2014年09月02日

『リスボンに誘われて』お薦め映画

★★★★★ 2012年製作 独・スイス・ポルトガル (111 min)
【監督】ビレ・アウグスト(レ・ミゼラブル、マンデラの名もなき看守、愛の風景、ペレ)
【出演者】ジェレミー・アイアンズ(ダンジョン&ドラゴン、仮面の男、永遠のマリア・カラス、ダイ・ハード3)
メラニー・ロラン(複製された男、黄色い星の子供たち、イングロリアス・バスターズ、オーケストラ!)
ジャック・ヒューストン(ファクトリー・ガール)
マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ
【あらすじ】スイスの首都ベルンの男性高校教師ライムント・グレゴリウスは、吊り橋から飛び降りようとしていた女性を引き留める。 彼女が残した1冊の本には、ポルトガルの首都リスボン行きの切符が挟まれていた。 駅へ向かった彼は、発車しかけた夜行列車に飛び乗ってしまう。 車中で読んだ本に心を奪われた彼は、革命闘士だった著者アマデウ・デ・プラドの家を訪ねることに…。 ヒューマンドラマ。 ≪1行目で心が動き、2ページ目で列車に飛び乗り、3章目で人生が変わった。≫
原作:パスカル・メルシエ『リスボンへの夜行列車』

『リスボンに誘われて』象のロケット
『リスボンに誘われて』作品を観た感想TB

画像(C)2012 Studio Hamburg FilmProduktion GmbH / C-Films AG / C-Films Deutschland GmbH / Cinemate SA. All rights reserved.

Lisbon1.jpg 【解説と感想】退屈な毎日を過ごしている人は波乱万丈な人生に憧れ、浮き沈みの多い人生を送っている人は、平凡な暮らしに憧れる。人生は簡単には変えられないが、本や演劇、映画、新聞、テレビ、インターネットなどでは、思いがけない世界や人生に触れることができる。もちろん、それはあくまでも疑似体験。世の中を何となく「知ったつもり」でいたけれど、社会に出てみたら、疑似体験と現実の差に愕然としたという方は多いはずだ。 しかし、本や映画が、人生を変えるヒントを与えてくれることは確かにある。

Lisbon2.jpg 主人公の初老の男ライムント(ジェレミー・アイアンズ)は、スイス・ベルンの高校教師。自殺しようとしていた若い女を追いかけ、ポルトガル・リスボン行きの夜行列車に飛び乗ってしまう。彼が恋に落ちたのは女ではなく、何と女が残していった一冊の本! 彼は、自分の考えが全て書かれているような本『言葉の金細工師』に出会ってしまった。そしてその著者である医師アマデウ・デ・プラド(ジャック・ヒューストン)の思想や人生を理解するため、彼や彼を知る人々に会いに行くというストーリーだ。

本作の原作は2004年に出版された『リスボンへの夜行列車』で、著者パスカル・メルシエは、1944年スイス生まれの哲学者。そのせいか、断片的に紹介されるアマデウの文章は、底なし沼のように深い。興味津々で分厚い原作も読んだのだが、原作中のアマデウの文章は膨大で、更に難しかった。

Lisbon3.jpg 映画は省くところは省き脚色を加え、わかりやすく美しいドラマになっている。映像、音楽、セリフ、全てが印象的だ。老人たち(トム・コートネイ、ブルーノ・ガンツ、シャーロット・ランプリング、レナ・オリン、クリストファー・リー)は、まるでライムントを待っていたかのように沈黙を破り、アマデウのこと、革命前後のことを語り始める。

Lisbon4.jpg スイスとポルトガルでは気候が違う。太陽がまぶしく、ライムントが、まるで初めて外の光を浴びた人間のように見えてくる。彼が訪ねるのは、病院、薬局、介護施設、墓地など、ロマンチックとは程遠い所ばかりなのに、どれもが絵になり、旅情がかきたてられる。観光スポットはさりげなく入っている方がいい。ライムントとリスボンの女医マリアナ(マルティナ・ゲデック)との、微妙な関係の行方も気になる。

革命闘士たちの青春、アマデウとジョルジュ(アウグスト・ディール)の友情、エステファニア(メラニー・ロラン)との激しい恋の真相を知れば知るほど圧倒され、ライムントは自分自身を見つめ直す。本に埋もれるような毎日を送っていた彼は、本の外に人生があることに気づくのだ。

Lisbon5.jpg 椅子に座って読むことだけが読書ではない。そして本の内容を全て理解できたとしても、読書はそこで終わりではない。1冊の本が、転機をもたらすこともある。年配の方は若き日の人生の岐路を思い起こし、若い方は旅に出たくなるかもしれない。結果、人生が変わるかどうかは、あなた次第。究極の読書を成し遂げた、夢のような大人の冒険旅行物語。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
posted by 象のロケット at 19:50| Comment(0) | TrackBack(4) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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リスボンに誘われて
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