈には諸説あるが、前者は「同じだけの報いが来る」という意味で、後者は復讐を諌めるものだと言われている。やり返せばスッキリするかもしれないが、仕返しばかりしていたら社会は崩壊してしまうし、サイテーの相手と同レベルの人間になるのはもっと悔しい。

42-2.jpg さて、本作は第二次世界大戦後まもない1947年、近代メジャーリーグで初の黒人選手となった背番号「42」ジャッキー・ロビンソン(1919〜1972年)の物語だ。ブルックリン・ドジャーズのオーナー、ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)が、黒人のジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)と契約したのは、純粋にチーム強化のため。やがて身体能力の高い黒人選手が球界を引っ張っていく時代が来ると確信したのだ。

「どんな嫌がらせを受けても“やり返さない勇気”を持て。奴らのレベルで戦ってはならん。」と、ジャッキーにアドバイスし励まし続けたリッキー。彼には第二次大戦後のアメリカを世界的視野から見る目と、一企業のトップを超えた経営者としての器量があった。白人至上主義ではもうやっていけない時代が来ていた。球界全体のレベルアップと有色人種の人気を得ることは確実に観客増員に結びつく。黒人選手の登用は自分が博愛主義者だからではなく、球団や球界の利益のためなのだとはっきり言えば言うほど、逆に彼が人格者に見えてくる。

42-3.JPG リッキーに公民権運動をしている気は全くなかっただろうが、社会活動はこういう見えない形で行うのが理想だし、ボランティアの世界でも応急処置の後は自立への支援が常識となりつつある。リッキーならスラム街に大金を寄付することも出来たかもしれないが、彼は黒人の野球少年たちに希望と夢、白人と対等に勝負するチャンスを提供したのだ。彼の決断は有色人種の大リーグへの流入に繋がり、ジャッキーの活躍への敬意が、徐々に他の職業でも感情的差別撤廃を促したことは間違いない。ひいては黒人層の所得増加にもつながったことだろう。つまり、まずは「42」をスカウトしたリッキーが“世界を変えた男”だったのだ。

もちろん「42」ジャッキーへの風当たりは強かった。当時の黒人差別の様子と彼がどんな扱いを受けたかは、スクリーンで確認して頂きたい。しかし、ビジネス上で「やり返す!」半沢直樹と同じく、ジャッキーの「倍返し!」はあくまでもグラウンドで。「やり返さない勇気」とは、ただじっと我慢していることを指すのではない。直接的な仕返しをする必要がなくなるくらい自分が強くなって、レベルの低い相手に間接的に勝利するまで頑張り続けることなのである。最終的には全てを水に流し「手打ち(仲直り)」をするのが理想だが、そこまでに至るには両者にハイレベルな勇気が必要なのは言うまでもない。

42-4.JPG あらすじ3行でだいたい分かるほど、ストレートな内容である。しかし変化球ばかりより、たまには直球もいい。わかりやすくて胸を打つ、子どもたちにも是非見せたい、勇気あるメジャーリーガーの物語。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
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2013年08月13日

『マン・オブ・スティール』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 米 (143 min)
【監督】ザック・スナイダー
【出演者】ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、マイケル・シャノン、ラッセル・クロウ、ケビン・コスナー、ダイアン・レイン、ローレンス・フィッシュバーン
【あらすじ】惑星クリプトンで生まれた男児カル=エルは、地球でケント夫妻の息子クラークとして育てられる。 成長した青年クラークは、謎の物体がカナダの氷棚に埋まっているというニュースを聞きつけ現地へ向かうが、そこで出会った女性記者ロイス・レインに、宇宙人であることを知られてしまう。 その頃、クラークの実父ジョー=エルを殺害後、宇宙を漂っていたゾット将軍が、クラークの居場所を突き止めていた…。 SFアクション・ファンタジー新シリーズ。

『マン・オブ・スティール』象のロケット
『マン・オブ・スティール』作品を観た感想TB

画像(C)Warner Bros.All Rights Reserved

manofsteel1.jpg 【解説と感想】スーパーマンは超高速で空を飛び、体力、腕力、五感の能力もケタ外れの超人。何でもできるスーパーヒーロー。体格も良くハンサム、性格もすこぶる良いといいことずくめ。自分の持つ特殊能力を善いことにだけ使う、完璧な理想の人間(異星人だが)である。

先日、「クロニクル」という面白い作品を観た。こちらは特殊なチカラがあっても、それをどう生かしてよいか分からず、暴走してしまう少年たちの話だった。超能力があっても、誰もが世のため人のためにその能力を使う訳ではない。ただ力を持っているだけでは宝の持ち腐れ。悪用すれば社会の迷惑。人助けに活用すれば…いつも感謝されるとは限らず、逆に気味悪がられたり、恐れられたりしてしまう。だから超能力者は皆、身を潜めて生きているのだ。

惑星クリプトン星からカプセルに入れられて地球へやって来た赤ん坊カル=エルは、アメリカ人のケント夫妻(ケビン・コスナー、ダイアン・レイン)の息子クラーク(ヘンリー・カビル)として成長する。心優しいクラークは困っている人を見過ごすことが出来ず、しばしば超能力を人前で使ってしまう。その結果、正体がバレそうになるとその場所を離れることを繰り返し、32歳の今も放浪の旅を続けている。彼はずっと、自分が何者なのかを知らず、特殊な能力を持て余していたのだ。長いモラトリアム期間である。

スーパーマンは性格もスーパーに良い。しかし、彼と同じ星の生まれで同様の特殊能力者であるゾット将軍(マイケル・シャノン)は、少なくとも地球人にとっては善人ではなかった。超能力者が敵に回ると厄介だ。

米軍は、すぐに大量出動、即攻撃である。どんな相手でもまずはド派手な銃撃戦! 効き目がなければ、次から次へと大きな武器のオンパレード。彼らの眼には、クラークもゾット将軍も異星人=敵にしか見えないのが悲しい。

manofsteel2.jpg 身体はクリプトン星人であっても、心は地球人であるクラークは、それでも地球のために戦う。なぜなら地球も故郷だから。話してもダメなら、行動で示すしかない。彼は地球人の良心を信じているのだ。どんなことがあってもひねくれない、素直すぎる性格が泣かせる。

manofsteel3.jpg クラークの変身姿は、青いスーパーマン・スーツに赤いマント、胸にはSの紋章という、良く知られているコスチューム。新スーツはメッシュのメタリック調で少し異星人っぽいが、ひとたび空を飛べば、ああ、これこそがスーパーマンだと思う。マントをヒラヒラさせながら、何の迷いもない表情で真っ直ぐ飛ぶ姿に胸が熱くなる。

manofsteel4.jpg 本作のアクション・シーンのスピード感は世界最高速だという。ヒーローもスーパーなら、映像もスーパー。もちろん私は、旧作のアクションがショボいとは全く思わない。その時代最高の撮影手法で撮られた歴代スーパーマン(最近ではクリストファー・リーヴ、そしてリターンズのブランドン・ラウス)の活躍は、今見てもワクワクさせてくれる。どのスーパーマンもカッコイイのだ!

ところで、本作には“スーパーマン”という呼び名はほとんど出てこない。これはアメリカンコミック史上最高のヒーロー“スーパーマン”が誕生するまでの物語である。己の正体と使命を知らぬまま放浪の旅を続けていた青年にようやく時が来た。“マン・オブ・スティール(鋼の男)”としての自覚と希望(Sはエル家の紋章で希望を意味する)を胸に、新スーパーマンが第2の故郷・地球の人々を救うために戦う心躍るSFスーパー・スペクタクル。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
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2013年07月31日

『ホワイトハウス・ダウン』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 米 (132 min)
【監督】ローランド・エメリッヒ
【出演者】チャニング・テイタム、ジェイミー・フォックス、マギー・ギレンホール、ジェイソン・クラーク、リチャード・ジェンキンス、ジョーイ・キング、ジェームズ・ウッズ
【あらすじ】アメリカ・ワシントンD.Cの警官ジョン・ケイルは、大統領の警護官(シークレット・サービス)の面接を受けるためホワイトハウスを訪れる。 面接の後、一緒に来ていた娘エミリーと館内の見学ツアーに参加するが、突然、爆音と共に謎の武装集団による攻撃が始まってしまった! 大統領と、ジョンの娘ら多くの人質を救うため、ジョンはたった一人で戦うことを決意するが…。 サスペンス・アクション。

『ホワイトハウス・ダウン』象のロケット
『ホワイトハウス・ダウン』作品を観た感想TB

whitehousedown1.jpg 【解説と感想】6月に、北朝鮮テロリストがホワイトハウスを乗っ取るという『エンド・オブ・ホワイトハウス』が公開された。あれから2ヶ月しか経っていないと言うのに、本作「ホワイトハウス・ダウン」では、またまたホワイトハウスが謎の武装集団に占拠されてしまった! 

米大統領が居住し執務を行うホワイトハウスを爆撃し、銃撃戦で制圧すること、厳重な警備の裏をかいて大統領を人質にし、米軍をコケにすることは、目立ちたがり精神旺盛なテロリストたちが、一度はやってみたい夢なのだろう。

両作品とも、現役のシークレットサービスではない男がたった一人で、大統領を守るために命がけで戦う。ストーリーもタイトルも似ていて混同しそうだが、どちらも甲乙つけ難いほど面白かった。

主人公ジョン・ケイル(チャニング・テイタム)は、ホワイトハウスの館内見学ツアー中に、爆弾テロに遭遇してしまう。

whitehousedown2.jpg 黒人である第46代大統領ジェームズ・ソイヤー(ジェイミー・フォックス)は、米軍の中東からの全部隊撤退と経済支援を推進し、中東と和平条約を結ぼうとしている平和主義者(明らかにモデルは第44代大統領バラク・オバマだ。)。テロリストたちの黒幕は、アメリカと仲良くなんかしたくない中東か、アジアか、または平和路線では儲からないアメリカの軍事企業関係者かと、様々な憶測が飛び交う。

アメリカで銃規制が進まないことも、軍事産業が戦争の後押しをしていると噂されていることも周知の事実。武器を持たない者は、簡単に人質になったり、殺されてしまうのだということを見せつけられる。軍の中枢もハッキングされてお手上げ状態。素手の一般ツアー客は逃げるか、降参するしかない。さて、軍隊の経験もない大統領はどうするのか…? 

whitehousedown3.jpg その日、ジョンがホワイトハウスを訪れた目的は見学ではなく、大統領警護官(シークレットサービス)の面接を受けるためだった。志望の第一動機は、別れた妻と暮らしている11歳の娘エミリー(ジョーイ・キング)が熱烈な大統領ファンだから。そして、エミリーも一緒に見学ツアーに参加していた。大統領ファンの小学生なんて、クセ者に決まっている。彼女は父親以上の肝っ玉の持ち主で大活躍。将来は憧れのホワイトハウスの住人になっているかもしれない。

たった今シークレットサービスの面接に落ちたばかりなのに、大統領を守る唯一の人間になってしまったジョンの原動力は、採用への野心ではなく最愛の娘エミリーを守りたいと言う親心。そうでなくてはここまで命を張ることはできない。父親を動かす最大の動機づけである。

実際にホワイトハウスの見学ツアーは大人気だったが、9.11テロ以降は入館審査が厳しくなり、一般市民は簡単には見学できなくなってしまった。その代わり、映画の中でツアーガイドの男性ドニー(ニコラス・ライト)が分かりやすい解説をしてくれるから、ちょっとしたホワイトハウス通になれる。

若き大統領の掲げる平和・外交政策には、アメリカの建前的理想が組み込まれているが、それがどんなに実行困難で、危険なことかも教えてくれる。戦争の代わりに外交を、銃の代わりに護身術を、なんて、軍事大国は簡単にチェンジできないのだ。

whitehousedown4.jpg ホワイトハウスが崩れ落ちていく様は壮観。ツアー気分を楽しみながら、にわかシークレットサービスの孤独な戦いを応援しよう。大迫力のホワイトハウス乗っ取りパニック。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


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2013年07月01日

『モンスターズ・ユニバーシティ』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 米 (111 min)
【監督】ダン・スキャンロン
【出演者】(声)ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、他
(日本語吹替)田中裕二、石塚英彦、他
【あらすじ】小さくてカワイイ一つ目のモンスター、マイクは、誰よりも恐ろしい“怖がらせ屋”になるため、伝統あるモンスター大学“モンスターズ・ユニバーシティ”に入学する。 しかし、学校には優秀な“怖がらせ屋”一族出身の青鬼のようなサリーをはじめ、マイクより大きくて才能あふれる未来の“怖がらせ屋”たちが大勢いた。 めげずに勉強に励むマイクだったが、学長から「怖くないモンスターはいらない」と言われてしまう…。 ファンタジーアドベンチャーCGアニメ第2弾。

『モンスターズ・ユニバーシティ』象のロケット
『モンスターズ・ユニバーシティ』作品を観た感想TB

画像(C)2013 DISNEY / PIXAR 

 【解説と感想】アニメーション映画を観る時は、ついつい“小さい子どもたちを引率して映画館へやって来た親”目線で鑑賞してしまいがちだ。かなり無理があるが“親に連れて来られた小さい子ども”目線で観ると、鑑賞後は周りの大人がパパママに見えてくる…とまではいかなくても、普段使わない脳やハートの部位を使ったような気がしてくる。ひょっとしたら上映時間の分だけ心身が若返ってしまうかもしれない!

MONSTERSU1.jpg 本作は『モンスターズ・インク』の主人公サリーとマイクの学生時代の物語だ。舞台はモンスター(怪物)たちが恐ろしさに磨きをかけ、一流の“怖がらせ屋”になるために勉強をする名門大学“モンスターズ・ユニバーシティ”。怪物エリートの登竜門「怖がらせ学部」に通うマイクは緑色の一つ目小僧。その相棒のサリーは毛むくじゃらの青鬼、ルームメイトのランドールは紫のカメレオン、同級生も首のいっぱいあるオネーチャンなど異形の若者ばかりで、実写ならかなりグロい集団のはずだが、カラフルで愛嬌たっぷりだから、ちぃーっとも怖くない。唯一恐ろしいのがムカデのような女学長で、厳格で無愛想で恐ろしい。学生たちの最終目標は、この学長のようなスーパーこわ〜いモンスターなのだ。

巨体のサリーは由緒正しい“怖がらせ屋”一族のサラブレッドで、何の努力もしなくても「ひと吠え」すれば人間の子どもを怖がらせることができる。一方、気の毒にも“カワイイ”という致命的欠陥があるマイク(子どもの頃の声は格別カワイイ!)は、いくら学科が優秀でも実技では落ちこぼれ。アリとキリギリス、ウサギとカメのように、いつかマイクがサリーより恐ろしいモンスターになる日が来る…とは、到底思えないのである。

MONSTERSU2.jpg それでもマイクはめげずに頑張り、いつしか怖くない落ちこぼれモンスターたちのリーダーになっていく。これが普通の企業だったら、まとめ役として重宝されそうな存在だ。企業には、優秀ではなくても、さまざまな“役割”を果たす社員がいる。しかし、そんな理屈はスーパーエリート学長には通じない。怖くなくっちゃモンスターじゃないのである。何てったって、ここは絶叫モンスター養成所なのだから。

サークル対抗“怖がらせ大会”の場面が最大の見せ場であり、とにかく楽しい。おかしなモンスターたちがめいっぱい学生生活を謳歌している。怖がらせスポ根ドラマといってもいい。憧れの“怖がらせ屋”になるという大きな夢に向かって切磋琢磨するモンスター学生たちの青春ドラマ。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
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2013年05月31日

『箱入り息子の恋』お薦め映画

★★★★ 2012年製作 日 (117 min)
【監督】市井昌秀
【出演者】星野源、夏帆、平泉成、森山良子、大杉漣、黒木瞳、穂のか
【あらすじ】市役所の記録課に勤務する天雫(あまのしずく)健太郎は35歳。 趣味ナシ彼女ナシの息子の将来を心配した両親は、親同士が見合いをする“代理見合い”に参加する。 ところが見合いの席で初めて、相手の女性・今井奈穂子が全く目が見えないことが発覚。 健太郎の両親は驚き、奈緒子の父親は健太郎の学歴や職歴では、奈緒子をサポートできないと決めつけるのだが…。 ラブ・ストーリー。

『箱入り息子の恋』象のロケット
『箱入り息子の恋』作品を観た感想TB

画像(C)2013「箱入り息子の恋」製作委員会 

hakoiri1.jpg 【解説と感想】見合い相手の条件が完璧で、互いに気に入って結婚したはずなのに、すぐ破綻することもある。恋愛でも見合いでも、本音は結婚話がある程度進むまで聞けないし、本性は結婚してからでないと分からない。条件より自分の直感を信じた方が、後々親や仲人を恨まずに済むだろう。

hakoiri2.jpg 市役所勤務の35歳の男性・健太郎(星野源)と、目が見えない20代の女性・奈穂子(夏帆)は、どちらも一人っ子で親と同居している。過保護な双方の両親は、将来一人ぼっちになってしまう子どもを心配して、親同士の代理見合いに出席。そこで知り合った、親からすれば決して理想的とは言えない相手を、子ども同志は気に入ってしまう。

hakoiri3.jpg 良くあるパターンやイメージを覆す人物設定だ。健太郎の両親(平泉成、森山良子)は奈穂子の目が見えないことに驚いたものの、交際に反対はしない。健太郎は見合いの前から奈穂子に一目ぼれ状態。奈緒子と奈緒子の母親(黒木瞳)は健太郎の人柄を気に入っている。一人だけ反対しているのは奈穂子の父親(大杉漣)。出世する見込みのない市役所職員で、ボランティア活動にも無縁なゲームオタクの健太郎に、大事な娘は任せられないと猛反対! 上から目線のガンコ親父である。

本当に健常者と身体障害者が対等な社会なら、本作のように、見合いの席で初めて身体が不自由なことを明かすこともアリかもしれないと考えさせられた。見合いは出会いの場だ。本人同士の気持ちが第一だし、本人や親の介護人を募集している訳ではないのだから。

hakoiri4.jpg 奈穂子と健太郎が散歩する場面は微笑ましく好感が持てる。あまり目の不自由さは前面に押し出されていない。結婚すればもちろん一生サポートすることになるが、それは後で学べば良いことだし、嫌なら恋愛止まりで結婚には至らないだろう。普通の見合いだって、付き合った上で別れることもある。まずは二人の気持ちを固めることが先だ。結婚のハードルには、それから立ち向かえばいい。

hakoiri5.jpg 奈穂子はいかにも男が守りたくなるような、色白のか弱きお嬢さん…と思っていたら、意外に積極的で驚かされる。健太郎はというと、35歳にして童貞。手つなぎのトキメキから始まった中高生並みの純愛は、猛スピードで突き進んで行く。奈穂子命の健太郎にはケガが絶えない。このあたりは、もうギャグだ。そして遅まきながら親離れの時期を迎えた箱入り息子と箱入り娘は、いつの間にかロミオとジュリエットになってしまっている。牛丼の吉野家での感動シーンにも、ついつい笑ってしまった。

一風変わった見合い話を、普通の奥手な男女と親の成長物語として描いているバリアフリーなラブ・コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 

 
posted by 象のロケット at 18:03| Comment(0) | TrackBack(5) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする