2018年01月22日

『ミッドナイト・バス』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (157 min)
【監督】竹下昌男(ジャンプ)
【出演者】
原田泰造(ジャンプ、古畑中学生 古畑任三郎、生涯最初の事件、奥さまは魔女、アントキノイノチ)
山本未來(花影、日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場 第一夜、不夜城、エクステ)
小西真奈美(のんちゃん のり弁、いぬのえいが、阿弥陀堂だより、天使の卵)
葵わかな、七瀬公、長塚京三、遠藤雄弥
【あらすじ】故郷・新潟にUターンし、新潟〜東京間を走る長距離深夜バスの運転士をしている高宮利一。 彼には東京で定食屋を営む長年の恋人・志穂がいた。 ある日、16年前に離婚した妻・美雪と偶然再会する。 彼女は入院中の実父のため、時々帰省しているのだという。 自分たちを捨てた母親と関わることに、息子・怜司と娘・彩菜は反発するが…。 ヒューマンドラマ。
原作:伊吹有喜

『ミッドナイト・バス』象のロケット
『ミッドナイト・バス』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017「ミッドナイト・バス」ストラーダフィルムズ/新潟日報社

midnight1.jpg 【解説と感想】都市と地方をダイレクトに結ぶ高速バスは、飛行機や新幹線に比べて時間はかかるが、安いし便利だ。寝ているうちに目的地に着く便だと、朝から行動することができる。窮屈で足がむくんだ昔と違い、今は定員を絞って広々と快適な座席を取り入れたバスも出ている。高速バスの事故が相次いだために労働環境も改善されつつあるというが、それでも長距離の運転は大変だろう。

本作の主人公は、新潟〜東京間を走る長距離深夜バスの運転士・高宮利一(原田泰造)。彼には長い付き合いになる、東京で定食屋を営む志穂(小西真奈美)という恋人がいる。男手ひとつで育てた2人の子どもも手を離れ、ようやく再婚を考え始めたが、それどころではない状況に陥ってしまう。

midnight2.jpg 息子・玲司(七瀬公)は、東京の会社を辞め家に帰って来たが仕事を探しているようには見えないし、娘・彩菜(葵わかな:朝ドラ「わろてんか」のヒロイン)は、副業のご当地アイドル業と結婚の間で揺れている。離婚して16年になる元妻・美雪(山本未來)は、父親(長塚京三)の入院で疲れ果てている。彼らを心配し時間を取られ、志穂との仲もギクシャクしてしまった。

midnight3.jpg 利一は彼らの悩みを聞き流してもいいのである。子どもらは既に成人しているのだし、元妻の家庭問題に関わる義理はない。しかし、そう簡単に割り切れないタイプの人もいる。そんな面倒見が良く包容力のある中年男に、原田泰造がはまりすぎるほどはまっている。彼はお笑いトリオ・ネプチューンのメンバーだということを忘れてしまうほど、ドラマや映画で活躍中。ごく普通の人を演じるのも上手いし、独特の存在感がある。本作出演のために大型自動車免許を取得し、関越自動車道を運転したのだとか。運転士姿も様になっていた。

新潟では一家の主、バスの中では乗客の命を預かる運転手、東京では志穂の恋人である利一は、「トンネルを抜けると男で、戻ると父親」という生活をずっと続けてきた。独身同士でも、結婚のタイミングを掴めないカップルもいる。利一と志穂が再婚するのかどうかが、非常に気になる。

midnight4.jpg 紆余曲折はあるが、この物語に悪人は登場しない。父親と息子、母親と娘は、性格がそっくりだ。離婚しても切れない家族の縁や情というものを、これでもかというほど丁寧に描いている。恋愛、結婚、離婚、再婚、浮気、認知症、介護、嫁・姑の確執、田舎の実家への責任、就職、過重労働等、三世代が直面する危機がふんだんに盛り込まれたヒューマンドラマ。雪景色が郷愁を誘う。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年01月11日

『RAW 少女のめざめ』お薦め映画

★★★★ 2016年製作 仏・ベルギー (98 min)
【監督】ジュリア・デュクルノー
【出演者】
ギャランス・マリリエ
エラ・ルンプフ
ラバ・ナイト・ウフェラ
ローラン・リュカ、ジョアンナ・プレイス、ブーリ・ランネール、マリオン・ヴェルヌ
【あらすじ】学業優秀な16歳の少女ジュスティーヌは、両親・姉と同じ獣医科大学に入学し寮生活を始める。 上級生による地獄の新入生歓迎行事が続き、ある日、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられてしまう。 ベジタリアンの彼女は心身に異変を感じるが、やがて生肉にかじりつくように。 そして、姉アレックスにも同じ異変が起こっていることに気づく…。 サスペンス・スリラー。 R-15+
カンヌ国際映画祭批評家連盟賞、ゲント国際映画祭エクスプロー賞、他多数受賞

『RAW 少女のめざめ』象のロケット
『RAW 少女のめざめ』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2016 Petit Film,Rouge International,FraKas Productions. All rights reserved.

raw1.jpg 【解説と感想】ベジタリアン=菜食主義者には、健康目的の人、思想信条的に肉を食べない人、単なる菜食志向の人がいる。軽い健康目的ならたまには外れたっていいのだが、宗教目的だとダシや調味料にも動物性を許さない。食を制限すると、頭がクリアになり身体も思考も研ぎ澄まされていくような気がしてくる。しかし、肉魚を好む人は攻撃的で、菜食主義者は平和的だというのは幻想だろう。近年、「肉食女子」「草食男子」という言葉が、恋愛に積極的、消極的という意味で広がっている。肉は精(性)をつけるというイメージもある。食と精神は、切り離せないものなのだろう。確かに修行者は精進料理を食べ、女を遠ざける。

raw2.jpg 本作の主人公は16歳の少女ジュスティーヌ。飛び級なのか神童と言われるほど優秀な彼女は、両親の母校である獣医科大学に入学する。姉アレックスも同じ大学にいるので心強い。彼女の家族は厳格なベジタリアンだが、宗教目的ではなさそうである。

彼女の母親は間違ってシチューに肉片を入れたレストランの店員を「娘はアレルギーなのよ!」と怒鳴る。一般的に、慣れないものを食べると身体は何らかの反応を示す。植物性食品しか食べない生活を長年続けていた人が、突然肉を食べた時の衝撃は相当なもの。心身が動物性食品に拒否反応を起こし具合が悪くなってしまう人もいれば、その美味しさに感動し肉料理が大好きになる人もいるのだとか。考え方や生き方が変わる人もいるらしい。アレルギーとはまさに、ワケが分からない反応なのである。

raw3.jpg この獣医科大学、上級生によるイカれたシゴキが多い。たぶん生まれてこの方、まともに肉を食べたことのないジュスティーヌが、新入生歓迎行事で動物の血を浴びせられ、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられてしまう。この地獄のシゴキを通過すれば、獣医学科の動物実験や解体・解剖にも抵抗がなくなるに違いない。ジュスティーヌはショックを受けるが、異変は身体だけでなく、精神にも及ぶ。そして姉アレックスにも同じ反応が起きていることに気づく。姉妹の変貌ぶりは凄まじく、肉の美味しさの虜となり、性に目覚めるくらいならよかったのだが、凄惨な事件が起こってしまう。これはホラーである。誤解をする方はいないだろうが、肉を食べたベジタリアンが皆こうなるわけではない、念のため。

raw4.jpg 親の言いなりだった気弱な少女ジュスティーヌが、強い女性へと変わっていく。姉アレックスは既に変わっていたが、妹を見て安心したのか、更に進化してゆく。詳細は書かないが、姉妹が一緒にいる時に起こった、犬を巻き込むアクシデントは、目を背けたいシーンなのに描写が素晴らしかった。迫真の演技で、終盤の大事件よりずっと印象に残る。

血まみれ描写が続くが、清楚なジュスティーヌとセクシーなアレックスの姉妹が魅力的で、どんどん変わっていく彼女たちの表情から目が離せない。エグいが美しく繊細な青春ドラマであり、見ごたえのあるサスペンス・スリラー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
 
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2017年11月19日

『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米 (225(休憩1回) min)
【出演者】
ルネ・パーペ(ワーグナー ≪トリスタンとイゾルデ≫ 新演出 METライブビューイング  ヴェルディ ≪マクベス≫ METライブビューイング)
マルクス・ヴェルバ
キャスリン・ルイック
ゴルダ・シュルツ、チャールズ・カストロノヴォ、クリスチャン・ヴァン・ホーン
【あらすじ】 王子タミーノは、夜の女王から悪魔ザラストロにさらわれた娘パミーナを助け出すよう頼まれる。 パミーナの肖像画を見て一目惚れしたタミーノは、女王から「魔法の笛」をもらい、鳥刺しのパパゲーノと共に救出に向かう。 しかし、実はザラストロは「光の世界」を支配する徳の高い人物だった…。 METライブビューイング2017-2018シーズン第2作。 MET2017年10月14日公演のスクリーン上映。 ドイツ語(日本語字幕付き)。
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ジュリー・テイモア

『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』象のロケット
『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)Richard Termine/Marty Sohl/Ken Howard/Cory Weaver/Metropolitan Opera All rights reserved.

mateki1.jpg 【解説と感想】本作「魔笛」はモーツァルト最後のオペラ。謎の秘密結社「フリーメイソン」の儀式や思想が反映されているとか、「魔笛」を書いたからモーツァルトは殺されたのだとか、信じられないような噂まである。「フリーメイソン」がどんな団体なのか、「ボーイスカウト」や「ロータリークラブ」とどこが違うのか私には分からないが、確かにストーリーは謎めいている。しかし、先入観を捨て去れば、華やかで楽しい大人のメルヘンである。

王子タミーノは、夜の女王から悪魔ザラストロにさらわれた娘パミーナを助け出すよう頼まれる。パミーナの肖像画を見せられて一目惚れしたタミーノは、女王から「魔法の笛」をもらい、ノー天気な鳥刺しの男パパゲーノをお供に救出に向かう。しかし、実はザラストロは「光の世界」を支配する有徳者だった。パミーナと結ばれるために、タミーノは数々の試練を受けるのである。この試練が、「自由・平等・寛容」を標榜する団体「フリーメイソン」の奥義と関係があるのかもしれない。

mateki3.jpg 一応、主役は王子タミーノ(チャールズ・カストロノヴォ:テノール)、ヒロインは王女パミーナ(ゴルダ・シュルツ:ソプラノ)で、若いカップルの恋物語&救出劇である。しかし、夜の女王(キャスリン・ルイック:コロラトゥーラ・ソプラノ)の存在感はあまりにも大きい。夜の女王のアリア『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』は、娘パミーナに「あんたが極悪人ザラストロ(ルネ・パーペ:バス)を殺さないなら、もう親子の縁を切るわよ!」 と命令するヒステリックな歌詞なのだが、脳天突き抜けるほど高音(へ音)の超絶技巧が素晴らしすぎて「はいっ、何でも言うこと聞きます!」と、ひれ伏したくなる。1幕と2幕と合わせても十数分間しか登場しないのに、観客の心に魔法をかけて全て奪い去ってしまう。巨大な羽が広がる衣装は、まるで紅白歌合戦の小林幸子のようで貫禄十分。漆黒の女王様だ。
mateki4.jpg
一方、鳥刺し(鳥捕獲業者)のパパゲーノ(マルクス・ヴェルバ:バリトン)は道化役。「俺は鳥刺し」と歌うアリアはユーモラスで、場の雰囲気が一気に和む。浅知恵のパパゲーノと彼の花嫁候補パパゲーナとのやり取りは可笑しくて、笑いどころだ。彼の存在感も大きくて、もう一人の主役と言えるだろう。


一応、舞台は古代エジプトらしいが無国籍風。遠い国から来たタミーノの衣装はモンゴルの騎馬民族風で、彼が大蛇に襲われる場面は中国の京劇のよう。
mateki2.JPG ザラストロはイシスとオシリス(エジプトの神)に仕える神官。夜の女王はクレオパトラのイメージだろうか。パパゲーノの緑の衣装は中世ヨーロッパのメルヘン風だし、ウィーン少年合唱団のような少年たちはキリスト教の天使に見える。ただしメークが奇抜で、誰の顔もよく分からな〜い! 演出は「ライオンキング」を手掛けたジュリー・テイモア。黒子が操る動物は可愛くて面白い。舞台装置も衣裳も相当お金がかかっている。出演するのは名だたるスター歌手だし、「収益はとても製作費に満ち足りませんから寄付をお願いします。」と毎回言っているのも頷ける。指揮者はMETに君臨する音楽監督ジェイムズ・レヴァイン。オーケストラにも序曲から聴き惚れてしまう。

親離れの時期が来た世間知らずの王女と、旅に出て真の強さと徳を身に着ける王子の冒険ラブ・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年11月15日

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』お薦め映画

★★★★★ 2016年製作 米 (103 min)
【監督】トラヴィス・ナイト
【出演者】
(声)アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、レイフ・ファインズ、ルーニー・マーラ、他
(日本語版吹替)ピエール瀧、川栄李奈、小林幸子、他
【あらすじ】三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操る少年クボ。 闇の魔力を持つ祖父・月の帝に狙われた彼は、片目を奪われ、父親を亡くし、更には母までも亡くしてしまう。 クボは月の帝と戦うことを決意し、厳しいが面倒見のよいサル、ノー天気なクワガタの姿をした元ニンジャ侍と共に旅に出る。 戦いに勝つためには、3種の武器が必要だった…。 アニメーション。

アカデミー賞ノミネート(長編アニメーション賞・視覚効果賞)、アニー賞キャラクターアニメーション賞・美術賞・編集賞、他多数受賞

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』象のロケット
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2016 TWO STRINGS, LLC. All rights reserved.


kubo1.jpg 【解説と感想】先月、有楽町の外国人観光客向け劇場「オルタナティブシアター」のこけら落とし公演「アラタ」を見てきた。一応ストーリーはあるがセリフはほぼなく、チャンバラ世界の雰囲気を楽しんでもらおうというエンタテインメントだった。とにかく今、ニンジャとサムライは外国人に大人気。東京オリンピックへ向けて今後の需要も高まるばかりだが、全国各地のテーマパークではニンジャが大変不足しているらしい。また観光客向けの土産物店には、折り紙、扇子、手ぬぐい、箸等が並んでいて、和の小物の人気のほどがうかがえる。「さて、本作はアメリカ人監督が作った、日本を舞台にした時代劇ファンタジー・アニメ。監督はかなりの親日家で時代劇がお好きのようだ。

kubo2.jpg 主人公は片目のない少年クボ。彼は三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという不思議な力を持っている。クボは苗字ではなく、名前(ファーストネーム)。母は息子を「クボ」と呼ぶ(ケンとかジョーで良かったのに)。かなりモヤモヤするけれど、許してあげよう。クボは心を病む母と2人暮らし。亡き父ハンゾウはサムライだった。ハンゾウを殺したのは闇の魔力を持つ母方の祖父“月の帝”で、2人の恐ろしく強い伯母を使ってクボを闇の世界に引き入れようとしている。

kubo3.jpg クボは折り紙で出来た武士を道案内に、厳しいが面倒見のよいサルと、ノー天気なクワガタの姿をした元ニンジャ侍と共に、月の帝を倒すための武器、「折れずの刀」「負けずの鎧(よろい)」「敗れずの兜(かぶと)」を探す冒険の旅に出る。途中で伯母たちに何度も襲撃される。化け物たちとの戦いもあり、お化け屋敷に迷い込んだような気にもなるが、サルとクワガタのやり取りが笑わせてくれる。躾や教訓がちょっぴり入っているのも、昔ばなし風だ。

kubo4.jpg アメリカ人監督が作ったとは思えないほど、日本的な物語。ストーリーも絵も音楽も、日本文化を研究した上で製作されているのがわかる。外国映画によく登場する、アジアを一緒くたにしたヘンな日本ではない。クボが暮らす村の描写は江戸時代風だし、登場人物の髪型や着物は身分に応じたもので、布の質感まで出ている。お祭りや灯籠流し、墓参りには風情がある。三味線の音色は格調高く(日本語吹替版の主題歌は、世界的三味線奏者の吉田兄弟が担当)、折り紙が自在に姿を変える様は見事で夢があり、浮世絵を感じさせる場面もある。わびさびを感じさせる一方、戦いの見せ場は大掛かりでワクワクドキドキさせてくれる。本作には外国人が大好きな「日本」が、いっぱい詰まっているのである。

キャラクターの顔立ちは西洋アニメに出てくる東洋人という感じでつり目だが、日本アニメのおメメぱっちりキャラクターよりずっと日本人っぽく、表情も豊かだ。1コマずつパーツをはめかえる、大変手間のかかる「リプレイスメント・アニメーション」技法で作られているのだという。字幕版も一興だったが、やはり吹替版の方が落ち着く気がした。

天涯孤独のクボを、いつも誰かが見守っている。ラストは意外な展開で、ジーンとさせられた。試練を乗り越え、少年が本当の強さと優しさを見につけていく成長物語。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年11月01日

『ジグソウ:ソウ・レガシー』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米・カナダ (92 min)
【監督】ピーター・スピリエッグ、マイケル・スピリエッグ(デイブレイカー)
【出演者】
マット・パスモア
カラム・キース・レニー(ブルーに生まれついて、天才スピヴェット、X-ファイル:真実を求めて、バタフライ・エフェクト)
クレ・ベネット(スティール)
ハンナ・エミリー・アンダーソン、ローラ・ヴァンダーヴォート、マンデラ・ヴァン・ピープルズ、ポール・ブラウンスタイン
【あらすじ】“さあゲームをしよう、お前たちは嘘をついてきた 罪を告白せよ、真実のみがお前らを自由にする 生きるか死ぬか、お前たち次第だ” 鎖に繋がれた5人の男女は、ゲーム開始を告げられる。 一方、刑事のハロランとキース、検視官のローガンとエレノアは、10年前に死んだはずの連続殺人犯ジグソウそっくりの手口で殺された死体を目にする…。 大ヒットショッキング・スリラー第8弾


『ジグソウ:ソウ・レガシー』象のロケット
『ジグソウ:ソウ・レガシー』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Lions Gate Entertainment Inc. All rights reserved.
Photo credit: Brooke Palmer


jigsaw1.jpg 【解説と感想】近年、長すぎるタイトルの映画や本が多いなか、サイコスリラーの大御所「ソウ」シリーズは「ソウ」、「ソウ2」〜「ソウ6」と、サッパリ短い。「ソウ」という言葉に「SAWのこぎり(犯人が好んで使用する凶器)」「SAW見た(いつも誰かが全てを見ていた!)」「JIGSAWジグソウ(カリスマ殺人鬼ジョン・クレイマーの通称)」、その他いくつもの意味が込められているという。前作は「ソウ ザ・ファイナル 3D」で、ようやく完結したと思ったのに、新作は「ジグソウ:ソウ・レガシー」というタイトル。「ラスト」や「ファイナル」の後、早々に「ゼロ」や「ファースト」が来る時代の流れに、「ソウ」も乗っかっちゃったのだろうか。まだまだ続きソウ…。

毎度、数人の男女が知らぬ間に拉致され目覚めたらなぜか監禁されていて、ゲームに勝たないと死ぬよっと、ブサイクな人形に脅される。今回も男3人と女2人がバケツを被せられ、鎖に繋がれている。ワンパターンだが、殺し方が残忍で凶器もマニアックだし、犯人ジグソウの手下が誰なのかを探す楽しみがあるし、何より欠かさず見に行くコアなファンがいるからこそ続いて来たのだろう。劇中でも「ジグソウ信奉者」が多いと自画自賛している。

jigsaw2.jpg ソウ好きな人は、1:変態。2:拷問道具マニア。3:サド。4:忍者部屋のようなカラクリもの好き。5:パニック状態の人間を観察するのが大好き。6:悪を成敗したい人。7:正義の味方。8:スプラッタ殺人好き。9:謎解き好き…と、いろいろ考えられる。もちろん7の私は、ジグソウを演じている俳優トビン・ベルの顔が大好きだ。あのモグモグした口元に見とれてしまう。まるで聖職者のように崇高な顔つきで、心から懺悔し「これから一生、世のため人のために尽くします!」と約束すれば、許してくれそうな気がしてくる。

ソウ、そこが面白いのだ。ワケの分からない気持ち悪いホラーなんか見たくないよと思う人も、ジグソウには多少共感できるかもしれない。なぜなら、被害者はみな何かしらの罪を犯しているのに加害者だという自覚がなく、その罰をまだ受けていないのだから。彼らを「天に変わってお仕置きよっ!」と拷問してくれるのが、必殺仕事人ジグソウなのである。

しかし、「ソウ」シリーズの殺し方は凄まじい。今回一番強烈だったのはラストシーン。見てからだいぶ経っているのに、切り口がアップになった光景が目に焼き付いて離れない。水族館に似た生物がいて、ウッヒャーだ! 鑑賞後、寿司屋はやめた方がいいと思う。そもそも流血が苦手な方は見に行かないだろうが、念のため。

多少そのえげつなさに慣れてきたせいか、ジグソウが閻魔(エンマ)様(死者が生前に犯した罪を全て知っていて、地獄へ落とすか否かを判断する冥界の王)のようにも感じられて、ちょっと楽しくなってしまう。
謎解きしながら進むストーリーの運びはスムーズで、ゲームの駆け引きや、縛られた男女が恐れおののく表情もいい、裁決方法にも異論なし、殺人装置や小道具も凝っている。被害者然とした罪人に阿鼻叫喚の天誅を下す、ソリッド・シチュエーション・スリラー第8弾。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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