2017年01月20日

『沈黙 サイレンス』お薦め映画

★★★★ 2016年製作 メキシコ・台湾・米 (159 min)
【監督】マーティン・スコセッシ(ディパーテッド、ヒューゴの不思議な発明、ウルフ・オブ・ウォールストリート、タクシードライバー)
【出演者】
アンドリュー・ガーフィールド(アメイジング・スパイダーマン2、アメイジング・スパイダーマン、ドリーム ホーム 99%を操る男たち、ソーシャル・ネットワーク)
リーアム・ニーソン(ラン・オールナイト、96時間、レ・ミゼラブル、スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス)
アダム・ドライバー(スター・ウォーズ フォースの覚醒、奇跡の2000マイル、フランシス・ハ、ヤング・アダルト・ニューヨーク)
窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也
【あらすじ】17世紀(江戸時代初期)。 長年、日本で布教活動していたポルトガル人宣教師フェレイラは、幕府の激しいキリシタン弾圧に耐えられず棄教したと噂されていた。 師の安否と真実を確かめるため、弟子の司祭ロドリゴとガルペは、日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。 そこでは想像を絶する苛酷な弾圧が行われていた。 囚われたロドリゴは、究極の選択を迫られる…。 歴史ドラマ。
原作:遠藤周作『沈黙』

『沈黙 サイレンス』象のロケット
『沈黙 サイレンス』作品を観た感想TB

画像Copyright(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

silence1.jpg 【解説と感想】20年近く日本でカトリックの布教活動をしていた師である教父フェレイラ(リーアム・ニーソン)の生死と、彼が本当に棄教したのか否かを確かめるため、主人公である若き司祭ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)と、同僚ガルペ(アダム・ドライバー)は、ポルトガルから遠路はるばる長崎へ渡った。時はキリシタン(キリスト教信者)が幕府を敵に回した一揆(ということにされてしまった)「島原の乱(1637〜8年)」から間もない頃で、キリスト教はご法度の時代。2人は隠れキリシタンの里に潜伏するしかなかった。

silence2.jpg カトリック信者である日本人作家・遠藤周作(1923〜1996)が1966年に書いた小説「沈黙」(モデルはいるがフィクション)を、恐らくはカトリック信者であろうアメリカ人監督マーティン・スコセッシ(1942〜)が映画化した。撮影地は台湾だというが、「変な日本人」がいない違和感のない時代劇で、安心して見ていられた。ポルトガル人宣教師をハリウッド俳優が演じ、英語で会話していることについては、…日本人はあまり気にしないだろう。

3人の宣教師の顔は皆、よくあるイエス・キリストの顔に似ている。実際3人は、自らの置かれた状況とイエスの苦難を重ねて困難に耐える。彼らは死を恐れない。殉教は誇らしくさえあるのだ。しかしその先には殉教より辛い試練が待っていた。何人をも受け入れ、罪を赦し、神の愛を説くという信念が揺らぎかねない。やがて、司祭としてあるまじき疑問がロドリゴの頭に浮かぶ。

江戸時代のこととはいえ、世界中のキリスト教徒にすみませんと言いたくなるような拷問シーンだ。西洋諸国の植民地にされないようにと、小さな島国・日本は必至だった。キリシタン禁止と鎖国は幕府にとっては必要なことで、それは政治的には成功したのである。かつては仏教ですら、排斥された時代もあった。今もなお、政治・宗教・経済・戦争は、複雑に絡み合っている。

silence3.jpg 日本人キャストも村人役(塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ、等)まで豪華。能面のような顔をした通訳(浅野忠信)、老獪な井上筑後守(イッセー尾形)、そして日本人側の主役と言えるのが、ロドリゴたちをマカオから長崎まで連れてくる日本人漁師キチジロー(窪塚洋介)。最初から信用できない雰囲気を漂わせていて、ロドリゴたちは懸念する。イエスを裏切った弟子ユダのように、キチジローが自分たちを売るのではないかと。キチジローは迷える子羊、弱き人間の代表だ。窪塚洋介の演技が素晴らしかった。

silence4.jpg 私も純真だった高校時代は「沈黙」を読み、これが真の信仰の姿だと感銘を受けたものだが、世俗にまみれた今読むと、キリスト教が弾圧された政治的背景や、貧しい百姓が天国に憧れた気持ち、日本人全般の宗教観にばかり目が行ってしまう。私は神社・寺院・教会のどこへでも気軽に足を運ぶ、一般的な宗教心の薄い日本人で、熱心に宗教活動をする人の気持ちは分からない。だが「沈黙」はそんな私の心にも響く崇高な文学作品であった。本作を見た後も、その気持ちに変わりはない。映画からは今の社会へのメッセージが伝わってくる。信仰を超えた人としての道が問われる重厚な歴史ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
 
 
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2015年10月31日

『ローマに消えた男』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 仏・伊 (94 min)
【監督】ロベルト・アンドー
【出演者】トニ・セルヴィッロ(湖のほとりで、眠れる美女、グレート・ビューティー 追憶のローマ)
ヴァレリオ・マスタンドレア(天使が消えた街)
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ふたりの5つの分かれ路、華麗なるアリバイ、嘘の心、私の男)
ミケーラ・チェスコン、アンナ・ボナイウート、エリック・グエン、アンドレア・レンツィ
【あらすじ】統一選挙が迫るイタリア。 最大野党を率いる書記長エンリコ・オリヴェーリは支持率低迷に悩み、突然ローマから失踪してしまった。 腹心の部下アンドレアはスキャンダルを揉み消すため、エンリコと瓜二つの双子の兄ジョヴァンニを替え玉に起用する。 ジョヴァンニは哲学の教授だが、精神治療施設を退院したばかり。 人が変わったような書記長の言動は、たちまちメディアの注目を集めることに…。 コメディ。
イタリア・アカデミー賞最優秀脚本賞・最優秀助演男優賞、他受賞

『ローマに消えた男』象のロケット
『ローマに消えた男』作品を観た感想TB

画像(C)Bibi Film(c)Rai Cinema All rights reserved.

roma1.jpg 【解説と感想】少し前に終了した深夜ドラマ「民王」を時々見ていた。父親である総理大臣(遠藤憲一)と大学生の息子(菅田将暉)の「異変によって中身だけが入れ替わってしまう」という話で、二人の演技に笑わせられた。

本作「ローマに消えた男」は、ありえない「異変」ではなく、「意図的に別人に成りすます」お話。主人公であるイタリアの大物政治家エンリコ・オリヴェーリ(トニ・セルヴィッロ)が失踪。困り果てた秘書アンドレア(ヴァレリオ・マスタンドレア)が、エンリコと瓜二つの双子の兄ジョヴァンニ(トニ・セルヴィッロ2役)を替え玉に起用するという、これまた楽しいストーリーである。

来月11月20日公開の『Re:LIFE リライフ』は、アカデミー賞脚本賞を受賞したものの、その後15年間も鳴かず飛ばずの脚本家キース(ヒュー・グラント)が、大学の講師を依頼される、「天職」とは何かを考えさせる作品だった。自分の天職が何なのかは、時として人生の終盤までわからないものだ

roma2.jpg 本作の場合、鬱状態の悩める政治家である“ローマから消えた男”エンリコは、一般人のフリをして憧れていた映画業界の裏方アルバイトをやり、ひとときのアバンチュールを楽しみ、心の平穏を噛み締める。一方、哲学の教授である“ローマに現れた男”ジョヴァンニは躁状態。政治家としてマスコミの質問を煙に巻き、爽やかな弁舌で選挙民を惹きつける。彼らはこのまま、新しい人生を歩んだ方が幸せなのではと思ってしまう。

何処の国も政治不信。選挙では、華麗な経歴や実現できるかどうかも分からない公約より、基本的な政治理念と、要はこの人に任せてみようかなという漠然とした信頼感つまりはカリスマ性が重視される。結果として政治がコケれば、それは騙された私たちが悪いのだ。ジョヴァンニの選挙演説は、全く以って具体的ではないのだが、ついつい拍手したくなる。特に笑顔がいい。

roma3.jpg ところで、家出中のエンリコが居候しているのは、フランス・パリで暮らす25年前に別れた元恋人ダニエル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)の家。そこには彼女の夫や娘がいるというのに! 誰もエンリコに警戒心を抱かない大人の対応で、エンリコだけが困ったチャン。果たしてやけぼっくいに火はつくのか? そして気の毒なのは、替え玉スキャンダル露見を恐れる政治家秘書アンドレア。縁の下の力持ちに徹し、誠実に政治家を支える彼に、共感を覚える男性は多いのではなかろうか。

roma4.jpg 双子は間違われるのに慣れている。エンリコとジョヴァンニは幼い頃から、時々ワザと入れ替わって楽しんでいたらしい。果たして最後に政界に残る男は、兄と弟のどちらなのか? 彼らそれぞれの本当の天職とは? 爽やかで洗練された、ミステリアスな大人のコメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2015年10月02日

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』お薦め映画

★★★★ 2015年製作 独 (114 min)
【監督】オリヴァー・ヒルシュビーゲル(ヒトラー 最期の12日間、インベージョン、ダイアナ、es ≪エス≫)
【出演者】
クリスティアン・フリーデル(白いリボン)
カタリーナ・シュットラー(コーヒーをめぐる冒険)
ブルクハルト・クラウスナー(コッホ先生と僕らの革命、白いリボン、ベルリン,僕らの革命、ゲーテの恋 君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」
ヨハン・フォン・ビュロー、フェリックス・アイトナー、ダーヴィッド・ツィンマーシート、リュディガー・クリンク
【あらすじ】1939年11月8日、ドイツ・ミュンヘンのビアホールで恒例の記念演説を行っていたヒトラーは、いつもより早く話を切り上げて退席。 その13分後、ホールに仕掛けられていた時限爆弾が爆発する。 逮捕された36歳の男ゲオルク・エルザーは、外国のスパイではなく、田舎に住むただの家具職人だった。 なぜ彼は暗殺者となったのか…? 実話から生まれた物語。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』象のロケット
『ヒトラー暗殺、13分の誤算』作品を観た感想TB

画像(C)2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG cBernd Schuller All rights reserved.

elser1.jpg 【解説と感想】「安全保障関連法」が怒号のなか成立した。 60年、70年安保の頃は知らないが、こんなに国民が政治に関心を持ったのは、1988年に「消費税法」が成立した時以来ではなかろうか。賛成でも反対でもいいから、国民特に若い世代が政治に関心を持つのは良いことだと思う。ただ、お祭り気分で騒いでいるだけ、時代の流れを見物に来ているだけのような人々もいたようだ。皆が同じ方向を向いている時は気分も高揚するし、そこにいるだけで何かをやり遂げたような達成感があるのだろう。

さて本作の主人公は、ナチス・ドイツの最高指導者アドルフ・ヒトラー(1889〜1945年)を暗殺しようとした男ゲオルク・エルザー(クリスティアン・フリーデル)。 彼はヒトラーを殺そうとしたが失敗し、その時に8名の無関係な人々を死亡させた殺人犯だ。

今日ではヒトラーは20世紀最大の嫌われ者であり、彼を暗殺しようとしたエルザーは、近年英雄視されつつあるらしい。だが暗殺当時はヒトラーの全盛期で、エルザーは極刑に値するテロリストだった。罪もない人々を8名も殺したのだから、今だって死刑のはずだが、その時めでたくヒトラーが殺されていれば、ひょっとしたら数百万とも言われるユダヤ人大量虐殺は防げたかもしれない。
ヒトラー暗殺は「ワルキューレ」事件など何度も起こったものの結局は未遂に終わり、神に選ばれし者のように生き延びたヒトラーは、不幸にも勢力を拡大してしまったのである。

elser2.jpg エルザーは単独犯だと供述している。今や真偽のほどは不明だが、ナチスの情報力をもってしても、彼の所属組織や共犯者を挙げることはできなかった。エルザーは小さな町の家具職人であり、政治家や軍人でも、ユダヤ人でも、レジスタンスや共産主義者でも、インテリの理想主義者でもなかった。それどころか犯行前は、若者らしく音楽やダンスに興じ、人妻エルザ(カタリーナ・シュットラー)に手を出したりする、たいした正義感も政治思想もなさそうな男だったのだ。ところが逮捕後、彼は見事な変貌を遂げる。拷問に耐え尋問に受け答えする様子は、「信念の人」にしか見えない。

elser3.jpg ヒトラーは最初から恐ろしい独裁者だったのではない。国民の支持を得たからこそ、首相にまで上り詰めることができた。エルザーがヒトラー暗殺を実行したのは1939年。ヒトラーの権威が失墜しついに敗れるのは1945年だから、彼は極めて早い段階で、ヒトラーが危険だと見抜いたことになる。ナチスの台頭によって暮らしが変わっていくのを何となくおかしいと肌で感じていたのが、エルザーたち一般市民だった様子が、本編中でも描かれている。世界は突然ではなく、少しずつ変わっていく。気づいたら変わっていた、という日が突然やって来るだけなのだ。

elser4.jpg いくら志が高くても、一人の力なんてたかが知れている。大きな力を持たないと何もやり遂げることができないとよく言われる。しかし例えば選挙を前に複数の政党が組む場合など、大義のためにかなり無理な妥協をしなくてはならないし、結局は細かい差異が衝突を招き、やがて崩壊してしまう。大勢で真っ直ぐ行進するのは大変だが、一人だと大きなことはできない代わりに、小回りが利く。

自分が小さな存在で何の力もないと自覚する人は、市井の人が自身の感覚に従って行動を起こしたこの事件を、忘れてはならないと思う。もちろん彼のような殺人行為は言語道断だが、世のため人のために、一人でもできることはたくさんある。誰とも組まずたった一人でヒトラー暗殺を行った、平凡な男の実像と犯行動機に迫る歴史ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2015年08月24日

『クーデター』お薦め映画

★★★★ 2015年製作 米 (103 min)
【監督】ジョン・エリック・ドゥードル(デビル)
【出演者】
オーウェン・ウィルソン(ミッドナイト・イン・パリ、エネミー・ライン、ダージリン急行、マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと)
レイク・ベル(ミリオンダラー・アーム、ベガスの恋に勝つルール、恋するベーカリー 別れた夫と恋愛する場合、抱きたいカンケイ)
ピアース・ブロスナン(サバイバー、007/ダイ・アナザー・デイ、テイラー・オブ・パナマ、ダンテズ・ピーク)
スターリング・ジェリンズ、クレア・ギア
【あらすじ】東南アジア某国へのインフラ整備支援事業のため、妻と幼い娘2人を伴い赴任したジャック。 ところがクーデターが勃発し、平和な国は一変。 「外国人を殺す。 捕虜は取らない。 皆殺しだ!」との怒号が響き渡り、政府と外国人をターゲットとした殺戮が開始された。 多くの外国人が滞在していたホテルは、暴徒と化した国民に取り囲まれてしまう。 ジャックは何とか妻子を守ろうとするが…。 サスペンス・アクション。

『クーデター』象のロケット
『クーデター』作品を観た感想TB

画像(C)2015 Coup Pictures, LLC. All rights reserved.

noescape1.jpg 【解説と感想】夏休み、家族で海外旅行に行かれた方も多いことだろう。楽しい思い出づくりになる反面、飛行機事故や、テロ、無差別殺人、またはMERS(マーズ)ウイルスに感染したり、盗難や自然災害に遭ったりなど、旅に危険はつきものだ。

本作の舞台は、東南アジアの某国。アメリカ人ジャック(オーウェン・ウィルソン)は、妻(レイク・ベル)と幼い娘2人を連れ、水道関係の支援事業のため赴任してきた。ところが翌朝クーデターが勃発し、滞在中の外国人の皆殺しが始まる。ジャック一家が泊まっているホテルは外国人客が多いため、暴徒に囲まれてしまう。

noescape2.jpg まず怖いのは、来たばかりの外国人には何が起こったのかサッパリわからないこと。ホテルに英字新聞が届かないのでジャックは市場まで買いに行く。だが、新聞はどこにもなく、街の様子が何だかおかしいことだけが分かる。まだクーデター情報が各方面に伝わっていないためだ。現地の言葉が分からないジャックには、人々が血相を変えて叫んでいる内容も理解できない。英語を話せる人は多いはずだけれど、向こうは全外国人が敵だと思っている。扇動された殺人者たちは、文字通り「皆殺し!」を仕掛けてくる。

とにかく家族を守らなければならない。ジャックは元特殊部隊でもスパイでもなく、ごく普通の会社員。腕力では武器を持った暴徒に敵わないから、逃げるしかない。とはいえ、昨日到着したばかりで道も知らず、どこへ行けばいいのかも分からない。見つかれば即刻殺されてしまう。一家がまず考えたのは、アメリカ大使館を探すことだった。

noescape3.jpg 現地で出会った、妙に馴れ馴れしい胡散臭いアメリカ人男性(ピアース・ブロスナン)は、クーデターは自分たちのせいだと言わんばかり(後で007を思い起こさせるシーンあり)。世界を動かす大国アメリカへの皮肉が込められている。そう言われても支援事業とクーデターの関係を深く考えているヒマはなく、ジャックたちはとにかく逃げる。どこへ行っても襲われる。金髪の白人は目立ってしょうがない。幼い娘たちは可愛いが手がかかる。自分の命に代えても子どもたちを守らなければと、パパとママは通常なら考えられないほどの頑張りを見せてくれる。オーウェン・ウィルソン、本当に優しくてお人好しな普通の父親に見える。他の作品でもお人好しに見えるが、本当はそうじゃないのなら、名演技だ。果たして一家は助かるのだろうか?

雨あられのような銃弾の中、ひたすら隠れ、逃げ続ける。シンプルなストーリーだが、もし海外旅行や海外赴任中にこんなクーデターやテロが起こったらと考えると、ちょっと心配になってくる。殺害はされなくても拘束され、しばらく帰国できないかもしれない。私たちも遭遇する可能性はゼロではない絶体絶命のサバイバル・スリラー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2015年06月25日

『ナイトクローラー』お薦め映画

★★★★★ 2014年製作 米 (118 min)
【監督】ダン・ギルロイ
【出演者】
ジェイク・ギレンホール(エンド・オブ・ウォッチ、プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂、ムーンライトマイル、ZODIAC)
レネ・ルッソ(身代金、ティン・カップ、トーマス・クラウン・アフェアー、ビッグ・トラブル)
リズ・アーメッド、ビル・パクストン
【あらすじ】学歴もコネもなく仕事にあぶれていた男ルーは、たまたま事故現場を通りかかる。 そこにいたのは「ナイトクローラー」と呼ばれる、報道スクープ専門の映像パパラッチだった。 早速ビデオカメラを手に入れたルーは、警察無線を傍受しながら事件や事故の発生を待ち、猛スピードで車を走らせて現場に駆け付ける。 過激な映像は高く売れたが、局の要求はさらにエスカレートしていく…。 サスペンス・スリラー。

『ナイトクローラー』象のロケット
『ナイトクローラー』作品を観た感想TB

画像(C)2013 BOLD FILMS PRODUCITONS, LLC. All rights reserved.

nightcrawler1.jpg 【解説と感想】真面目な報道がある一方で、マスコミの「フライング」や「ヤラセ」、「不自然な沈黙」、「情報操作」等への疑念も拭えない。先日、選挙権年齢が18歳に引き下げられることが決まった。報道を鵜呑みにしてはいけないと、小学生の頃から教えておくべきだろう。しかし、根拠のない噂話も、ニュースで取り上げられると信じてしまうのが人情。嘘と真実を見分けることは、大人であっても難しい。

nightcrawler3.jpg 本作の主人公ルイス(ジェイク・ギレンホール)は、芸能ネタではなく、事件・事故現場を撮影し、その映像をテレビ局に売って稼ぐフリーカメラマン(通称:報道パパラッチ“ナイトクローラー”)。まずはジェイク・ギレンホールの、ギスギスギラギラした容姿に驚かされた! 役作りのため12キロ減量し、昼夜逆転の生活を続けたのだという。失業中で食うや食わずの生活を送っていたルイスは、偶然遭遇したカメラマンの真似をして写真を撮り、テレビ局へ売り込みに行く。経験もツテもないのに、大した度胸である。

nightcrawler5.jpg 世の中には、ハッタリをかまし前へ前へ出て成功する人と、怖気づいて後ずさりし川へ落ちてしまう人がいる。明らかにルイスは前者で、私は後者だ。ルイスの見上げた根性はハングリー精神に裏打ちされている。盗みや不法侵入、ヤラセなんて朝飯前。罪悪感なんか感じない。生きるためには何だってやってやると腹をくくっている。不屈の闘志とサバイバル能力は買うが、決してお近づきにはなってはいけない。利用されて後悔するだけ…ああ、そんなふうに考えるから、私は川へ落ちてしまうのだ!

nightcrawler2.jpg ルイスの、テレビ局の女性ディレクター、ニーナ(レネ・ルッソ)への態度は図々しく、部下のリック(リズ・アーメッド)への態度は尊大。とんでもないパワハラ&セクハラ野郎である。たとえ成功したとしても、ずっと彼は一匹狼だろう。いや、それ以前に、逮捕されてしまうのではないか? とまあ、主人公のイヤな面ばかりが目についてしまうが、ストーリーは文句なしに面白い! 

警察の無線をキャッチして、深夜のロサンゼルスを走り回るナイトクローラーたちは、餌に群がるハイエナ。まるで報道パパラッチの密着ドキュメンタリーを見ているようだ。死者や怪我人に敬意を払うことなく、嬉々としてカメラを回すルイスの顔は、ホラー映画の殺人鬼よりイカれている。スマホで撮影し送信できる今は、誰でもがパパラッチになり得る時代。ひょっとして、私たちもこんな顔になっていやしないだろうか?

nightcrawler4.jpg テレビ局のアナウンサーはあらかじめ、過激なスクープ映像を見るか見ないかは“自己責任”だと警告してから映像を流す。興味本位でそれを見ている視聴者も、撮ったモン勝ち、放送したモン勝ちのパパラッチ世界を助長させていることになる。ここまで割り切らなければ、生き残れないのだろうか? いやいや、ルイスには必ず天罰が下るはず、彼の末路は哀れなものに違いないと、あなたは期待するかもしれない。彼がどうなるのかについては、ぜひ劇場でご確認を。テレビ業界の裏側を覗いているうちに、人間の本性を見せられているような気になってくるサスペンス・スリラー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 20:34| Comment(0) | TrackBack(7) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする