2011年11月26日

『ルルドの泉で』お薦め映画

★★★★ 2009年製作 (99 min)

【監督】ジェシカ・ハウスナー
【出演者】シルヴィー・テステュー、レア・セドゥー、エリナ・レーヴェンソン
【あらすじ】不治の病により車椅子生活を送っている女性クリスティーヌは、「ルルドの泉」への巡礼ツアーに参加する。 そこには病や孤独を抱えた人々が奇蹟を求めて集まり、真剣に祈りを捧げていた。 「普通の生活をしたい。」と訴える彼女に、「歩ければ幸せなのか?」と問う神父。 旅も終わりに近づいた頃、クリスティーヌの身体に変化が起こり始めるのだが…。 ある奇蹟のドラマ。

→『ルルドの泉で』象のロケット
→『ルルドの泉で』作品を観た感想TB

画像(C)2009(c)coop99 filmproduktion, Essential Filmproduktion, Parisienne de Production, Thermidor All rights reserved.

lourdes1.jpg【解説と感想】近年パワースポットブームである。神社仏閣、山や湖や滝、公園へ。なぜ、人はパワースポットへ行くのか? 恋愛運や金運アップなどの現世利益が目的の人もいれば、純粋に場のパワーや静けさを求める人もいるだろう。

難病のため車椅子生活を送っている本作の主人公クリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は、世界的パワースポットであるカトリックの聖地「ルルドの泉」へのツアーに参加する。そこには大聖堂があり、年間600万人が訪れる一大巡礼地・観光地となっている。 

彼女は神父に「なぜよりによって自分が車椅子生活を送らなければならないのか。普通の生活がしたい。」と涙ながらに訴えるが、決して熱心なカトリック信者ではないようだ。ところが、なぜか彼女に奇蹟が起こってしまう! そのシーンは決して神がかり的ではないし、彼女の喜びや不安もリアルに感じられる。

lourdes2.jpg クリスティーヌの介護担当の若い女性マリア(レア・セドゥ)は、最初は奉仕活動に喜びを感じていたが、慣れてくるとスタッフ同士の男女交際に気を取られてしまう。熱心なボランティア・リーダーの中年女性セシル(エリナ・レーヴェンソン)や、クリスティーヌが恋をする男性クノ(ブリュノ・トデスキーニ)が奉仕活動を始めた理由の詳細は語られないが、興味をそそられる。

神父や修道女の中には、奇蹟に懐疑的な者や、奇蹟を求めることに否定的な者もいる。ルルドの泉はローマ教会にも認められている聖地だが、聖職者の信仰と教義、奇蹟への認識にも幅があるようだ。

lourdes3.jpg 巡礼者たちは重い病や孤独など、解決策が見つからないような悩みを抱えており、ルルドの泉に最後の希望を託している。だが、彼女に奇蹟が起こったことを知ると素直に喜ぶことができない。「どうすれば奇蹟が起こるのか?」「なぜ自分ではなく彼女なのか?」「その奇蹟はずっと続くのか?」

舞台はルルドだが宗教色は薄く、女性好みのロマンティックな題材なのに、意地悪なくらい冷静な目で、奇蹟をめぐる人々の心の葛藤を描いている。一見地味だが、かえってこのくらいの方が、ヒューマンドラマとしては面白い。

奇蹟を求めるのではなく、今の自分の状況を受け入れ、魂の癒しを求めるべきだというようなことを神父が発言する。奇蹟が起こらない人への慰めの常套句のようにも聞こえるが、深い示唆に富む言葉でもある。

本作は、交渉の末ようやく現地での撮影許可が下り、オールロケを行ったという。ドキュメンタリーのように、洞窟での巡礼の様子をうかがい知ることができる。

果たしてクリスティーヌに起こった奇蹟は本物なのか? 奇蹟が起これば幸せになれるのか? 聖地への旅行気分が味わえて、奇蹟を求める意味について考えさせられるお薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
 


 
posted by 象のロケット at 16:06| Comment(0) | TrackBack(6) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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