【出演者】古田新太、堤真一、高岡早紀、勝地涼、木村了、梶原善、高田聖子
【あらすじ】めっぽう腕は立つが、過去の記憶がない謎の男・闇太郎。 元旅役者の銀之助に誘われ蜉蝣峠を下り、たどり着いた宿場町は、極道者たちの勢力争いで荒廃しきっていた。 その町で闇太郎は自分のことを知る女・お泪(るい)たちと出会う。 闇太郎は25年前の殺人事件の生き証人だと言うのだが…。 アウトローたちの時代活劇。 「劇団☆新感線」2009年公演の舞台収録。
→『ゲキ×シネ 蜉蝣峠』象のロケット
→『ゲキ×シネ 蜉蝣峠』作品を観た感想TB
画像(C)2010 ヴィレッヂ 劇団☆新感線 All rights reserved.

座付作家・中島かずきが書き下ろす作品を、いのうえひでのりが演出し、芸達者な座員と華やかなゲストが、毎回歌って踊って演じ、笑わせてくれる。
高いお代の分は必ず満足させてくれる、超優良劇団。 大阪芸術大学のメンバーで旗揚げされたこの劇団は、学生ベンチャーから大化けした大企業のよう。 もはや小劇場とは呼べない。 劇団株でもあればこんなにメジャーになる前に買っておきたかったところである。
看板俳優は個性派怪優・古田新太。
顔の面積が大きいことは主役として非情に重要だ。どんなに二枚目でも、顔にインパクトがないと、大きな舞台では映えないのである。アップと背景で顔の大きさが変わるテレビや映画とは違う。舞台ではかなり大げさなメイクがちょうどよいのだ。
彼は顔が大きくて、ボソッとしゃべるだけで十分面白い。 「劇団☆新感線」の舞台では主役オーラがにじみ出ていて、ド派手に登場する時は、拍手で「よっ、○○屋!」と声をかけたくなるほどである(実際にはしないけど)。 最初に彼をテレビで観た時は、あまりに地味だったので、その落差に驚いた。 その時は舞台とはメイクが違ったから(当り前か)。

舞台出身の俳優がテレビに出ると、最初は身振り手振り、話し方が大げさすぎて、ちょっと違和感がある。 求められる物が多少異なるということだろう。
舞台劇でもしっとり静かなものもあるが、よほどの華と力量がないと眠気を誘う。 私個人的には、役者の身体能力を目いっぱい使った面白い舞台をしっかり楽しみたい方である。
前置きが長くなった。 つまり、誰でもご承知のことだが、舞台と映画とテレビはちょっとずつ違う。値段も違う。満足度は人それぞれである。
「ゲキ×シネ 蜉蝣峠」は舞台をそのまま撮影し映像化したもの。しかし、昔テレビでやっていたのっぺらとした劇場中継などとは比較にならないくらい進化し、臨場感あふれるものとなっている。

良いことである。 劇場でどんなによい席を確保しても、隅々や役者の表情まで全部捉えることはできない。 それが、映画館だとカメラが要所要所でアップにしてくれるのでわかりやすい。 急な残業で高いチケットを無駄にする心配もない。 オペラグラスもいらない。 手軽、気軽、手頃。 ただし、あくまでも舞台は舞台で観るのが本筋だということを忘れずに観て欲しい。
今回の脚本は宮藤官九郎。 映画より舞台のお方だろうから、今回は非常に期待した。 しかし、率直に言わせてもらうと「劇団☆新感線」の舞台として観ると、中島&いのうえコンビの前作「五右衛門ロック」の方がずっと面白かった。
「蜉蝣峠」はキャッチコピーにあるように、「笑いも毒も盛り込んだアウトロー時代劇」だ。ダークな場面も多く、闇太郎の名のごとく、深い闇が広がるストーリー。 記憶をなくした闇太郎が宿場町で大立ち回りを繰り広げながら、記憶を取り戻していく物語。
前半は笑いに弾けた舞台。 ナニを丸出し(もちろん本物ではない)にした闇太郎こと古田新太が、女好きなのに、ナニを切られてしまった銀之助(勝地涼)と旅に出る。 その前に、コケーコッコと被り物で出てくるのが何とあのゲストとは、後にその話が出るまで分からなかった!
結婚式を100回もやるお寸(高田聖子)と立派(橋本じゅん)の夫婦など、芸達者で貫録たっぷり。2人とも顔が大きくてインパクト十分! 銀之助(勝地涼)とサルキジ(木村了)とも若手ながら謙虚に諸先輩方の中で頑張っている。イケメンの彼ら、ちょっと小顔すぎるが…。
そして、お寸の弟、天晴(あっぱれ)こと堤真一の登場。 完全なる二枚目役である。 流し眼もバッチリ決まり、華のある役者であることを見せつけてくれる。 以外にも顔が大きかったか?

笑いのツボが、舞台だと思いっきり笑えるところが、映像では少々違和感あり。 宮藤官九郎のストーリーでたまに感じる違和感と通じるものだ。 しかし、今回は舞台のスクリーン上映ということであるから、この点は良いとも悪いとも言えない。舞台でなら、なんら違和感はないはず(多分)。≪ゲキ×シネ≫を舞台と思うか映画と思うかで評価は違ってくるだろう。
おトク感いっぱいで劇場を後に出来る。 そして次は是非「劇団☆新感線」を生で観たいと思うだろう。 そう思わせれば成功と言える。 最近舞台を観たくても観られない私としては、こういうスクリーン版が見られるだけで単純にうれしい。 たまには舞台のノリで映画館へ行くのもいかがでしょうか。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
ミーハーな記事にトラックバック有難うございました。
私もトラックバックを貼らせて頂きました。
>「やっぱり生が一番!」(ビールではない)という舞台好きは散財する。
同感です。
私もなるべく生の舞台を観たいのですが、チケット代を考えると、それにも限界がある。
なので、舞台のスクリーン化は熱望です。
新感線さんの舞台以外にも色々な舞台がスクリーン化してくれないかなぁと思っています。
しかし、やっぱり新感線さんの舞台は、生で観たい!!
舞台音楽(歌)や演出が素晴らしいので、その迫力を生で感じたい!!
・・・と思い、チケットGETの為に毎回気合をいれて挑んでいます(笑)
あの臨場感は生だけのもの。
チケット取り大変ですが、大いに生を楽しんでください。
私も、作品の出来はともかくとして、ゲキ×シネという手法には賛成です。地方在住者にとってはチケット代だけでは済まないものですから…
しかし、20年前に関西で学生時代を送った私にとっては、劇団新感線をはじめとする一連の関西劇団ムーブメントというべきものは、懐かしくもあります。
そういえば、近鉄小劇場ももう無いんですね。
地方の方は、何倍もの時間とお金をかけないと商業文化を享受できません。
反面、「モトを取る」意味で作品選びにもシビアになるし、急激に目が肥えてくるのではと思います。