2018年06月07日

『羊と鋼の森』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (134 min)
【監督】橋本光二郎(orange オレンジ)
【出演者】
山崎賢人(斉木楠雄のΨ難、ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章、氷菓、アナザー Another)
鈴木亮平(ふたたび SWING ME AGAIN、俺物語!!、花子とアン、忍びの国)
上白石萌音(舞妓はレディ、ちはやふる -結び- 、ちはやふる 下の句、ちはやふる 上の句)
上白石萌歌、光石研、吉行和子、三浦友和
【あらすじ】将来の夢が何もなかった少年・外村は、高校でピアノ調律師・板鳥に出会う。 彼が調律したその音に、生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、調律に魅せられ、その世界に、足を踏み入れていく…。 青春ドラマ。 ≪「羊」の毛で作られたハンマーが、「鋼」の弦をたたく。 ピアノの音が生まれる。 生み出された音は、「森」の匂いがした―≫
原作:宮下奈都 エンディングテーマ『The Dream of the Lambs』作曲・編曲:久石譲/ピアノ演奏:辻井伸行

『羊と鋼の森』象のロケット
『羊と鋼の森』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018「羊と鋼の森」製作委員会


hitsujimori1.jpg 【解説と感想】 ピアノは気温や湿度によって弦が膨張したり収縮したりして音が狂うため定期的な調律が必要で、通常は1年に1回程度プロの調律師に依頼する。プロのピアニストは世界各地のコンサートホールのピアノを弾くので、そのホールの調律師に任せたり、お気に入りの調律師を呼ぶのだという。調律師によって音色が微妙に変わるのだから重要な仕事だ。とはいえ、あくまでもピアノを弾く人が主役で、調律師は黒子である。

hitsujimori2.jpg 本作の主人公・外村直樹(山崎直人)は、高校生の時に学校のピアノを調整しに来た調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)と出会い、一瞬でその音色に魅せられ、調律師の道に進む。出会いは大事だ。外村は北海道の山奥育ちで、クラシック音楽には何の興味もなく、ピアノなんて触ったこともなかった。それでも板鳥の音にとてつもなく惹かれた。ピアノの音から森の匂いを感じたのだ。板鳥が腕のいい調律師だったことはもちろんだが、それが外村の耳に届いたということは、音を敏感に感じ取る耳があったということ。たぶん、自然の音に耳を澄ませて育ったからだろう。街の人間が知らない、森の微妙に変わる風や水の音、匂い、色、感触、などを彼は知っている。

hitsujimori3.jpg 調律の専門学校を卒業した外村は、地元・北海道にある、板鳥がいる江藤楽器に入社し、先輩の調律師・柳伸二(鈴木亮平)に付いて回って仕事を覚えることになった。そこで出会ったのがピアノを習っている高校生、姉・佐倉和音(上白石萌音)、妹・佐倉由仁(上白石萌歌)の姉妹(この2人の女優は実際に姉妹)。佐倉姉妹はプロではないのに、費用もそれなりにかかる調律を頻繁に依頼している。2人で1台のピアノをかなり弾きこんでいて、音の狂いにも敏感。本作は外村と佐倉姉妹の成長物語とも言えるので、それだけに姉妹女優の頑張りが微笑ましく映り、絶妙の配役に感じられた

江藤楽器のもう一人の調律師・秋野匡史(光石研)は、以前はピアニストを目指していた。耳が良いだけに自分の限界を知り、諦めたのだという。この会社は小さいが精鋭集団で、外村の成長を温かく見守っている。とくに板鳥の存在感は大きくて、東京だけが文化の中心地でないことを感じさせてくれるエピソードもある。

hitsujimori4.jpg外村は自分が一人前の調律師になれるのか、仕事を続けていけるのか、自信がなくて常に自問自答している。勉強熱心だからこそ悩む。専門職は続けられれば天職となるが、途中でやめたらつぶしがきかない。若い外村は、今なら他のいろんな仕事に挑戦できるだろう。中堅の柳も、例えば農家に転身したりするのもアリかもしれない。しかしベテランの板鳥や秋野は、もう調律師以外の仕事はできないような顔をしている。サマになるとはそういうことだろう。

hitsujimori5.jpg4月に入社した新入社員の方は、まだ慣れるのに精一杯の頃だろうか。先日公開された「OVER DRIVE」には、望まぬ部署に配属されたスタッフが愚痴る場面があった。望まぬ仕事でも前向きに挑戦してみる人もいれば、すぐ辞めてしまう人もいる。専門職でも自分のやりたい仕事ばかりが出来るわけではない。努力が報われない場合だってある。それでも、仕事に真摯に向き合う気持ちは無駄にはならない。結果を急ぐ若者たちへ「焦るな、結果は今後の君次第だ。」と語りかけているようなヒューマンドラマ。オリジナルのエンディング曲はじめ、ピアノの音にも魅せられる。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 22:54| 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする