2015年03月19日

『陽だまりハウスでマラソンを』お薦め映画

★★★★★ 2013年製作 独 (115 min)
【監督】キリアン・リートホーフ
【出演者】
ディーター・ハラーフォルデン
ターチャ・サイブト
ハイケ・マカッシュ(ラブ・アクチュアリー)
フレデリック・ラウ、カトリーン・ザース、カタリーナ・ローレンツ、オットー・メリース
【あらすじ】1956年、メルボルン・オリンピックのマラソン競技で金メダルを獲得した、西ドイツ出身のパウル・アヴァホフ。 彼はのんびり隠居生活を送っていたが、妻マーゴが病弱なため、夫婦で老人ホームへ入居することに。 しかし、人形制作や合唱といったレクリエーションは性に合わない。 一念発起した彼はベルリン・マラソンに出場すると宣言し、トレーニングを開始する…。 ヒューマンドラマ。 ≪人生に、引退はありません。≫
ドイツ映画賞最優秀主演男優賞

『陽だまりハウスでマラソンを』象のロケット
『陽だまりハウスでマラソンを』作品を観た感想TB

画像(C)2013 Neue Schonhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV All rights reserved.

backontrack1.jpg 【解説と感想】本作の主人公パウル・アヴァホフ(ディーター・ハラーフォルデン:1935年生)は、1956年のメルボルン・オリンピックでマラソンの金メダルを取った(西)ドイツの国民的英雄。しかし、それから半世紀以上の時が経ち、彼は妻マーゴ(ターチャ・サイブト)と二人で老人ホームへ入居することになった。

私は、老人には概ね、(1)年寄り扱いされたくない人(ワガママで周りをハラハラさせる)と、(2)年相応の対応ができる人(冷静で付き合いやすいが、本人は葛藤している)と、(3)早くから妙に老け込んでいる人(長老として尊重しないと機嫌を損ねる)、(4)病気や身体障害がある人(看護・介護や支援が必要)、(5)認知症の人(看護・介護や支援が必要)の、5種類のタイプがあると感じている。パウルは(1)で、マーゴは(2)+(4)である。

老人施設では、まるで幼稚園か小学生向けのようなレクリエーションが行われることもある。それを受け入れられるのは(2)の熟慮型大人老人か、(5)の子どもに帰りつつある老人だ。中には憮然としている人もいる。どうやって長い一日を退屈せず安全に過ごすか、施設側も入居者たちも葛藤の連続だろう。私もあなたも、いつかは老人になる。合唱や人形作りなど、楽しめそうな気もするが、少なくともパウロはダメだった!

backontrack3.jpg 終の棲家の現実を受け入れることが出来ないパウロは、突然グラウンドを走り始め「ベルリン・マラソン」に出場すると言い出す。「俺は走るしか能のない男」とはいえ、既にりっぱなメタボ体型で、グラウンドを一周するのさえ大変なのにだ。ところが、なんてったって金メダリスト! 徐々に調子を取り戻してくるし、マーゴもサポート役に復帰し、まるで若い頃に戻ったよう。他の入居者たちから見れば、活動的な仲良し夫婦がうらやましい限り。しかし、ホームのスタッフは事故でも起こったらと心配でならない。おまけに、パウルが認知症か鬱病なのではと言い出す。色眼鏡をかければ、病名はいくらでもつけられそうだ。

backontrack2.jpg もちろん本人の強い意思によるもので、責任問題が起こらないよう一筆書けばの話だが、ある程度の年齢になったら、あまりうるさい管理はやめて本人の自由にさせてやればいいじゃないかと思う。だって、「○○をすれば、もういつ死んだっていい。」が、高齢者の口癖なのだから。悔いのない余生を過ごして欲しい。もしパウロがマラソンの途中で死んだとしても、きっと夫婦ともども本望だろうと私は思った。ただお迎えを待っているだけの人生なんて、真っ平ゴメン。高齢者は生き甲斐が欲しいのだ。様々な理由で出来ないことが増えていくのは、どんなに歯がゆいことだろう。

backontrack4.jpg パウロの若い頃の勇姿、そして今のメタボ姿、どちらの走りにも胸が熱くなる。なぜマラソンは、こんなにも人を感動させるのか? それはマラソンが「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」の人生に似ているからだろう。私は、どんなマラソン大会でも、頑張った選手全員に拍手を送りたいし、街なかでは、山あり谷ありの人生を送ってきた高齢者全員に対し、尊敬の念を持って接したいと思う。

仕事を持つパウロの一人娘ビルギット(ハイケ・マカッシュ)の悩み、老人ホームスタッフの立場、入居者たちの思い、パウロとマーゴ夫婦の関係など、日本とあまり変わりない老人問題が提示されているが、ユーモアたっぷりで明るい。生きる勇気と希望を与えてくれる前向きヒューマンドラマ。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 11:37| Comment(1) | TrackBack(5) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございます。

親のことと自分の老後も重なって
見応えあるいい作品でした。

Myブログのコメント欄は、あったりなかったりで失礼していますが、お気軽に、お越しくだされば幸いです。
Posted by yutake☆イヴ at 2015年06月08日 23:59
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