2015年01月22日

『娚の一生』お薦め映画

★★★★ 2014年製作 日 (118 min)
【監督】廣木隆一(ストロボ・エッジ、恋する日曜日、機関車先生、だいじょうぶ3組
【出演者】
榮倉奈々(檸檬のころ、図書館戦争、MIRACLE デビクロくんの恋と魔法、阿波DANCE)
豊川悦司(大停電の夜に、ハサミ男、今度は愛妻家、顔)
向井理(小野寺の弟・小野寺の姉、僕たちは世界を変えることができない。But, We wanna build a school in Cambodia.、ガチ☆ボーイ、百瀬、こっちを向いて。)
安藤サクラ、前野朋哉、落合モトキ、根岸季衣
【あらすじ】都会での仕事と恋に疲れ田舎の祖母の家に身を寄せていた堂園つぐみ。 ところが祖母の死後、祖母から鍵を預かっていたという中年男・海江田醇(じゅん)が、勝手に離れに住み始める。 祖母の教え子で大学教授だという海江田は「つぐみと結婚する予定だ。」と周囲に当たり前のように話し、つぐみを驚かせる…。 ラブ・ストーリー。
原作:西炯子(コミック) 主題歌:JUJU『Hold me, Hold you』

『娚の一生』象のロケット
『娚の一生』作品を観た感想TB

画像(C)2015 西炯子・小学館/「娚の一生」製作委員会

isshou1.jpg 【解説と感想】本作は郷里の九州(おそらくは鹿児島県出水市近辺)に帰ってきた若い女(原作では30代半ばという設定)堂園つぐみ(榮倉奈々)と、京都生まれの50代男性・海江田醇(豊川悦司)の恋愛話で、原作は西炯子のコミック。鑑賞後に読んでみたら、柱はもちろんラブストーリーであるが、親に恵まれない子の話、原発から地熱発電へのチェンジ(映画には登場しない)、キャリア女性の働き方チェンジ(映画には登場しない)、不倫を繰り返してきた女の恋愛チェンジ、大いなる地元愛(映画では控えめ)、と盛りだくさんで、足なめシーンが評判になった割に、ラブシーンは少なかった。ちなみにコミックは全4巻だが、書店によっては品切れで全巻揃っていない店もあったので、相当売れているようである。

大学教授である海江田は、昔大学で講師をしていたつぐみの祖母に惚れていたらしい。海江田と祖母では相当な年の差があり、何かあったのなら親族一同にとってもショックな話だ。祖母の家の離れに勝手に住み始め、つぐみと結婚するつもりだと周囲に言いふらす海江田は、場合によってはストーカーとして逮捕されてもおかしくない。哲学が専門で自由な発想の持ち主である海江田が祖母に惚れたのは、どうやら彼の生い立ちにも関係がありそうだ。

isshou2.jpg 一方つぐみは、会社では出世コースをひた走っていたようだが、恋愛の相手は妻帯者ばかり。出来る女性は成長前の年下男に走る傾向もあるが、自分と同じような出来る男を選ぶと、必然的に妻子持ちになってしまうことも多々ある。彼女が郷里に帰ってきたのに実家に戻らず祖母の家に滞在しているのは、不倫で傷ついた心を癒すためだ。ところが海江田は祖母の元カレだったかもしれない男。独身だと言っているがそんな話はあてにならない。不倫より更にディープな背徳の香りが漂ってくる。わあ、大人のコミックっていいなあ。

オッサン好きな女子のことを今は“枯れ専”といい、ファザコン娘はその傾向が大いにあるという。年上男性との不倫もその延長線にあるのではないだろうか。頼りない草食男子はイヤ、ガツガツした肉食男子もイヤ、でも臭い脂ぎったダサいオヤジは対象外。枯れてもカッコよくて頼りがいのある、昔でいえばロマンスグレーのオジサマが人気なのだ。しかし“枯れ専”って呼び方で、オジサマ方が最も気にする枯渇状態を連想してしまうのは、私だけだろうか。“枯れ専”女子自身は、決して枯れていないような気がするが…。

isshou3.jpg 榮倉奈々も豊川悦司も、スタイル抜群。つぐみの長い生足の美しさ、海江田のハダシに下駄のカッコよさは、この二人だからこそ表現できたといえる。抜群のキャスティングだ。そして話題のセクシーシーンはピカイチで、脱がなくてもこんな表現の仕方があるのかと感心した。原作をはるかに超えている。ぜひ楽しんで頂きたい。薪で風呂を沸かすような田舎屋敷で、若い美女とダンディオジサンがのどかな共同生活を営む夢のようなラブコメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2014年12月17日

『百円の恋』お薦め映画

★★★★★ 2014年製作 日 (113 min)
【監督】武正晴(イン・ザ・ヒーロー)
【出演者】安藤サクラ(0.5ミリ、かぞくのくに、今日子と修一の場合、愛のむきだし)
新井浩文(青い春、近キョリ恋愛、血と骨、BOX 袴田事件 命とは)
稲川実代子(ハラがコレなんで)
根岸季衣、早織、宇野祥平、坂田聡
【あらすじ】32歳の斎藤一子は働きもせず実家に引きこもってゲーム三昧の毎日を送っていた。 ある日、離婚して実家に戻っていた妹・二三子と大ゲンカになり、一子がアパートで独り暮らしをすることに。 行きつけの100円ショップで深夜のアルバイトを始めた一子は、近くのボクシングジムで練習する中年男・狩野からデートに誘われる。 なぜ自分を誘ったのかと聞くと、情けない返事が返ってきた…。 ラブ・ストーリー。

脚本:足立紳(第一回松田優作賞作品) 主題歌:クリープハイプ『百八円の恋』

『百円の恋』象のロケット
『百円の恋』作品を観た感想TB

画像(C)2014東映ビデオ

100yen1.jpg 【解説と感想】女優・安藤サクラは、素顔はおしとやかなお嬢さんかもしれないのに、映画の中では図々しくて品のない女を演じることが多い。もちろん演技であることは分かっているが、イヤ〜な女や変な女が、妙に似合っている。脱ぎっぷりもいい。女優イメージを全然気にしないのかなと、前々から気になっていた。少し前の「0.5ミリ」も良かったが、今作では更にパワーアップしている。

本作の主人公・一子(安藤サクラ)は、実家の弁当屋を手伝いもせず、タバコをフカしながらゲーム三昧。ボサボサ頭の、だらしないグータラ娘である。出戻りの妹(早織)とケンカして家を出ることになり、彼女は32歳で初めての一人暮らしをすることになった。

余談だが、年頃の娘や息子を早く結婚させたいなら、一度一人暮らしを経験させると良いのだという。一人ぼっちの寂しさや不経済さが身に染みて、真剣に結婚を考えるらしい。厳しい門限もないし、友人も招きやすく、異性との付き合いも進展しやすいのだとか。

100yen2.JPG 一子の場合も、全くその手順通りにコトは進む。まずは家賃を払わねばならないから、一子は行きつけの100円ショップでアルバイトを始める。面接も採用も簡単すぎて笑ってしまう。そして、徒歩圏内のアパートと職場の間で(たぶん彼氏いない歴32年の彼女が)、これまた簡単に男を見つけてしまう。相手は中年ボクサーの狩野(新井浩文)で、100円ショップの常連。狩野が一子をデートに誘った理由は「断られなさそう」だったから。お手軽な百円の恋は、こうして始まった。

高嶺の花の美人より十人並みの女の方がモテるという。一子は同僚のオッサンにも言い寄られる。相手も別に一子じゃなくてもいいけれど、落としやすそうだから誘ったというのがアリアリ。一子はスキだらけで、敷居が低そうに見えるのである。

100yen3.JPG 勤務先では「他に働く奴はいくらでもいる。」というようなことを言われ、男からも「女なら誰でもいい」みたいな、残念な扱いをされている一子だが、後半、アッと驚く変身を遂げる。今まで何一つ頑張ったことがなかったのに、恋より夢中になれるものを見つけるのである。男にもしがみつかなかった一子が、それには食らいついて食らいついて離れない。

いやはや、驚いたのなんの! 映画の中の一子にも、そして演じている安藤サクラにも、私は感動してしまった。そりゃー、そのトシでそんなことそこまでやらなくてもと思うけれど、ボロボロになっても立ち上がる姿は、見苦しくて美しくて可愛らしい。自他共に認めるサエない女の価値もグーンとアップ! なりふり構わず頑張る一子を、ぜひ映画館で応援して欲しい。トコトン闘う女のドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2014年12月02日

『ゴーン・ガール』お薦め映画

★★★★★ 2014年製作 米 (149 min)
【監督】デヴィッド・フィンチャー(ドラゴン・タトゥーの女、ベンジャミン・バトン 数奇な人生、ファイト・クラブ、ソーシャル・ネットワーク)
【出演者】ベン・アフレック(ランナーランナー、アルゴ、ペイチェック 消された記憶、偶然の恋人)
ロザムンド・パイク(アウトロー、プライドと偏見、17歳の肖像、ドゥーム)
ニール・パトリック・ハリス(マイフレンド、クララ)
タイラー・ペリー、キャリー・クーン、キム・ディケンズ、パトリック・フュジット
【あらすじ】アメリカ・ミズーリー州の田舎町。 幸せな結婚生活を送っていた夫ニックと妻エミリーの結婚5周年の記念日に、突然エイミーが姿を消した。 リビングには争った形跡があり、キッチンからはエイミーの大量の血痕が発見された。 警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、次第にアリバイが不自然なニックへ疑いの目を向けていく…。 サスペンス。
原作・脚本:ギリアン・フリン

『ゴーン・ガール』象のロケット
『ゴーン・ガール』作品を観た感想TB

画像(C)2014 Twentieth Century Fox All rights reserved.

gonegirl1.jpg 【解説と感想】都会では隣人の名前や顔すら知らない場合もあるが、小さな町では家庭内のありとあらゆることをご近所さんが知っている。それでも仲良し夫婦が突然離婚することもあるから、内情は外からは窺い知れないものだ。何か事件が起こった時のご近所の証言と言うのはアテにならないし、根も葉もない噂が広がっていく。

gonegirl2.jpg 本作は妻の失踪をめぐるサスペンスである。夫ニック(ベン・アフレック)の妻エミリー(ロザムンド・パイク)が、5回目の結婚記念日に失踪した。自宅に大量の血痕が残されていたことから、ただの家出ではないことがわかる。一見仲睦まじかったが、実はそうではなかったことが発覚し、夫に不利な状況になっている。妻は夫に嫌気が差して家出したのかもしれない。あるいは夫婦ゲンカの果てに、夫が妻を殺してしまったのかもしれない。
妻は両親が書いた絵本の主人公として、子どもの頃から有名人だったため、マスコミの報道は過熱し、夫婦の実態がとことん暴かれていく。

gonegirl3.jpg 自宅にいる時間が少ない現代人は、睡眠時間を除くと、家族より学校や職場の仲間と過ごす時間の方が長いかもしれない。たとえ24時間一緒にいたとしても、家族や夫婦が考えていることは同じではない。妻や夫が今一番熱中していることや不平不満を、どれだけの人が把握しているだろうか。

gonegirl4.jpg アメリカ中を巻き込んだ失踪劇は、途中から夫ニックと妻エミリーの現在がリアルタイムでわかるような描き方に切り替わる。観客は誰がこの事件を企んだのかを知ることになるが、犯人の目的は今一つはっきりしない。一体この夫婦はどうなってしまうのか? ホラーよりずっと怖い、大変な結末である。ぜひあまり情報収集をせずに見て頂きたい。

gonegirl5.jpg 人は見かけによらない。そして家族の前でもある程度は仮面を被っている。人間不信になりそうな物語だ。結婚前のあなたは、今一度、相手の本性を確認したくなるだろう。パートナーのいるあなたは、この夫婦の二の舞とならぬよう慎重になるだろう。もうここまで来ているというあなたは…、ご愁傷様である。

相手にだけ罪を被せてはいけない。必ず両方に非がある。どうしてこんなことになってしまったのか、どうすればこうならなかったのか、よくよく考えてみて欲しい。唖然とさせられる結婚悲劇スリラー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2014年11月07日

『紙の月』お薦め映画

★★★★ 2014年製作 日 (126 min)
【監督】吉田大八(桐島、部活やめるってよ、パーマネント野ばら、クヒオ大佐)
【出演者】宮沢りえ(たそがれ清兵衛、華の愛、オリヲン座からの招待状、ぼくらの七日間戦争)
池松壮亮(バンクーバーの朝日、ダイブ!!、半分の月がのぼる空、大人ドロップ)
大島優子(映画 闇金ウシジマくん、櫻の園、スイートリトルライズ、さんかく)
小林聡美、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司
【あらすじ】1994年。 夫と二人暮らしの梅澤梨花は「わかば銀行」の契約社員で、職場では高い評価を受けていた。 ふとしたことから、梨花は裕福な顧客・平林の孫で、大学生の光太と逢瀬を重ねるようになる。 買い物途中、預かり金から1万円借りてしまったことをきっかけに、彼女は銀行の金を横領し始めた。 その額は、日増しにエスカレートしてゆくが…。 サスペンス。
原作:角田光代『紙の月』 主題歌:ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ『Femme Fatale』

『紙の月』象のロケット
『紙の月』作品を観た感想TB

画像(C)2014「紙の月」製作委員会

kami1.jpg 【解説と感想】時代は、バブル崩壊後の1994年。わかば銀行の契約社員・梅澤梨花(宮沢りえ)は、夫(田辺誠一)と二人暮らしで、子どもはいない。金持ちではないが、穏やかで不自由のない生活を送っている。夫からはあまり構ってもらえていないが、働き盛りのサラリーマンなんて、普通はそんなものだろう。そんな、そこそこ幸せな女が、顧客の金に手を付けてしまう。原因は年下の男・平林光太(池松壮亮)と不倫関係に陥ったためだ。

kami4.jpg 「お堅い」「真面目な」「道を踏み外さない」イメージの銀行員。中堅行員の隅(小林聡美)は、それを絵に描いたような社員。彼女のような銀行員は、日本経済の縁の下の力持ちだ。だがバブル崩壊後は仕事の出来るベテラン社員が、経費削減の下にないがしろにされるようになった。一方、「自分の金でない大金」を扱う銀行員のストレスを、若い窓口係・相川(大島優子)が吐露する。自分はカネの誘惑に負けてしまいそうだと。私はそこのところが気になって元銀行員の友人に確認してみたのだが、「どんな大金でも、自分とは関係ない、ただの紙切れとしか思えなかった。」と言っていた。彼女は清廉潔白な銀行員の鑑である。

kami3.jpg 1円でも金額が合わなければ大変なことになる銀行で、現金や書類の確認が厳しいのは当たり前。加えて、彼らは同僚のちょっとした変化も見逃さない。女性同士の勘繰り目線は鋭くて見応えがあるし、それぞれの生き方や考え方も、非常に興味深い。登場する女子行員の中で、あなたが一番賢いと思うのは誰だろうか? 

kami2.jpg 夫に従順な地味で堅実な主婦なんて、美しすぎる宮沢りえには似合わない。彼女が主婦と言う仮面を捨て美しく羽ばたいていく様子こそ、観客が観たい彼女なのだ。しかし、主婦の梨花も横領行員の梨花も、結局は無理をしている。少女時代の回想シーンで、金以外の力で物事を解決する方法や気持ちの持ち方を学ぶチャンスがあったのに、梨花は身につけられなかったことが分かる。このとき道徳教育が功を奏していたら、男のため金のためではなく、世のため人のために働く女性になっていたかもしれないのだが。

ところで、家にいるから奥さんと言う。女が外に出るとロクなことにならないと、昔は言われていた。妻が稼げば夫がダメになる、洋服代や外食費が増えるだけ、贅沢になって意外と貯金が出来ない、家事がおろそかになりケンカになる、夫婦どちらも浮気に走ってしまうとか、散々な言われようだった。今、女性にそんなことを言えばセクハラになってしまうが、多少頷けるところ無きにしも非ず、である。

kami5.jpg 梨花の夫と浮気相手を比べてみると、夫の方がイイ男なのは明らかで、この夫には何も非がないから気の毒である。年下男・光太は、大金を貢ぐほどの男ではない。のぼせ上がるほどの男ではない。だが、男女問わず浮気なんてそんなもの。浮気も犯罪も、一度始めたらもう後戻りできないような気がしてくるのかもしれない。梨花が帳尻合わせに苦心し、横領に没頭していく姿はスリリングだ。

大から小まで、横領事件は後を絶たない。金で変わっていく男女関係、顧客が騙される過程、銀行員の対応など、人間観察が非常に面白い、お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2014年09月28日

『ミニスキュル〜森の小さな仲間たち〜』お薦め映画

★★★★★ 2013年製作 仏 (89 min)
【監督】エレーヌ・ジロー、トマス・ザボ
【あらすじ】森でピクニックをしていた人間が、角砂糖がたっぷり入った缶を残して帰って行った。 家族とはぐれてしまった一匹のてんとう虫が、缶の中で雨宿りをしていたが、働き者の黒アリたちは、その缶を自分たちの巣へ運び始める。 てんとう虫も、仲良くなった黒アリたちを手伝うことに。 険しい岩山を越え、川を下り、車道を渡り、命がけの旅を続ける彼らの前に、角砂糖を狙う赤アリの大群が現われた…。 アニメーション。

『ミニスキュル〜森の小さな仲間たち〜』象のロケット
『ミニスキュル〜森の小さな仲間たち〜』作品を観た感想TB

画像(C)MMXIII Futurikon Films - Entre Chien et Loup - Nozon Paris - Nozon SPRL - 2d3D Animations. All rights reserved.

MINUSCULE1.jpg 【解説と感想】野生動物の姿を捉えたネイチャー・ドキュメンタリーは、テレビでも映画でも、根強い人気がある。技術がどんどん進んでいるので、その度に更新される、“世界初”や“世界一”の、驚異的な映像に驚かされることもしばしばだ。そして、大自然の美しさや、可愛らしい動物の姿、効果的な音楽に癒される。動物はしゃべらないが鳴くことはできるし、テレパシー能力があるとも言われている。何らかの信号を発していることは間違いないだろう。

MINUSCULE2.jpg 本作はドキュメンタリーではなく、実写、CGアニメ、3Dを組み合わせたファンタジーで、フランスのテレビシリーズの劇場版である。舞台は南フランスの自然保護区にある国立公園で、森の風景は自然そのままだが、動物たちはアニメーション。小道具となる人間が捨てたゴミなどは、アニメと実写の区別がつかないほど精巧に作られている。

MINUSCULE3.jpg 登場するのは、森に住んでいるてんとう虫、アリ、クモ、ハエ、カタツムリなどの小さな小さな虫たち。家族とはぐれた主人公のてんとう虫が、砂糖の入った缶を巣へと運ぶ黒アリ集団と一緒に旅をするという物語。険しい岩山を越え、川を下り、車道を渡るというだけでも命がけなのに、砂糖を狙う悪役・赤アリ軍団が登場し、お宝争奪戦が勃発する! 人間が散歩やピクニックに出かける美しい森は、虫たちにとっては弱肉強食の厳しい世界なのだ。

MINUSCULE4.jpg 人間の足ならたいしたことはないかもしれないが、ムシ目線だと、それはそれは大変な距離である。黒アリの司令塔が、効率の良い砂糖の運び方、安全なルートを的確に指示し、危険が迫ると臨機応変に対処する。彼らの賢くて一生懸命な行動が、実に愉快で笑ってしまう! 生きるため、エサを運ぶため、彼らは一致団結して遥か遠くの巣を目指す。

飛べたらもっと黒アリの役に立てるのに、このハグレてんとう虫は、ケガをしていて飛ぶことが出来ない。友達にはなれたけれど、てんとう虫がアリの巣で暮らせるだろうか? 終点にたどり着いたら、彼はどうするのかと、途中ちょっと心配になってきてしまう。

MINUSCULE5.jpg 虫たちは人間の言葉でしゃべったりはしない。その代わり、目がクルクルと動いて表情豊か。身振り手振りや、面白いわめき声で、虫たちが何を言っているのかが全部わかってしまう。映像はキレイだし、分かりやすくて感動的な友情物語だ。鑑賞後の満足度は、非常に高いと思う。本作を見た後で、ネイチャー・ドキュメンタリーを見ると、動物の声やテレパシーが聞こえてくるような気がしてくるだろう。砂糖に群がるアリを見る目も、違ってくるかもしれない。

小さなお子様から年配の方まで、誰もが虫たちの言葉を理解し森の仲間になれる、可愛らしいアクション・アドベンチャー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 19:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする