2017年11月19日

『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米 (225(休憩1回) min)
【出演者】
ルネ・パーペ(ワーグナー ≪トリスタンとイゾルデ≫ 新演出 METライブビューイング  ヴェルディ ≪マクベス≫ METライブビューイング)
マルクス・ヴェルバ
キャスリン・ルイック
ゴルダ・シュルツ、チャールズ・カストロノヴォ、クリスチャン・ヴァン・ホーン
【あらすじ】 王子タミーノは、夜の女王から悪魔ザラストロにさらわれた娘パミーナを助け出すよう頼まれる。 パミーナの肖像画を見て一目惚れしたタミーノは、女王から「魔法の笛」をもらい、鳥刺しのパパゲーノと共に救出に向かう。 しかし、実はザラストロは「光の世界」を支配する徳の高い人物だった…。 METライブビューイング2017-2018シーズン第2作。 MET2017年10月14日公演のスクリーン上映。 ドイツ語(日本語字幕付き)。
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ジュリー・テイモア

『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』象のロケット
『モーツァルト ≪魔笛≫ METライブビューイング』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)Richard Termine/Marty Sohl/Ken Howard/Cory Weaver/Metropolitan Opera All rights reserved.

mateki1.jpg 【解説と感想】本作「魔笛」はモーツァルト最後のオペラ。謎の秘密結社「フリーメイソン」の儀式や思想が反映されているとか、「魔笛」を書いたからモーツァルトは殺されたのだとか、信じられないような噂まである。「フリーメイソン」がどんな団体なのか、「ボーイスカウト」や「ロータリークラブ」とどこが違うのか私には分からないが、確かにストーリーは謎めいている。しかし、先入観を捨て去れば、華やかで楽しい大人のメルヘンである。

王子タミーノは、夜の女王から悪魔ザラストロにさらわれた娘パミーナを助け出すよう頼まれる。パミーナの肖像画を見せられて一目惚れしたタミーノは、女王から「魔法の笛」をもらい、ノー天気な鳥刺しの男パパゲーノをお供に救出に向かう。しかし、実はザラストロは「光の世界」を支配する有徳者だった。パミーナと結ばれるために、タミーノは数々の試練を受けるのである。この試練が、「自由・平等・寛容」を標榜する団体「フリーメイソン」の奥義と関係があるのかもしれない。

mateki3.jpg 一応、主役は王子タミーノ(チャールズ・カストロノヴォ:テノール)、ヒロインは王女パミーナ(ゴルダ・シュルツ:ソプラノ)で、若いカップルの恋物語&救出劇である。しかし、夜の女王(キャスリン・ルイック:コロラトゥーラ・ソプラノ)の存在感はあまりにも大きい。夜の女王のアリア『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』は、娘パミーナに「あんたが極悪人ザラストロ(ルネ・パーペ:バス)を殺さないなら、もう親子の縁を切るわよ!」 と命令するヒステリックな歌詞なのだが、脳天突き抜けるほど高音(へ音)の超絶技巧が素晴らしすぎて「はいっ、何でも言うこと聞きます!」と、ひれ伏したくなる。1幕と2幕と合わせても十数分間しか登場しないのに、観客の心に魔法をかけて全て奪い去ってしまう。巨大な羽が広がる衣装は、まるで紅白歌合戦の小林幸子のようで貫禄十分。漆黒の女王様だ。
mateki4.jpg
一方、鳥刺し(鳥捕獲業者)のパパゲーノ(マルクス・ヴェルバ:バリトン)は道化役。「俺は鳥刺し」と歌うアリアはユーモラスで、場の雰囲気が一気に和む。浅知恵のパパゲーノと彼の花嫁候補パパゲーナとのやり取りは可笑しくて、笑いどころだ。彼の存在感も大きくて、もう一人の主役と言えるだろう。


一応、舞台は古代エジプトらしいが無国籍風。遠い国から来たタミーノの衣装はモンゴルの騎馬民族風で、彼が大蛇に襲われる場面は中国の京劇のよう。
mateki2.JPG ザラストロはイシスとオシリス(エジプトの神)に仕える神官。夜の女王はクレオパトラのイメージだろうか。パパゲーノの緑の衣装は中世ヨーロッパのメルヘン風だし、ウィーン少年合唱団のような少年たちはキリスト教の天使に見える。ただしメークが奇抜で、誰の顔もよく分からな〜い! 演出は「ライオンキング」を手掛けたジュリー・テイモア。黒子が操る動物は可愛くて面白い。舞台装置も衣裳も相当お金がかかっている。出演するのは名だたるスター歌手だし、「収益はとても製作費に満ち足りませんから寄付をお願いします。」と毎回言っているのも頷ける。指揮者はMETに君臨する音楽監督ジェイムズ・レヴァイン。オーケストラにも序曲から聴き惚れてしまう。

親離れの時期が来た世間知らずの王女と、旅に出て真の強さと徳を身に着ける王子の冒険ラブ・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年11月15日

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』お薦め映画

★★★★★ 2016年製作 米 (103 min)
【監督】トラヴィス・ナイト
【出演者】
(声)アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、レイフ・ファインズ、ルーニー・マーラ、他
(日本語版吹替)ピエール瀧、川栄李奈、小林幸子、他
【あらすじ】三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操る少年クボ。 闇の魔力を持つ祖父・月の帝に狙われた彼は、片目を奪われ、父親を亡くし、更には母までも亡くしてしまう。 クボは月の帝と戦うことを決意し、厳しいが面倒見のよいサル、ノー天気なクワガタの姿をした元ニンジャ侍と共に旅に出る。 戦いに勝つためには、3種の武器が必要だった…。 アニメーション。

アカデミー賞ノミネート(長編アニメーション賞・視覚効果賞)、アニー賞キャラクターアニメーション賞・美術賞・編集賞、他多数受賞

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』象のロケット
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2016 TWO STRINGS, LLC. All rights reserved.


kubo1.jpg 【解説と感想】先月、有楽町の外国人観光客向け劇場「オルタナティブシアター」のこけら落とし公演「アラタ」を見てきた。一応ストーリーはあるがセリフはほぼなく、チャンバラ世界の雰囲気を楽しんでもらおうというエンタテインメントだった。とにかく今、ニンジャとサムライは外国人に大人気。東京オリンピックへ向けて今後の需要も高まるばかりだが、全国各地のテーマパークではニンジャが大変不足しているらしい。また観光客向けの土産物店には、折り紙、扇子、手ぬぐい、箸等が並んでいて、和の小物の人気のほどがうかがえる。「さて、本作はアメリカ人監督が作った、日本を舞台にした時代劇ファンタジー・アニメ。監督はかなりの親日家で時代劇がお好きのようだ。

kubo2.jpg 主人公は片目のない少年クボ。彼は三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという不思議な力を持っている。クボは苗字ではなく、名前(ファーストネーム)。母は息子を「クボ」と呼ぶ(ケンとかジョーで良かったのに)。かなりモヤモヤするけれど、許してあげよう。クボは心を病む母と2人暮らし。亡き父ハンゾウはサムライだった。ハンゾウを殺したのは闇の魔力を持つ母方の祖父“月の帝”で、2人の恐ろしく強い伯母を使ってクボを闇の世界に引き入れようとしている。

kubo3.jpg クボは折り紙で出来た武士を道案内に、厳しいが面倒見のよいサルと、ノー天気なクワガタの姿をした元ニンジャ侍と共に、月の帝を倒すための武器、「折れずの刀」「負けずの鎧(よろい)」「敗れずの兜(かぶと)」を探す冒険の旅に出る。途中で伯母たちに何度も襲撃される。化け物たちとの戦いもあり、お化け屋敷に迷い込んだような気にもなるが、サルとクワガタのやり取りが笑わせてくれる。躾や教訓がちょっぴり入っているのも、昔ばなし風だ。

kubo4.jpg アメリカ人監督が作ったとは思えないほど、日本的な物語。ストーリーも絵も音楽も、日本文化を研究した上で製作されているのがわかる。外国映画によく登場する、アジアを一緒くたにしたヘンな日本ではない。クボが暮らす村の描写は江戸時代風だし、登場人物の髪型や着物は身分に応じたもので、布の質感まで出ている。お祭りや灯籠流し、墓参りには風情がある。三味線の音色は格調高く(日本語吹替版の主題歌は、世界的三味線奏者の吉田兄弟が担当)、折り紙が自在に姿を変える様は見事で夢があり、浮世絵を感じさせる場面もある。わびさびを感じさせる一方、戦いの見せ場は大掛かりでワクワクドキドキさせてくれる。本作には外国人が大好きな「日本」が、いっぱい詰まっているのである。

キャラクターの顔立ちは西洋アニメに出てくる東洋人という感じでつり目だが、日本アニメのおメメぱっちりキャラクターよりずっと日本人っぽく、表情も豊かだ。1コマずつパーツをはめかえる、大変手間のかかる「リプレイスメント・アニメーション」技法で作られているのだという。字幕版も一興だったが、やはり吹替版の方が落ち着く気がした。

天涯孤独のクボを、いつも誰かが見守っている。ラストは意外な展開で、ジーンとさせられた。試練を乗り越え、少年が本当の強さと優しさを見につけていく成長物語。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年11月01日

『ジグソウ:ソウ・レガシー』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米・カナダ (92 min)
【監督】ピーター・スピリエッグ、マイケル・スピリエッグ(デイブレイカー)
【出演者】
マット・パスモア
カラム・キース・レニー(ブルーに生まれついて、天才スピヴェット、X-ファイル:真実を求めて、バタフライ・エフェクト)
クレ・ベネット(スティール)
ハンナ・エミリー・アンダーソン、ローラ・ヴァンダーヴォート、マンデラ・ヴァン・ピープルズ、ポール・ブラウンスタイン
【あらすじ】“さあゲームをしよう、お前たちは嘘をついてきた 罪を告白せよ、真実のみがお前らを自由にする 生きるか死ぬか、お前たち次第だ” 鎖に繋がれた5人の男女は、ゲーム開始を告げられる。 一方、刑事のハロランとキース、検視官のローガンとエレノアは、10年前に死んだはずの連続殺人犯ジグソウそっくりの手口で殺された死体を目にする…。 大ヒットショッキング・スリラー第8弾


『ジグソウ:ソウ・レガシー』象のロケット
『ジグソウ:ソウ・レガシー』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Lions Gate Entertainment Inc. All rights reserved.
Photo credit: Brooke Palmer


jigsaw1.jpg 【解説と感想】近年、長すぎるタイトルの映画や本が多いなか、サイコスリラーの大御所「ソウ」シリーズは「ソウ」、「ソウ2」〜「ソウ6」と、サッパリ短い。「ソウ」という言葉に「SAWのこぎり(犯人が好んで使用する凶器)」「SAW見た(いつも誰かが全てを見ていた!)」「JIGSAWジグソウ(カリスマ殺人鬼ジョン・クレイマーの通称)」、その他いくつもの意味が込められているという。前作は「ソウ ザ・ファイナル 3D」で、ようやく完結したと思ったのに、新作は「ジグソウ:ソウ・レガシー」というタイトル。「ラスト」や「ファイナル」の後、早々に「ゼロ」や「ファースト」が来る時代の流れに、「ソウ」も乗っかっちゃったのだろうか。まだまだ続きソウ…。

毎度、数人の男女が知らぬ間に拉致され目覚めたらなぜか監禁されていて、ゲームに勝たないと死ぬよっと、ブサイクな人形に脅される。今回も男3人と女2人がバケツを被せられ、鎖に繋がれている。ワンパターンだが、殺し方が残忍で凶器もマニアックだし、犯人ジグソウの手下が誰なのかを探す楽しみがあるし、何より欠かさず見に行くコアなファンがいるからこそ続いて来たのだろう。劇中でも「ジグソウ信奉者」が多いと自画自賛している。

jigsaw2.jpg ソウ好きな人は、1:変態。2:拷問道具マニア。3:サド。4:忍者部屋のようなカラクリもの好き。5:パニック状態の人間を観察するのが大好き。6:悪を成敗したい人。7:正義の味方。8:スプラッタ殺人好き。9:謎解き好き…と、いろいろ考えられる。もちろん7の私は、ジグソウを演じている俳優トビン・ベルの顔が大好きだ。あのモグモグした口元に見とれてしまう。まるで聖職者のように崇高な顔つきで、心から懺悔し「これから一生、世のため人のために尽くします!」と約束すれば、許してくれそうな気がしてくる。

ソウ、そこが面白いのだ。ワケの分からない気持ち悪いホラーなんか見たくないよと思う人も、ジグソウには多少共感できるかもしれない。なぜなら、被害者はみな何かしらの罪を犯しているのに加害者だという自覚がなく、その罰をまだ受けていないのだから。彼らを「天に変わってお仕置きよっ!」と拷問してくれるのが、必殺仕事人ジグソウなのである。

しかし、「ソウ」シリーズの殺し方は凄まじい。今回一番強烈だったのはラストシーン。見てからだいぶ経っているのに、切り口がアップになった光景が目に焼き付いて離れない。水族館に似た生物がいて、ウッヒャーだ! 鑑賞後、寿司屋はやめた方がいいと思う。そもそも流血が苦手な方は見に行かないだろうが、念のため。

多少そのえげつなさに慣れてきたせいか、ジグソウが閻魔(エンマ)様(死者が生前に犯した罪を全て知っていて、地獄へ落とすか否かを判断する冥界の王)のようにも感じられて、ちょっと楽しくなってしまう。
謎解きしながら進むストーリーの運びはスムーズで、ゲームの駆け引きや、縛られた男女が恐れおののく表情もいい、裁決方法にも異論なし、殺人装置や小道具も凝っている。被害者然とした罪人に阿鼻叫喚の天誅を下す、ソリッド・シチュエーション・スリラー第8弾。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年09月06日

『ホリデイ・イン 松竹ブロードウェイシネマ』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米 (122 min)
【出演者】
ブライス・ピンカム
コービン・ブルー(ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー)
ローラ・リー・ゲイヤー、ミーガン・ローレンス、ダニー・ルティリアーノ、ミーガン・シコラ、モーガン・ガオ
【あらすじ】ニューヨークのナイトクラブの舞台に立っていたジム、ライラ、テッドの3人組。 ジムは恋人ライラと別れ、コネティカット州の農場で暮らし始めるが、借金だらけに。 歌って踊れる地元の女性リンダと恋に落ちたジムは、農場をホテルに改築し、祝日だけショーを開催しようと思いつく…。 ブロードウェイ・ミュージカルの舞台収録。 ≪愛に生きるか夢に生きるかこの物語で決めて下さい≫
音楽・作詞:アーヴィング・バーリン
演出・脚本:ゴードン・グリーンバーグ
脚本:チャド・ホッジ

『ホリデイ・イン 松竹ブロードウェイシネマ』象のロケット
『ホリデイ・イン 松竹ブロードウェイシネマ』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)BroadwayHD/Joan Marcus Photography/松竹 All rights reserved.

holidayinn1.jpg 【解説と感想】先日、ニューヨークの新作ブロードウェイ・ミュージカルを映画用に撮影し松竹系映画館で公開する「松竹ブロードウェイシネマ ホリデイ・イン」の試写会へ行ってきた。ニューヨークへ行かずとも日本の映画館で日本語字幕付きで見られるなんて、お得で有難いことこの上ない。是非シリーズ化して欲しいものだと思う。ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET=メト)の最新公演を映画館で楽しむ「METライブビューイング」も毎回楽しみに見ているので、期待は大きい。

本作は、1942年製作のビング・クロスビーとフレッド・アステアが主演のミュージカル映画『スイング・ホテル(原題:ホリデイ・イン)』を舞台化したものだという。しかし、私は1942年版を観ていなかったので、「ホリデイ・イン」の試写の後、「スイング・ホテル」を鑑賞した。

主演のベテラン男優2人の渋さと粋を感じるモノクロのオリジナル「スイング・ホテル」に比べると、舞台版「ホリデイ・イン」(もちろんカラー)はコミカルで若さと活気がある。歌、踊りはどちらもハイレベル。どちらがいいのかはそれぞれだろうが、私は舞台版の歌とダンスの方が好きだった。
 
holidayinn3.jpg 恋人ライラ(ミーガン・シコラ)、親友テッド(コービン・ブルー)と共にナイトクラブの舞台に立っていたジム(ブライス・ピンカム)。彼はライラと別れ郊外の農場で暮らし始めるが、借金はあるし退屈で寂しい。 地元の女性リンダ(ローラ・リー・ゲイヤー)と恋に落ちたジムは、農場をホテルに改築し祝日だけショーを開催しようと思いつく。そこへ、親友テッドがやって来て、リンダの歌とダンスの才能に目をつけるという物語。

個性的な声の家政婦ルイーズ(ミーガン・ローレンス)が笑わせてくれて、かなりの活躍をすることや、あまりにも有名な劇中歌「ホワイト・クリスマス」をリンダが泣きながら歌うシーンなど、オリジナルとは少し異なるストーリーの運びだが、その変更は成功していると思う。面白かった!

劇場に芝居を見に行くと、S席でも細かいところが分かりにくい時もある。オペラグラスを使うと舞台全体が見えない(メガネ型オペラグラスを買おうと思うが、迷って選びきれない!)。ところがスクリーンだと、11台を超えるカメラで撮影したというだけに、ここぞという場面がアップになり表情もはっきりわかるから、気が散ることなくストーリーに感情移入できる。「ホリデイ・イン」で行われるショーは華やかで、最前列で舞台を見ているという満足感と臨場感がある。

普段はニューヨークの舞台に出演している歌手やダンサーを、彼らが休日の祝日だけ郊外(車で1〜2時間ほどだろうか)の劇場「ホリデイ・イン」へ連れて来るなんて、今どきのアイデア隙間ビジネスのようだ。愛と夢と生活を両立させるにはどうすればいいのかというテーマにも、1942年当時より今の方が、共感できる男性は多いのではないだろうか。自分が何を求めているのかに気づかない登場人物たちが、本当の幸せを見つけるブロードウェイの華麗なラブコメディ・ミュージカル。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年07月08日

『ブランカとギター弾き』お薦め映画

★★★★★ 2015年製作 伊 (77 min)
【監督】長谷井宏紀
【出演者】
サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ、ジョマル・ビスヨ、レイモンド・カマチョ
【あらすじ】フィリピンの路上で暮らす孤児の少女ブランカは11歳。 盗みや乞食をして暮らす彼女の夢は、普通の家で暮らし学校へ行くことだった。 ある日彼女は、お母さんをお金で買うことを思いつく。 そんな時、路上でギターを弾く陽気な盲目の老人ピーターと出会う。 ピーターのギターでブランカが歌うと順調に稼げるようになり、貯金も少しずつ増えていったのだが…。 ヒューマンドラマ。 ≪お母さんはいくらで買えるの?≫

ヴェネツィア国際映画祭マジックランタン賞・ソッリーゾ・ディベルソ賞、他多数受賞

『ブランカとギター弾き』象のロケット
『ブランカとギター弾き』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2015-ALL Rights Reserved Dorje Film

blanka1.jpg 【解説と感想】街頭で、自治会で、ダイレクトメールで、新聞やテレビ、電車の広告などでも、災害や福祉目的の様々な寄付が募られている。よく見かけるのが、発展途上国の貧しい子どもたちの写真だ。この子たちに、学校を、家を、食糧を、薬を、毛布をと呼びかけている。その寄付は多少なりとも役立っているはずだが、助けが必要な子どもは一向に減らない…。

本作は、フィリピンの路上生活者に焦点を当てた物語だ。年配者ならホームレス、子どもならストリート・チルドレンと呼ばれる彼らには、家も家族もない。彼らを産んだ母親も同様で、孤児院の存在など知らないのかもしれない。孤児たちは物乞いや盗みをして生きるしかなく、児童買春や臓器売買の危険にも晒されることとなる。成長したら大きな犯罪にかかわる率も高い。まさに貧困の連鎖である。

blanka2.jpg 主人公は11歳の孤児の少女ブランカ(サイデル・ガブテロ)。スリや物乞いをして何とか暮らしている。彼女が出会う、盲目のギター弾きピーター(ピーター・ミラリ)は陽気な老人。彼もホームレスだが、寝ている時に小銭を盗まれても大して悩まない。また明日稼げばいいのだから。そんなピーターの弾くギターでブランカが歌うと、いつもより儲かってしまう。

姉御肌でやり手のブランカだが、それでもまだ11歳。彼女は「お金を出せば母親が買える」という大人の軽口を信じてしまう。ブランカの夢は、ごくごく普通の暮らし。家族がいて、家があって、学校へ行くこと。小銭を貯めて母親を買おうと、彼女は俄然「仕事」にやる気を出す。稼ぐために、ブランカとピーターは旅に出ることになった。

blanka3.jpg 2人の旅はまさに冒険。思いがけなくラッキーなこともあれば、恐ろしく危険な目にも遭う。ピーターとブランカの、爺さんと孫のような関係は微笑ましいが、ピーターが高齢なだけに、いつ彼が倒れるかと冷や冷やしてしまう。実際のところ、素朴でユーモラスなピーター役の老人は俳優ではなく、マニラの地下道でギターを弾いていた人物で本作完成後に亡くなったそうだ。孤児を演じているのも、ブランカ役の少女以外は、スラムの子どもたちだという。

blanka4.jpg 子どもを買う大人はいるが、母親を買おうとする子どもなんて初めて聞いた。いくらお金を積んでも買えないのが、家族というもの。金目当てで寄ってくる者は、家族であっても家族ではない。お金があってもなくても、大人でも子どもでも、本当の家族を得られない人は大勢いる。そう考えると、何とも切なくなってしまう。せめてスラムの子どもたちが安全に暮らせる孤児院や、真っ当な養子先が見つかることを願うばかりである。

驚くべきことに、本作の監督は日本人。そういえば、インドのスラム育ちの少年が主人公の「スラムドッグ$ミリオネア」も、イギリス人監督の作品だった。少女の歌と老人のギターの音が耳に残り、美しい色彩の映像が印象的なロードムービー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 17:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする