2018年01月25日

『羊の木』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (126 min)
【監督】吉田大八(紙の月、桐島、部活やめるってよ、パーマネント野ばら、クヒオ大佐)
【出演者】
錦戸亮(ちょんまげぷりん、県庁おもてなし課、抱きしめたい 真実の物語、エイトレンジャー)
木村文乃(伊藤くん A to E 公、火花、ポテチ、イニシエーション・ラブ)
北村一輝(去年の冬、きみと別れ、今夜、ロマンス劇場で、日本黒社会 LEY LINES、猫侍)
優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯
【あらすじ】さびれた港町・魚深(うおぶか)市。 市役所職員・月末(つきすえ)は、新規転入者6人の男女の受け入れ担当を命じられる。 実は彼らは全員、仮釈放中の殺人犯だった。 刑務所のコスト削減と地方の過疎対策を兼ねた国家の新プロジェクトが、この魚深で極秘に行われるのだ。 警察も雇用主も家主も彼らの過去を知らず、6人は互いの存在を知らない、はずだったが…。 サスペンス。
原作:山上たつひこ、いがらしみきお 釜山国際映画祭キム・ジソク賞

『羊の木』象のロケット
『羊の木』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018『羊の木』製作委員会 (c)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

hitsuji1.jpg 【解説と感想】島流しになった罪人の一部は、赦免後も島で一般人としてそのまま暮らしたのだという。昔の流刑人は凶悪犯とは限らず、政権闘争に敗れただけの身分の高い教養人もいたから、島民から尊敬されていたかもしれない。今となっては、もう誰が流刑人の子孫だか分からないだろう。

本作の主人公は、さびれた港町・魚深市(架空の地名:うおぶかし)の若手市役所職員・月末(つきすえ)一(錦戸亮)。新規転入者の受け入れ担当となるが、実は転入者6人全員が仮釈放された殺人犯で、10年の定住が義務付けられている。それは刑務所のコスト削減と地方の過疎対策を兼ねた、極秘の国家プロジェクトだった!

hitsuji2.JPG ビックリだが頷けるような計画だ。名前を変え新天地で出直せば、「刑務所帰り」という色眼鏡で見られず社会復帰しやすいだろう。近頃は全く縁のない土地へIターンする人も増えているし、移住すれば仕事や家を斡旋し補助金まで出してくれる自治体もある。将来は住民が高齢者ばかりとなり、市民生活が維持できない「限界集落」に陥る恐れのある自治体もあるほど、過疎は切実な社会問題となっているのだから。

さて転入者は、気弱だが酒乱の理髪師・福元宏喜(水澤紳吾)、色っぽい介護士・太田理江子(優香)、無口で几帳面な清掃員・栗本清美(市川実日子)、目つきが鋭い高齢のクリーニング店員・大野克美(田中泯)、チャラチャラした釣り船屋・杉山勝志(北村一輝)、フレンドリーな宅配ドライバー宮腰一郎(松田龍平)の6人。ただならぬ雰囲気を漂わせる個性派揃いだ。果たして、魚深プロジェクトは成功するのか…?

hitsuji4.jpg 田舎の人は新参者に興味津々で、根掘り葉掘り聞いてくるもの。転入の経緯や過去を把握しないと安心できない。しかし元受刑者だと正直に打ち明けたら、普通に付き合ってくれるだろうか。仕事や家まで失うかもしれない。月末は真面目でお人好しの公務員で、仕事だからこそ6人に誠意をもって接しているが、事件が起これば転入者を疑ってしまう。自分の父親(北見敏之)が転入者と恋仲になると反対するし、好きな女性・石田文(木村文乃)が転入者と親しくなると平静ではいられない。更に、平穏だった町でかつてないトラブルや大事件が発生し、月末の中で言いようのない不安と恐怖が広がっていく。

hitsuji3.JPG 印象的だったのは、太田理江子が「殺人犯は恋や結婚をしてはいけないのでしょうか?」と開き直るセリフ。前科者は身を引くのが当然という卑屈さがないから気持ちがいい。しかし彼女があまりに美しく色っぽく、なのに相手がショボいオヤジなので、本気の恋なのに介護士が患者をたぶらかしているようにも見える。優香の迫力ある演技と色気に拍手を送りたい。

架空の奇祭「のろろ祭り」には厳かな雰囲気があり、妖怪のような海の神様の伝説も効果的に使われている。大きな設定はそのままだが、登場人物は原作コミックとだいぶ異なり、ストーリーも映画オリジナル。シンプルで感情移入しやすくなっているので大成功だと思う。元受刑者と一般人の、建前と本音があぶり出される問題作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 20:54| 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする