2019年01月11日

『洗骨』お薦め映画

★★★★★ 2018年製作 日 (111 min)
【監督】照屋年之(ゴリ)
【出演者】
奥田瑛二(でらしね、もう頬づえはつかない、るにん、リバイバル・ブルース)
筒井道隆(王様のレストラン TV版、俺は、君のためにこそ死ににいく、ボクの、おじさん、BALLAD 名もなき恋のうた)
水崎綾女(光、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN、ReLIFE リライフ)
大島蓉子、坂本あきら、鈴木Q太郎、筒井真理子
【あらすじ】沖縄県の離島・粟国島(あぐにじま)。 新城家の母・恵美子が亡くなり、東京の大企業に勤務する長男・剛と、名古屋で美容師をしている長女・優子は葬儀に駆け付けるが、父・信綱は悲しみのあまり酒ばかり飲んでいた。 …4年後、母の“洗骨”の儀式のため再び島へ戻って来た剛と優子。 兄と妹はそれぞれ、ある事情を抱えていた…。 ヒューマンドラマ。 
ニューヨーク JAPAN CUTS 観客賞

『洗骨』象のロケット
『洗骨』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)『洗骨』製作委員会

【解説と感想】現代はテレビやインターネットの普及、全国チェーン店の増加で、町並みも暮らしも言葉も東京を中心とした画一化が進んでいるが、まだまだ地方の個性が残っているところも多い。それが旅の楽しみでもある。かつては琉球王国だった沖縄と奄美群島には、本土とはかなり違う言葉や風習が残っていて、エキゾチックな魅力と美しい自然が、国内の観光客をも虜にしている。独特の音階の島唄も新しいジャンルの音楽のように人気だ。

senkotsu1.jpg 本作は、そんな沖縄の離島・粟国島(あぐにじま:「粟国の塩」で有名)が舞台で、新城家の母・恵美子(筒井真理子)の葬儀から始まる。田舎では葬式が一大イベントで、ご馳走や酒目当てにやって来る会葬者も多いのが分かる。元は工場経営者だったらしい父・信綱(奥田瑛二)の元に、東京の大企業で働く長男・剛(筒井道隆)、名古屋で美容師をしている長女・優子(水崎綾女)が駆け付けるところまでは、一般的な葬式だ。

senkotsu2.jpg …4年後、母の「法要」=「洗骨」のため、兄と妹はまた島へ帰って来た。この島では葬儀後に「火葬」せず棺をそのまま放置する「風葬」を行い、遺体がすっかり骨になった4年後に、身内が集まって骨を洗う「洗骨」の儀式を行い再び埋葬を行うのだという。親族が集まるというのに、無職の父親はゴミ屋敷で酒浸り。長男はなぜか妻子を連れて来なかった。長女は独身なのに妊娠しており噂の種になってしまう。

父親は、ひたすら情けなくだらしなく、酒に溺れるだけの毎日。いつ死んでもいいと思っている人ほど、お迎えが来ないもの。長男と長女は島とは別世界のような都会で頑張ってきただけに、弱音を吐いたり人に頼ったりすることが出来なくなってしまったようだ。父親も心配だが自分のことで手いっぱい。父親も子どもたちには、もはや何もしてやれない。どん詰まりのこの家族は、もう法事なんてやってる場合じゃないのではと思ってしまうほどバラバラなのだ。

senkotsu3.jpg しかし、葬式や法事は故人の冥福を祈る儀式であると共に、遺族の心を癒す行事でもある。葬儀の準備に慌ただしく追われることが悲しみを紛らわせ、年忌の度に故人と自分の関係を見つめ直す。そして集まる人々の思いやりが遺族の力になるのだ。誰よりも一家を心配している伯母=父の姉・高安信子(大島蓉子)が、ガミガミ言いながらも采配を振るい「洗骨」の準備を進めていく。この肝っ玉オバサンなくしては何も始まらない。「洗骨」を終えて初めて、新城家は前に進むことが出来るのであろう。

初めて見る「洗骨」の儀式は実に興味深く、驚かされた。廃れつつある風習なだけに、後々には貴重な記録にもなるだろう。そして、洗骨に至るまでの紆余曲折が、美しい島の風景と、田舎ののどかさ・不便さ・窮屈さ、普通の家族の軋轢、地方出身者が味わう都会の孤独を浮き彫りにしてゆく。感動的だが、笑いどころ満載でクスクスが止まらない!

監督・照屋年之は、沖縄県那覇市出身のお笑いタレントで俳優のガレッジセール・ゴリの本名。私はそれを知らないまま見に行ったので、ビックリしてしまった。沖縄への愛が詰まった、ユニークで温かい家族のドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 12:02| 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする