2018年05月06日

『モリーズ・ゲーム』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米 (140 min)
【監督】アーロン・ソーキン
【出演者】
ジェシカ・チャステイン(ゼロ・ダーク・サーティ、オデッセイ、インターステラー、テイク・シェルター)
イドリス・エルバ(パシフィック・リム、マンデラ 自由への長い道、ダークタワー、テイカーズ )
ケヴィン・コスナー(13デイズ、ラブ・オブ・ザ・ゲーム、Mr.ブルックス〜完璧なる殺人鬼〜、アンタッチャブル)
マイケル・セラ、ジェレミー・ストロング、クリス・オダウド、ビル・キャンプ
【あらすじ】アメリカのコロラド大学を首席で卒業した女性モリー・ブルームが思い描いていたのは、冬季オリンピックのモーグル競技で金メダルを獲得し、法科大学院を卒業して会社を設立するという人生設計。 ところが、怪我で競技を断念した彼女は、ひょんなことからセレブたちが集うポーカールームの経営者となる…。 実話から生まれたクライム・サスペンス。
原作:モリー・ブルーム

『モリーズ・ゲーム』象のロケット
『モリーズ・ゲーム』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 MG's Game,Inc. All rights reserved.


molly1.jpg 【解説と感想】飲む(酒)・打つ(ギャンブル)・買う(女)は男の甲斐性と言うが、破滅させるのもこの3つ。多少の嗜みは「文化」とも言えるが、昔も今も歯止めが利かなくなる人は多く、近年は「依存症」という病名まで付き治療の対象となっている。日本の大会社の役員がカジノで数十億円擦ったというニュースを覚えておられるだろうか。先日カジノ法案が成立し、日本でもリゾート型カジノが作られることになった。レジャー施設で遊ぶだけのつもりだったのに、ついつい賭けにハマってしまったということのないよう気をつけたい。

molly2.JPG さて本作の主人公は、トップアスリートから高額ポーカールームの経営者となり、一大スキャンダルを巻き起こした、実在(1978〜)のアメリカ人女性モリー・ブルーム(ジェシカ・チャスティン)。

今までこの女優にはあまり興味がなかったが、本作を見て、多用されている理由がやっと解かった気がした。大学時代のモリーは、前途有望なモーグル選手としてのオーラを放ち、なおかつ厳格な父親(ケヴィン・コスナー)との関係に悩む優秀な学生だった(若い!)。その後、ポーカー・ゲームのサロンの雑用係となり、徐々に洗練されていく。26歳でポーカークラブを経営するようになってからは、場を取り仕切る美貌の経営者としての貫禄十分。見た目も立場も変わっていくが、どんなモリーをも彼女は魅力的に演じていた。

molly3.jpg ハリウッドスターや映画監督、スポーツ選手、ミュージシャン、実業家ら富裕層がずらりと顧客リストに並び、最低の掛け金は1万ドル(約100万円)。オーナーの招待がなければ入室出来ない。一見さんお断りなのも、金がかかることも、口の堅さが求められるのも、枕営業をしないのも、高級クラブと同じ。ポーカーのシーンはスリリングで、ギャンブラー(マイケル・セラ)らの表情に惹き付けられる。莫大な金が動く場を提供してはいるが、モリーは大事な常連客を一文無しにすることまでは望んでいなかった。ほどほどに楽しんで金を落として欲しかったのだろうが、掛け金によっては金持ちでさえ破産するのがギャンブルの怖さである。

molly4.jpg モリーの裁判を引き受けた弁護士(イドリス・エルバ)とのやり取りで、モリーの性格や信条が浮かび上がってくる(原作はモリーの回想録だが…)。モリーが終盤で父親と顔を合わせるシーンには、ちょっとグッとくるものがあった。浮き沈みの激しい人生を送ってきたモリーだが、現時点で40歳。これからまだ幾波乱もあるかもしれない。何度でも這い上がる女性のガッツを感じる半生記。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2018年03月27日

『友罪』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (129 min)
【監督】瀬々敬久(64 ロクヨン 前編、感染列島、RUSH ラッシュ、8年越しの花嫁 キセキの実話)
【出演者】
生田斗真(脳男、先生! 、、、好きになってもいいですか?、予告犯、僕等がいた)
瑛太(サマータイムマシン・ブルース、嫌われ松子の一生、まほろ駅前多田便利軒、ワイルド7)
夏帆(天然コケッコー、うた魂♪、海街diary、きな子 見習い警察犬の物語)
山本美月、富田靖子、佐藤浩市、忍成修吾
【あらすじ】町工場で働くことになった、元週刊誌記者の男・益田と、同い歳の無口な男・鈴木は、同じ寮で暮らし少しずつ親しくなっていった。 ある事件をきっかけに益田は、17年前の連続児童殺人事件の犯人“少年A”が鈴木ではないかと疑い始める一方で、中学時代に自らが犯した罪を思い起こす…。 ヒューマン・サスペンス。 ≪心を許した友は、あの少年Aだった。≫
原作:薬丸岳

→『友罪』象のロケット
→『友罪』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)薬丸岳/集英社 (c)2018映画「友罪」製作委員会

yuuzai1.jpg 【解説と感想】たとえ法に触れなくても、罪(過失を含む)を犯したことのない人はいない。自分や家族の罪(道徳的罪であっても)には厳しく向き合うべきだが、他人の罪にはある程度、寛容にならなければいけないと思う。しかし何でも検索出来てしまう昨今では、マスコミやネットでの「社会的制裁」がどんどん大きくなっている。そういうことを仕事にしている人だって、清廉潔白ではないはずなのだが…。

yuuzai2.jpg 本作は、かつて「罪」を犯した人のその後を描いたストーリーで、少し前に公開になった「羊の木」と対になっているような作品だ。話が進むにつれ、誰もが1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件の衝撃を思い起こすだろうが、これはあくまでもフィクションである。主人公・益田純一(生田斗真)は生活に困窮し、寮のある工場で働くことになった。一緒に入社したのが同い年の鈴木秀人(瑛太)。ところが、ひょんなことから益田は、鈴木が17年前の連続児童殺人事件の犯人“少年A(本名:青柳健太郎)”ではないかと疑い始めた。

yuuzai3.jpg 「暗い過去」を持つ者が多数登場する。益田自身は、中学時代に同級生を救えなかったことに負い目を感じている。鈴木と親しくなる女性・藤沢美代子(夏帆)と、少年Aの矯正担当だった白石弥生(富田靖子)にも、悔やまれる過去がある。タクシー運転手の山内修司(佐藤浩市)は、息子(石田法嗣)の罪を背負っている。そうは言っても、少年Aの罪と彼らが抱える罪では比較にならない。登場人物たちが時折見せる爽やかな笑顔や、和ませるエピソードが、重いストーリーを多少なりとも軽減させている。

yuuzai4.jpg 鈴木は意外と人懐っこく、結構いい奴のようにも思える。彼の内面について詳しく描かれていないから、彼がもし少年Aだった場合の「罪の意識」がどれほどのものかを知ることは出来ない。少年Aこと青柳は、医療少年院出所後も身元がバレないよう当局に厳重に保護されていたらしい。二度と同様の事件を起こさぬよう見守り、社会復帰を応援するためにあるのが少年院や少年法だからである。被害者家族が彼を許すはずはないが、周囲の思惑とは関係なく、既に彼は一般人として社会生活を送っている。あなたも私も殺人の加害者になる確率は低いが、多数いるであろう「元少年A」と偶然関わることはあるかもしれない。

yuuzai5.jpg メインは鈴木が果たして「少年A」なのかを巡る物語だが、私が心引かれたのはタクシー運転手一家の話だ。運転手・山内の息子は、過失事故で子ども2人の命を奪った。山内は嫌がられながらも被害者遺族への見舞いと送金を欠かさない。ところが、加害者である息子自身は結婚しようとしていて、山内にはそれが許せない。自分も息子も一生幸せになってはいけないと戒める父親と、償いは続けるが自分だって幸せになりたいと願う息子、理解ある息子の結婚相手、心の中では息子の幸せを願う母親(西田尚美)。あなたは誰に共感するだろう。自分の罪を償うということと、加害者の未来について考えさせられる問題作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2018年01月25日

『羊の木』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (126 min)
【監督】吉田大八(紙の月、桐島、部活やめるってよ、パーマネント野ばら、クヒオ大佐)
【出演者】
錦戸亮(ちょんまげぷりん、県庁おもてなし課、抱きしめたい 真実の物語、エイトレンジャー)
木村文乃(伊藤くん A to E 公、火花、ポテチ、イニシエーション・ラブ)
北村一輝(去年の冬、きみと別れ、今夜、ロマンス劇場で、日本黒社会 LEY LINES、猫侍)
優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯
【あらすじ】さびれた港町・魚深(うおぶか)市。 市役所職員・月末(つきすえ)は、新規転入者6人の男女の受け入れ担当を命じられる。 実は彼らは全員、仮釈放中の殺人犯だった。 刑務所のコスト削減と地方の過疎対策を兼ねた国家の新プロジェクトが、この魚深で極秘に行われるのだ。 警察も雇用主も家主も彼らの過去を知らず、6人は互いの存在を知らない、はずだったが…。 サスペンス。
原作:山上たつひこ、いがらしみきお 釜山国際映画祭キム・ジソク賞

『羊の木』象のロケット
『羊の木』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018『羊の木』製作委員会 (c)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

hitsuji1.jpg 【解説と感想】島流しになった罪人の一部は、赦免後も島で一般人としてそのまま暮らしたのだという。昔の流刑人は凶悪犯とは限らず、政権闘争に敗れただけの身分の高い教養人もいたから、島民から尊敬されていたかもしれない。今となっては、もう誰が流刑人の子孫だか分からないだろう。

本作の主人公は、さびれた港町・魚深市(架空の地名:うおぶかし)の若手市役所職員・月末(つきすえ)一(錦戸亮)。新規転入者の受け入れ担当となるが、実は転入者6人全員が仮釈放された殺人犯で、10年の定住が義務付けられている。それは刑務所のコスト削減と地方の過疎対策を兼ねた、極秘の国家プロジェクトだった!

hitsuji2.JPG ビックリだが頷けるような計画だ。名前を変え新天地で出直せば、「刑務所帰り」という色眼鏡で見られず社会復帰しやすいだろう。近頃は全く縁のない土地へIターンする人も増えているし、移住すれば仕事や家を斡旋し補助金まで出してくれる自治体もある。将来は住民が高齢者ばかりとなり、市民生活が維持できない「限界集落」に陥る恐れのある自治体もあるほど、過疎は切実な社会問題となっているのだから。

さて転入者は、気弱だが酒乱の理髪師・福元宏喜(水澤紳吾)、色っぽい介護士・太田理江子(優香)、無口で几帳面な清掃員・栗本清美(市川実日子)、目つきが鋭い高齢のクリーニング店員・大野克美(田中泯)、チャラチャラした釣り船屋・杉山勝志(北村一輝)、フレンドリーな宅配ドライバー宮腰一郎(松田龍平)の6人。ただならぬ雰囲気を漂わせる個性派揃いだ。果たして、魚深プロジェクトは成功するのか…?

hitsuji4.jpg 田舎の人は新参者に興味津々で、根掘り葉掘り聞いてくるもの。転入の経緯や過去を把握しないと安心できない。しかし元受刑者だと正直に打ち明けたら、普通に付き合ってくれるだろうか。仕事や家まで失うかもしれない。月末は真面目でお人好しの公務員で、仕事だからこそ6人に誠意をもって接しているが、事件が起これば転入者を疑ってしまう。自分の父親(北見敏之)が転入者と恋仲になると反対するし、好きな女性・石田文(木村文乃)が転入者と親しくなると平静ではいられない。更に、平穏だった町でかつてないトラブルや大事件が発生し、月末の中で言いようのない不安と恐怖が広がっていく。

hitsuji3.JPG 印象的だったのは、太田理江子が「殺人犯は恋や結婚をしてはいけないのでしょうか?」と開き直るセリフ。前科者は身を引くのが当然という卑屈さがないから気持ちがいい。しかし彼女があまりに美しく色っぽく、なのに相手がショボいオヤジなので、本気の恋なのに介護士が患者をたぶらかしているようにも見える。優香の迫力ある演技と色気に拍手を送りたい。

架空の奇祭「のろろ祭り」には厳かな雰囲気があり、妖怪のような海の神様の伝説も効果的に使われている。大きな設定はそのままだが、登場人物は原作コミックとだいぶ異なり、ストーリーも映画オリジナル。シンプルで感情移入しやすくなっているので大成功だと思う。元受刑者と一般人の、建前と本音があぶり出される問題作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年01月22日

『ミッドナイト・バス』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (157 min)
【監督】竹下昌男(ジャンプ)
【出演者】
原田泰造(ジャンプ、古畑中学生 古畑任三郎、生涯最初の事件、奥さまは魔女、アントキノイノチ)
山本未來(花影、日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場 第一夜、不夜城、エクステ)
小西真奈美(のんちゃん のり弁、いぬのえいが、阿弥陀堂だより、天使の卵)
葵わかな、七瀬公、長塚京三、遠藤雄弥
【あらすじ】故郷・新潟にUターンし、新潟〜東京間を走る長距離深夜バスの運転士をしている高宮利一。 彼には東京で定食屋を営む長年の恋人・志穂がいた。 ある日、16年前に離婚した妻・美雪と偶然再会する。 彼女は入院中の実父のため、時々帰省しているのだという。 自分たちを捨てた母親と関わることに、息子・怜司と娘・彩菜は反発するが…。 ヒューマンドラマ。
原作:伊吹有喜

『ミッドナイト・バス』象のロケット
『ミッドナイト・バス』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017「ミッドナイト・バス」ストラーダフィルムズ/新潟日報社

midnight1.jpg 【解説と感想】都市と地方をダイレクトに結ぶ高速バスは、飛行機や新幹線に比べて時間はかかるが、安いし便利だ。寝ているうちに目的地に着く便だと、朝から行動することができる。窮屈で足がむくんだ昔と違い、今は定員を絞って広々と快適な座席を取り入れたバスも出ている。高速バスの事故が相次いだために労働環境も改善されつつあるというが、それでも長距離の運転は大変だろう。

本作の主人公は、新潟〜東京間を走る長距離深夜バスの運転士・高宮利一(原田泰造)。彼には長い付き合いになる、東京で定食屋を営む志穂(小西真奈美)という恋人がいる。男手ひとつで育てた2人の子どもも手を離れ、ようやく再婚を考え始めたが、それどころではない状況に陥ってしまう。

midnight2.jpg 息子・玲司(七瀬公)は、東京の会社を辞め家に帰って来たが仕事を探しているようには見えないし、娘・彩菜(葵わかな:朝ドラ「わろてんか」のヒロイン)は、副業のご当地アイドル業と結婚の間で揺れている。離婚して16年になる元妻・美雪(山本未來)は、父親(長塚京三)の入院で疲れ果てている。彼らを心配し時間を取られ、志穂との仲もギクシャクしてしまった。

midnight3.jpg 利一は彼らの悩みを聞き流してもいいのである。子どもらは既に成人しているのだし、元妻の家庭問題に関わる義理はない。しかし、そう簡単に割り切れないタイプの人もいる。そんな面倒見が良く包容力のある中年男に、原田泰造がはまりすぎるほどはまっている。彼はお笑いトリオ・ネプチューンのメンバーだということを忘れてしまうほど、ドラマや映画で活躍中。ごく普通の人を演じるのも上手いし、独特の存在感がある。本作出演のために大型自動車免許を取得し、関越自動車道を運転したのだとか。運転士姿も様になっていた。

新潟では一家の主、バスの中では乗客の命を預かる運転手、東京では志穂の恋人である利一は、「トンネルを抜けると男で、戻ると父親」という生活をずっと続けてきた。独身同士でも、結婚のタイミングを掴めないカップルもいる。利一と志穂が再婚するのかどうかが、非常に気になる。

midnight4.jpg 紆余曲折はあるが、この物語に悪人は登場しない。父親と息子、母親と娘は、性格がそっくりだ。離婚しても切れない家族の縁や情というものを、これでもかというほど丁寧に描いている。恋愛、結婚、離婚、再婚、浮気、認知症、介護、嫁・姑の確執、田舎の実家への責任、就職、過重労働等、三世代が直面する危機がふんだんに盛り込まれたヒューマンドラマ。雪景色が郷愁を誘う。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年01月11日

『RAW 少女のめざめ』お薦め映画

★★★★ 2016年製作 仏・ベルギー (98 min)
【監督】ジュリア・デュクルノー
【出演者】
ギャランス・マリリエ
エラ・ルンプフ
ラバ・ナイト・ウフェラ
ローラン・リュカ、ジョアンナ・プレイス、ブーリ・ランネール、マリオン・ヴェルヌ
【あらすじ】学業優秀な16歳の少女ジュスティーヌは、両親・姉と同じ獣医科大学に入学し寮生活を始める。 上級生による地獄の新入生歓迎行事が続き、ある日、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられてしまう。 ベジタリアンの彼女は心身に異変を感じるが、やがて生肉にかじりつくように。 そして、姉アレックスにも同じ異変が起こっていることに気づく…。 サスペンス・スリラー。 R-15+
カンヌ国際映画祭批評家連盟賞、ゲント国際映画祭エクスプロー賞、他多数受賞

『RAW 少女のめざめ』象のロケット
『RAW 少女のめざめ』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2016 Petit Film,Rouge International,FraKas Productions. All rights reserved.

raw1.jpg 【解説と感想】ベジタリアン=菜食主義者には、健康目的の人、思想信条的に肉を食べない人、単なる菜食志向の人がいる。軽い健康目的ならたまには外れたっていいのだが、宗教目的だとダシや調味料にも動物性を許さない。食を制限すると、頭がクリアになり身体も思考も研ぎ澄まされていくような気がしてくる。しかし、肉魚を好む人は攻撃的で、菜食主義者は平和的だというのは幻想だろう。近年、「肉食女子」「草食男子」という言葉が、恋愛に積極的、消極的という意味で広がっている。肉は精(性)をつけるというイメージもある。食と精神は、切り離せないものなのだろう。確かに修行者は精進料理を食べ、女を遠ざける。

raw2.jpg 本作の主人公は16歳の少女ジュスティーヌ。飛び級なのか神童と言われるほど優秀な彼女は、両親の母校である獣医科大学に入学する。姉アレックスも同じ大学にいるので心強い。彼女の家族は厳格なベジタリアンだが、宗教目的ではなさそうである。

彼女の母親は間違ってシチューに肉片を入れたレストランの店員を「娘はアレルギーなのよ!」と怒鳴る。一般的に、慣れないものを食べると身体は何らかの反応を示す。植物性食品しか食べない生活を長年続けていた人が、突然肉を食べた時の衝撃は相当なもの。心身が動物性食品に拒否反応を起こし具合が悪くなってしまう人もいれば、その美味しさに感動し肉料理が大好きになる人もいるのだとか。考え方や生き方が変わる人もいるらしい。アレルギーとはまさに、ワケが分からない反応なのである。

raw3.jpg この獣医科大学、上級生によるイカれたシゴキが多い。たぶん生まれてこの方、まともに肉を食べたことのないジュスティーヌが、新入生歓迎行事で動物の血を浴びせられ、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられてしまう。この地獄のシゴキを通過すれば、獣医学科の動物実験や解体・解剖にも抵抗がなくなるに違いない。ジュスティーヌはショックを受けるが、異変は身体だけでなく、精神にも及ぶ。そして姉アレックスにも同じ反応が起きていることに気づく。姉妹の変貌ぶりは凄まじく、肉の美味しさの虜となり、性に目覚めるくらいならよかったのだが、凄惨な事件が起こってしまう。これはホラーである。誤解をする方はいないだろうが、肉を食べたベジタリアンが皆こうなるわけではない、念のため。

raw4.jpg 親の言いなりだった気弱な少女ジュスティーヌが、強い女性へと変わっていく。姉アレックスは既に変わっていたが、妹を見て安心したのか、更に進化してゆく。詳細は書かないが、姉妹が一緒にいる時に起こった、犬を巻き込むアクシデントは、目を背けたいシーンなのに描写が素晴らしかった。迫真の演技で、終盤の大事件よりずっと印象に残る。

血まみれ描写が続くが、清楚なジュスティーヌとセクシーなアレックスの姉妹が魅力的で、どんどん変わっていく彼女たちの表情から目が離せない。エグいが美しく繊細な青春ドラマであり、見ごたえのあるサスペンス・スリラー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
 
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