2013年04月01日

『セデック・バレ』お薦め映画

★★★★★ 2011年製作 台湾
(第一部:太陽旗 144 min)
(第二部:虹の橋 132 min)
【監督】ウェイ・ダーション
【出演者】リン・チンタイ、ダーチン、安藤政信、マー・ジーシアン、ビビアン・スー、木村祐一
【あらすじ/第一部:太陽旗】台湾中部・山岳地帯。 台湾先住民であるセデック族マヘボ集落の青年モーナ・ルダオは、頭目の息子として村の内外に勇名をとどろかせていた。 1895年、日清戦争で中国・清が敗れると、モーナたちが住む山奥にまで日本軍がやって来て、先住民(蕃人:ばんじん)は、過酷な労働と服従を強いられるようになった。 …それから35年後の1930年、部族の若者が日本人警察官と衝突してしまう…。 

【あらすじ/第二部:虹の橋】1930年、台湾・霧社地区。 セデック決起部隊が警察官駐在所や霧社公学校を襲撃し、多数の日本人が殺されてしまった。 日本軍は直ちに報復を開始するが、山岳地帯という地の利を最大限に生かしたセデックの前に苦戦を強いられる。 襲撃で妻子を殺された小島巡査は、決起部隊のリーダー、モーナ・ルダオと反目していて襲撃に参加しなかった部落のタイモ・ワリスに、日本軍に協力するよう働きかけるのだが…。 「霧社事件(むしゃじけん)」に基づく歴史ドラマ。

アカデミー賞外国語映画賞台湾代表、台湾金馬奨グランプリ・助演男優賞・オリジナル音楽賞・音響効果賞・観客賞・最優秀台湾映画人賞、他受賞

『セデック・バレ 第一部:太陽旗』象のロケット
『セデック・バレ 第一部:太陽旗』作品を観た感想TB

『セデック・バレ 第二部:虹の橋』象のロケット
『セデック・バレ 第二部:虹の橋』作品を観た感想TB

画像(C)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production

seediqbale1.jpg 【解説と感想】 本作は1930年(昭和5年)に日本統治下の台湾で起こった、先住民セデック族の抗日暴動「霧社事件(むしゃじけん)」を題材にした、第一部144分、第二部132分の超大作である。私はこの事件を学校で習った記憶がないし、台湾の先住民のことも知らなかったが、合計276分の授業(上映時間)で事件の概要が掴めた気がする。非常に中立的な目で描かれており、「日本人が台湾でひどいことをした」「台湾の先住民に大勢の日本人が殺された」ことを抜きにして語れないのは当然だが、メインテーマは「台湾先住民の誇り」である。

先住民問題は世界各地に存在する。先住民で良く知られているのが、アメリカのいわゆるインディアン、北極圏のエスキモー、オーストラリアのアボリジニ、ニュージーランドのマオリ、アフリカのマサイだ。日本でも古代に新しい支配者層から追い払われた先住民がいて、北へ行ったのが北海道のアイヌ民族や蝦夷(えみし)、南へ行ったのが沖縄のいわゆる琉球民族や熊襲(くまそ)、山岳地帯へ行ったのが謎の民サンカではないかという説があるが、詳細は不明である。

seediqbale3.jpg 台湾にはもともとポリネシア系と推測される人々が住んでいて、多くの部族に分かれていた。ところが、16世紀半ばにポルトガルにその存在を知られてからは、オランダ、鄭氏(漢民族)、清朝(満州族)、そして日本と、常に外国の支配下に置かれることになった。長い間に混血も進んだだろうが、ずっと昔のままの文化を守って暮らしていた人々もいて、彼らは“蕃人(ばんじん:野蛮人)”と呼ばれて差別されていたのだ。台湾の国立故宮博物館の近くに原住民博物館(中国語では先住民を原住民と呼ぶ)があるそうなので、観光旅行の際にでも立ち寄られてはいかがだろうか。

seediqbale5.jpg 山岳地帯に住む先住民の狩猟民族セデック族は、男女ともに顔に入れ墨をするのが大人の証であり、戦った相手の首を狩ることが男子の通過儀礼であった。それを見た外国人は驚いて、ただでさえ蔑んでいる被支配者層を野蛮人と呼んだのだろう。本作中にも日本人が「俺たちがお前たちを近代化してやったのだ」と言うシーンがあるが、文明開化が余計なお世話の場合もある。彼らはそれまで何も不自由は感じていなかったし、日本的な生活を強要されたせいで、独自の風習が守れなくなってしまったのだ。支配した国を自分たちの様式に染めるのは古代からの習いであるが、中途半端な近代化はかえって混乱をもたらしてしまう。

seediqbale2.jpg セデック蜂起軍のリーダー、モーナ・ルダオ役を始め、先住民の血を引く多くの人々が出演している。モーナの青年期を演じるハンサムなダーチンは、幼い頃から狩りなどの訓練を受けて育ったとのことで、武道家とは一味違う野性味を放っている。壮年期を演じるリン・チンタイは、部族の長で牧師でもあるという。その鋭い眼光からは尋常ではないカリスマ性が感じられ、目が離せない。

seediqbale4.jpg 最後まで戦うことに乗り気でなかったモーナは、まるで大石内蔵助で、死を前提とした突入は、赤穂浪士の討ち入りのように見えた。第一部のサブタイトル「太陽旗」は日章旗・日の丸のことで、第二部のサブタイトル「虹の橋」は、先祖に恥じぬ生き方をした者だけが渡れる三途の川のようなものの意味である。「セデック・バレ」とは“真の人”という意味のセデック語(現在の台湾の国語は中国語)。命より誇りを重んじた台湾先住民の戦いが、今や多数の民族を内包した台湾全体の誇りとなっているように感じられる歴史アクション大作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
posted by 象のロケット at 20:11| Comment(0) | TrackBack(3) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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セデック・バレ 第一部:太陽旗
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『セデック・バレ 太陽旗』:第7回大阪アジアン映画祭
Excerpt: ビビアン・スーがどこに出てたか分かんなかった!
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