2011年11月27日

『ピアノマニア』お薦め映画

★★★★★ 2009年製作 オーストリア・独 (97 min)
【監督】リリアン・フランク、ロベルト・シビス
【出演者】シュテファン・クニュップファー、ピエール=ロラン・エマール、ラン・ラン
【あらすじ】ドイツ人調律師シュテファン・クニュップファーは、老舗ピアノメーカー・スタインウェイ社の技術主任。 オーストリア・ウィーンを代表するコンサートホール“コンチェルトハウス”で行われるピアノ演奏の調律の責任を担う他、世界各国の音楽祭に参加するクライアントに同行することもある。 ピエール=ロラン・エマールが演奏するJ.S.バッハ『フーガの技法』のCD録音時の調律を任された彼の1年間を追う音楽ドキュメンタリー。

→『ピアノマニア』象のロケット
『ピアノマニア』作品を観た感想TB

画像(C)OVAL Filmemacher / WILDart FILM All rights reserved.

pianomania1.jpg【解説と感想】ピアノの調律師とはピアノのメンテナンスを行う技術者である。ピアノのあるご家庭なら、年に一度くらいは来てもらうだろう。ピアノは乾燥や湿気に弱く、ちょっとしたことで音が狂う。調律に機械を使用する場合もあるが、耳が良いに越したことはない職業だ。

本作はドイツ人調律師シュテファン・クニュップファー(1967〜)が、フランス人ピアニストのピエール=ロラン・エマール(1957〜)が出すCD「J.S.バッハ:フーガの技法」録音時のピアノ調律を担当した1年間を追ったドキュメンタリーである。

イメージ通りの完璧な音の響きを求めるピアニストの注文の意味を瞬時に理解し、卓越した技術と工夫、そして感性で応える。バッハはピアノがなかった時代の作曲家なので、「チェンバロ(バッハの時代のピアノのような楽器)風の音」を出したいと懇願されれば、何とかその音に近づけようと試行錯誤する。
スタインウェイ245番のピアノに、ピアニストが満足できていないようだと見ると、予備に用意した780番と弾き比べた上で、どちらかを選んでもらう。

顧客の要望には最大限の努力をして応えるが、ホールの大きさに応じてピアノの向きを変えたり、オーケストラと共演する場合などは、ピアニストに自分の意見を提案したりする。全て顧客のためであり、最良の音を響かせるためだ。

pianomania2.jpg 根気強く注文に応じるシュテファンは、ユーモアの才能があり笑顔が印象的。エマールは録音で気が張りつめているせいか、神経質で少々気難しい。ピアニストを志した時期もあるらしいが、自分は裏方で良かったと語るシュテファンの言葉は、調律師としてのキャリアを積んだ今の気持ちとしては本音だろう。本番を目前にしたピアニストが抱えるストレスを理解し、それを少しでも軽減しようとする思いやりが感じられる。

お気に入りの調律師を連れ歩くピアニストもいるという。難しい注文をする客ほど、ひとたび気に入られれば贔屓にしてくれる。シュテファンが、ラン・ラン、アルフレート・ブレンデル、ジュリアス・ドレイクなど、多くのピアニストから絶大なる信頼を寄せられているのは、技術はもちろん誠実な営業努力があってこそ。当たり前のようでなかなか出来ない働く人の理想の姿、どんな仕事にも通じる社会人としての基本がここにある。

世界中の調律師の中でも、きっと彼は最高クラスだろう。ピアニストと同じく、厳然たるピアノマニアで音のアーティスト。その仕事ぶりは見事だった。著名ピアニストの演奏も楽しめるので音楽好きな方はもちろん、これから社会へ出る学生の方々にも是非見て頂きたいお薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




posted by 象のロケット at 21:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ピアノマニア/Pianomania
Excerpt: 超一流のピアニストたちから絶大な信頼を受ける調律師の姿を追ったドキュメンタリーフィルム。フランスのピエール=ロラン・エマールがその録音をする1年も前から準備を開始するエピソードを軸に、多くの演奏家の..
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Tracked: 2012-01-25 01:00