2014年11月07日

『紙の月』お薦め映画

★★★★ 2014年製作 日 (126 min)
【監督】吉田大八(桐島、部活やめるってよ、パーマネント野ばら、クヒオ大佐)
【出演者】宮沢りえ(たそがれ清兵衛、華の愛、オリヲン座からの招待状、ぼくらの七日間戦争)
池松壮亮(バンクーバーの朝日、ダイブ!!、半分の月がのぼる空、大人ドロップ)
大島優子(映画 闇金ウシジマくん、櫻の園、スイートリトルライズ、さんかく)
小林聡美、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司
【あらすじ】1994年。 夫と二人暮らしの梅澤梨花は「わかば銀行」の契約社員で、職場では高い評価を受けていた。 ふとしたことから、梨花は裕福な顧客・平林の孫で、大学生の光太と逢瀬を重ねるようになる。 買い物途中、預かり金から1万円借りてしまったことをきっかけに、彼女は銀行の金を横領し始めた。 その額は、日増しにエスカレートしてゆくが…。 サスペンス。
原作:角田光代『紙の月』 主題歌:ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ『Femme Fatale』

『紙の月』象のロケット
『紙の月』作品を観た感想TB

画像(C)2014「紙の月」製作委員会

kami1.jpg 【解説と感想】時代は、バブル崩壊後の1994年。わかば銀行の契約社員・梅澤梨花(宮沢りえ)は、夫(田辺誠一)と二人暮らしで、子どもはいない。金持ちではないが、穏やかで不自由のない生活を送っている。夫からはあまり構ってもらえていないが、働き盛りのサラリーマンなんて、普通はそんなものだろう。そんな、そこそこ幸せな女が、顧客の金に手を付けてしまう。原因は年下の男・平林光太(池松壮亮)と不倫関係に陥ったためだ。

kami4.jpg 「お堅い」「真面目な」「道を踏み外さない」イメージの銀行員。中堅行員の隅(小林聡美)は、それを絵に描いたような社員。彼女のような銀行員は、日本経済の縁の下の力持ちだ。だがバブル崩壊後は仕事の出来るベテラン社員が、経費削減の下にないがしろにされるようになった。一方、「自分の金でない大金」を扱う銀行員のストレスを、若い窓口係・相川(大島優子)が吐露する。自分はカネの誘惑に負けてしまいそうだと。私はそこのところが気になって元銀行員の友人に確認してみたのだが、「どんな大金でも、自分とは関係ない、ただの紙切れとしか思えなかった。」と言っていた。彼女は清廉潔白な銀行員の鑑である。

kami3.jpg 1円でも金額が合わなければ大変なことになる銀行で、現金や書類の確認が厳しいのは当たり前。加えて、彼らは同僚のちょっとした変化も見逃さない。女性同士の勘繰り目線は鋭くて見応えがあるし、それぞれの生き方や考え方も、非常に興味深い。登場する女子行員の中で、あなたが一番賢いと思うのは誰だろうか? 

kami2.jpg 夫に従順な地味で堅実な主婦なんて、美しすぎる宮沢りえには似合わない。彼女が主婦と言う仮面を捨て美しく羽ばたいていく様子こそ、観客が観たい彼女なのだ。しかし、主婦の梨花も横領行員の梨花も、結局は無理をしている。少女時代の回想シーンで、金以外の力で物事を解決する方法や気持ちの持ち方を学ぶチャンスがあったのに、梨花は身につけられなかったことが分かる。このとき道徳教育が功を奏していたら、男のため金のためではなく、世のため人のために働く女性になっていたかもしれないのだが。

ところで、家にいるから奥さんと言う。女が外に出るとロクなことにならないと、昔は言われていた。妻が稼げば夫がダメになる、洋服代や外食費が増えるだけ、贅沢になって意外と貯金が出来ない、家事がおろそかになりケンカになる、夫婦どちらも浮気に走ってしまうとか、散々な言われようだった。今、女性にそんなことを言えばセクハラになってしまうが、多少頷けるところ無きにしも非ず、である。

kami5.jpg 梨花の夫と浮気相手を比べてみると、夫の方がイイ男なのは明らかで、この夫には何も非がないから気の毒である。年下男・光太は、大金を貢ぐほどの男ではない。のぼせ上がるほどの男ではない。だが、男女問わず浮気なんてそんなもの。浮気も犯罪も、一度始めたらもう後戻りできないような気がしてくるのかもしれない。梨花が帳尻合わせに苦心し、横領に没頭していく姿はスリリングだ。

大から小まで、横領事件は後を絶たない。金で変わっていく男女関係、顧客が騙される過程、銀行員の対応など、人間観察が非常に面白い、お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 19:34| Comment(0) | TrackBack(10) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

紙の月
Excerpt: 1994年。 夫と二人暮らしの梅澤梨花は「わかば銀行」の契約社員で、職場では高い評価を受けていた。 ふとしたことから、梨花は裕福な顧客・平林の孫で、大学生の光太と逢瀬を重ねるようになる。 買い物途中、..
Weblog: 象のロケット
Tracked: 2014-11-08 04:22

『紙の月』 (2014)
Excerpt: ダークな人生論をえぐる妖しき犯罪劇! 人間の内面の濃厚な飢えを多面的に活写した一級ドラマであった。 本作は、『桐島、部活やるってよ』(12)で映画ファンの熱い支持をうけた吉田大八監督作。今回手掛..
Weblog: 相木悟の映画評
Tracked: 2014-11-08 11:15

紙の月/納得のTIFF観客賞・主演女優賞
Excerpt: 2014年の東京国際映画祭で観客賞と最優秀女優賞の二冠を獲得した作品。原作は『八日目の蝉』の角田光代の長編小説。銀行勤めの平凡な主婦がとあるきっかけから起こした横領事件を描いている。主演は宮沢りえ。共..
Weblog: MOVIE BOYS
Tracked: 2014-11-15 18:52

はき違えた善意。『紙の月』
Excerpt: 銀行勤めの平凡な主婦が大金を横領する物語です。
Weblog: 水曜日のシネマ日記
Tracked: 2014-11-16 12:31

紙の月
Excerpt: ちょっとした心の隙間と誘惑に揺れただけで、快楽を続けたいと思い横領を続けてしまう。破綻するのはわかっていてもやめられない苦悩を丁寧に描いていた。逃げる主人公を思わず応援したくなる魔力をこの映画は持って..
Weblog: とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver
Tracked: 2014-11-18 23:23

映画「紙の月」ここではない何処かへ、ダイブする
Excerpt: 映画「紙の月」★★★★★ 宮沢りえ,池松壮亮、大島優子、田辺誠一、 近藤芳正、石橋蓮司、小林聡美出演 吉田大八 監督、 126分 2014年11月15日公開 2014,日本,松竹 (原題/原作:紙の..
Weblog: soramove
Tracked: 2014-12-07 20:23

[映画][☆☆☆☆★]「紙の月」感想
Excerpt:  角田光代原作のサスペンス小説を、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督、「オリヲン座からの招待状」の宮沢りえ主演で映画化。 いきなりで何だが、小生は宮沢りえが嫌いだ。単純に見た目が好きじゃないと..
Weblog: 流浪の狂人ブログ〜旅路より〜
Tracked: 2014-12-09 19:30

第27回東京国際映画祭「紙の月」
Excerpt: コンペティション作品。観客の投票によって決定する観客賞を受賞。主演の宮沢りえは最優秀女優賞を受賞。舞台挨拶の宮沢りえは綺麗だった! コンペ作品の中では、最も商業ベースに乗った作品だと思う。かといって、..
Weblog: ここなつ映画レビュー
Tracked: 2014-12-19 12:51

紙の月
Excerpt: 角田光代著の同名小説を吉田大八監督が宮沢りえ主演で描いたサスペンスです。 東京国際映画祭の時から気になっていたのですけど、2月1日のヨコハマ映画祭でようやく観てきました。 理解したくないけれど解るかも..
Weblog: とりあえず、コメントです
Tracked: 2015-02-21 12:36

紙の月
Excerpt:  「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督の新作とあり楽しみにしていました。工夫した演出や俳優陣のがんばりには感心しましたが、自分としての傑作とまでいえなかったのは、生活観があまりにも違う世界で、主人..
Weblog: 映画好きパパの鑑賞日記
Tracked: 2015-05-31 01:24