2018年08月05日

『判決、ふたつの希望』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 レバノン・仏 (113 min)
【監督】ジアド・ドゥエイリ
【出演者】アデル・カラム、リタ・ハーエク、カメル・エル=バシャ、クリスティーン・シュウェイリー、カミール・サラーメ、ディヤマン・アブー・アッブード、タラール・アル=ジュルディー
【あらすじ】レバノンの首都ベイルート。 住宅街で違法建築の補修作業を行っていたパレスチナ難民の現場監督ヤーセル・サラーメと、補修工事をされたキリスト教系政党の熱心な信者であるレバノン人男性トニー・ハンナの間でトラブルが発生。 ちょっとした口論は暴力沙汰から裁判となり、やがて国を二分する騒乱へと発展してゆく…。 法廷ドラマ。

ベネチア国際映画祭最優秀男優賞、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、他多数受賞

『判決、ふたつの希望』象のロケット
『判決、ふたつの希望』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL - EZEKIEL FILMS - SCOPE PICTURES - DOURI FILMS PHOTO(c)TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL All rights reserved.

insult1.jpg 【解説と感想】 大河ドラマの「西郷どん」が、ようやく革命家へと変貌し始めた。かつては戊辰戦争の憎しみが残り、薩摩(鹿児島:明治政府側)と会津(福島:幕府側)の人は、お互いの方言を毛嫌いし、結婚もできなかったという昔話まであった。だが明治維新とその後の西南戦争以来、日本で内戦は起こっていない。しかしたとえば、2〜30年前まで殺し合っていた民族同士が、隣近所に住んでいたらどうだろう?

insult4.jpg 中東レバノンの首都ベイルート。住宅街で補修作業を行っていたパレスチナ難民の現場監督男性ヤーセル・サラーメ(カメル・エル=バシャ)と、地元住民でキリスト教系政党の熱心な信者であるレバノン人男性トニー・ハンナ(アデル・カラム)の間で、些細なトラブルが起こった。

第二次世界大戦で大変な目に遭ったユダヤ人は世界各国から同情され、イスラエルが建国(1948年)されたが、そこに住んでいたアラブ人は追い出される形となりパレスチナ難民となった。中東では常に紛争が起こっており、原因を遡れば紀元前まで、近代ならヨーロッパの植民地時代や第二次世界大戦に繋がり複雑極まりなく、詳細な感情は理解し難い。現場監督ヤーセルは、レバノン(1941年建国)へ逃れて来たイスラム教徒のパレスチナ難民。レバノンには中東でキリスト教徒が一番多く住んでいると言われており、特にトニーたちが支持するキリスト教系の政治家は、異教徒の難民らを追い出したいらしく熱弁を奮っている。レバノン内戦(1975〜1990)では、パレスチナ難民とキリスト教徒の間でも抗争があった。内戦が終わっても宗教と民族による対立は現在でも続いているからこそ、トニーはヤーセルを見ただけで嫌になったのだ。

insult2.jpg いい歳をした男同士のちょっとした口論は暴力沙汰から裁判となり、やがて国を二分する騒乱へと発展してゆく。こんな大事になるとは思っても見なかったが、裁判で白黒つけねばならず引っ込みがつかなくなってしまった。常識的に見て加害者であるはずのパレスチナ難民ヤーセルに同情が集まり、被害者のレバノン人トニーが難民に理解のない横暴な男に見えてしまう。この物語では、被害者と加害者の立ち位置が何度も入れ替わるところが味噌になる。

insult3.jpg 世代や年齢、時には性別でも見方が変わる。ヤーセルとトニー、そして年配のトニー側弁護士ワハビー(カミール・サラーメ)は、直接的に内戦を体験しているだけに過去へのこだわりが強く、トニーの妊娠中の若い妻シリーン(リタ・ハーエク)と、ヤーセル側の若き人権派女性弁護士ナディーン(ディヤマン・アブー・アッブード)は、できればお互い仲良くやっていきたいと思っている。世界各地の紛争地域でも体験世代と端境期の世代では感覚がかなり違うはずだが、次世代がどう感じるかは教育次第。トニーは近々生まれ来る我が子に、この裁判のことを将来どう説明するのだろうか。

監督ジアド・ドゥエイリは1963年生まれの、レバノン内戦を経験したレバノン人。 これからこのような映画がどんどん世界へ出て行き、自分たち当事者と次世代へ、未来への思いを伝えていくことになるのだろう。誰が悪いとも正しいとも、被害者とも加害者とも言えなくなってしまう社会派ヒューマンドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 

 
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2018年07月11日

『タリーと私の秘密の時間』お薦め映画

★★★★★ 2018年製作 米 (95 min)
【監督】ジェイソン・ライトマン(JUNO/ジュノ、マイレージ・マイライフ、サンキュー・スモーキング、ヤング≒アダルト
【出演者】
シャーリーズ・セロン(スタンドアップ、マッドマックス 怒りのデス・ロード、モンスター、ヤング≒アダルト)
マッケンジー・デイヴィス(ブレードランナー 2049、オデッセイ)
マーク・デュプラス(ラザロ・エフェクト)
ロン・リヴィングストン、アッシャー・マイルズ・フォーリカ、リア・フランクランド
【あらすじ】
産休中の女性マーロは長男と長女の世話で大忙しだが、多忙な夫ドリューは家事も育児もマーロに任せきり。 兄の提案で、次女を出産した後は思い切って夜間のベビーシッターを頼むことに。 22時半に現れたのは驚くほど若い女性タリーだったが彼女の仕事は完璧で、マーロとタリーはいつしか友情を育んでいく…。 ヒューマンドラマ。

『タリーと私の秘密の時間』象のロケット
『タリーと私の秘密の時間』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 TULLY PRODUCTIONS.LLC. All rights reserved.

tully1.jpg 【解説と感想】 ハリウッド女優シャーリーズ・セロンの近年のイメージは、「カッコイイ大人の女性」。スタイル抜群で美人なのは言うまでもない。そんな彼女は役作りのため、2003年の「モンスター」では15キロほど増量したらしいが、本作でも臨月の妊婦を演じるために16〜20キロも増量したという。2015年の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(これはこれでイメージを覆す強烈キャラだったが)や、2017年の「アトミック・ブロンド」で演じた強い女とは対極にあるようなダラっとした体を見て、最初は誰だか分らなかったほどだ。

tully2.jpg 産休中の主人公マーロ(シャーリーズ・セロン)は、幸せ太りしているのではない。とにかく疲れ切っている。おませな長女サラは手がかからないものの、長男ジョナは情緒不安定でキレると暴れて手が付けられない。夫ドリュー(ロン・リヴィングストン)は真面目に働き、家事や育児にはあまり手を出さない一般的な男。マーロも仕事を持っているのだが、夫に不満をぶちまけたりせず何もかも自分でこなす、いわゆる貯め込むタイプ。そんな妹を見かねて裕福な兄クレイグ(マーク・デュプラス)が、出産祝いに夜間専門のベビーシッターを用意してくれた。他人に家事・育児を任せることに抵抗感があったマーロも、次女ミアが産まれて限界を感じ、ようやく依頼する気になった。

tully4.jpg 現れたのはベテランのおばさんではなく、意外にも20代の若い女性タリー(マッケンジー・デイヴィス)だった。タリーは有能で、仕事以上のことまで気を利かせてやってくれる。マーロはようやく夜眠れるようになり、元気も笑顔も取り戻した。かなり年下なのに、タリーは姉のようにマーロの不安を受け止めアドバイスしてくれる。マーロにとってタリーは、唯一無二の親友になった。しかし、めでたしめでたし…とはいかない。あっと驚く結末が待っているのだが、詳しいことは語らないでおこう。

tully3.jpg これから結婚して親になるかもしれない方、今まさに家事や育児で疲れ果てている方、もうこんな大変な時期を乗り越えた方、その他忙しい思いをしているあらゆる女性の共感を呼ぶストーリーだ。主婦ってお母さんって、こんなに大変なのだと身につまされる。しかもこれはアメリカ映画。日本なら、もっともっと大変だろうと思う。

tully5.jpg マーロの夫の印象は薄い。登場が少ないのは、彼がほとんど家のことをやっていないからでもある。気持ちは優しく一見協力的だが、普段はほとんど帰宅してメシを食って寝るだけの彼は、どんなに家事や育児が大変か、妻が仕事との両立に悩んでいること、ボロボロに疲れていること、キレイにしたくてもできないこと、どんどん脂肪がついてしまうこと…、ああ、数え上げればキリがないが、そんなことにまるで気づいていない。そう、夫に悪気はないのだ。だから、妻はちゃんと分かるように言わなくてはならない。「あなたも手伝って!」と。限界が来て鬼の形相になる前に! 誰もがベビーシッターを雇える訳ではない。マーロは子育てより先に、夫を育てておくべきであった。夫の仕事が忙しい、忙しくないはあまり関係がない。そこはやる気一つである。

「完璧主義のお母さん、一人で頑張りすぎないで!」と思わず声をかけたくなる。子育ての修羅場だけでなく、その時期の微妙な夫婦関係、年齢と共に変わっていく人生観や幸福感、周囲の気遣いなど、細かい点までリアルに描いてあるのは、脚本家自身の子育て体験から生まれた作品ということもあるのだろう。あらゆる世代のカップルに見て頂きたい家族のドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年06月07日

『羊と鋼の森』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (134 min)
【監督】橋本光二郎(orange オレンジ)
【出演者】
山崎賢人(斉木楠雄のΨ難、ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章、氷菓、アナザー Another)
鈴木亮平(ふたたび SWING ME AGAIN、俺物語!!、花子とアン、忍びの国)
上白石萌音(舞妓はレディ、ちはやふる -結び- 、ちはやふる 下の句、ちはやふる 上の句)
上白石萌歌、光石研、吉行和子、三浦友和
【あらすじ】将来の夢が何もなかった少年・外村は、高校でピアノ調律師・板鳥に出会う。 彼が調律したその音に、生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、調律に魅せられ、その世界に、足を踏み入れていく…。 青春ドラマ。 ≪「羊」の毛で作られたハンマーが、「鋼」の弦をたたく。 ピアノの音が生まれる。 生み出された音は、「森」の匂いがした―≫
原作:宮下奈都 エンディングテーマ『The Dream of the Lambs』作曲・編曲:久石譲/ピアノ演奏:辻井伸行

『羊と鋼の森』象のロケット
『羊と鋼の森』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018「羊と鋼の森」製作委員会


hitsujimori1.jpg 【解説と感想】 ピアノは気温や湿度によって弦が膨張したり収縮したりして音が狂うため定期的な調律が必要で、通常は1年に1回程度プロの調律師に依頼する。プロのピアニストは世界各地のコンサートホールのピアノを弾くので、そのホールの調律師に任せたり、お気に入りの調律師を呼ぶのだという。調律師によって音色が微妙に変わるのだから重要な仕事だ。とはいえ、あくまでもピアノを弾く人が主役で、調律師は黒子である。

hitsujimori2.jpg 本作の主人公・外村直樹(山崎直人)は、高校生の時に学校のピアノを調整しに来た調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)と出会い、一瞬でその音色に魅せられ、調律師の道に進む。出会いは大事だ。外村は北海道の山奥育ちで、クラシック音楽には何の興味もなく、ピアノなんて触ったこともなかった。それでも板鳥の音にとてつもなく惹かれた。ピアノの音から森の匂いを感じたのだ。板鳥が腕のいい調律師だったことはもちろんだが、それが外村の耳に届いたということは、音を敏感に感じ取る耳があったということ。たぶん、自然の音に耳を澄ませて育ったからだろう。街の人間が知らない、森の微妙に変わる風や水の音、匂い、色、感触、などを彼は知っている。

hitsujimori3.jpg 調律の専門学校を卒業した外村は、地元・北海道にある、板鳥がいる江藤楽器に入社し、先輩の調律師・柳伸二(鈴木亮平)に付いて回って仕事を覚えることになった。そこで出会ったのがピアノを習っている高校生、姉・佐倉和音(上白石萌音)、妹・佐倉由仁(上白石萌歌)の姉妹(この2人の女優は実際に姉妹)。佐倉姉妹はプロではないのに、費用もそれなりにかかる調律を頻繁に依頼している。2人で1台のピアノをかなり弾きこんでいて、音の狂いにも敏感。本作は外村と佐倉姉妹の成長物語とも言えるので、それだけに姉妹女優の頑張りが微笑ましく映り、絶妙の配役に感じられた

江藤楽器のもう一人の調律師・秋野匡史(光石研)は、以前はピアニストを目指していた。耳が良いだけに自分の限界を知り、諦めたのだという。この会社は小さいが精鋭集団で、外村の成長を温かく見守っている。とくに板鳥の存在感は大きくて、東京だけが文化の中心地でないことを感じさせてくれるエピソードもある。

hitsujimori4.jpg外村は自分が一人前の調律師になれるのか、仕事を続けていけるのか、自信がなくて常に自問自答している。勉強熱心だからこそ悩む。専門職は続けられれば天職となるが、途中でやめたらつぶしがきかない。若い外村は、今なら他のいろんな仕事に挑戦できるだろう。中堅の柳も、例えば農家に転身したりするのもアリかもしれない。しかしベテランの板鳥や秋野は、もう調律師以外の仕事はできないような顔をしている。サマになるとはそういうことだろう。

hitsujimori5.jpg4月に入社した新入社員の方は、まだ慣れるのに精一杯の頃だろうか。先日公開された「OVER DRIVE」には、望まぬ部署に配属されたスタッフが愚痴る場面があった。望まぬ仕事でも前向きに挑戦してみる人もいれば、すぐ辞めてしまう人もいる。専門職でも自分のやりたい仕事ばかりが出来るわけではない。努力が報われない場合だってある。それでも、仕事に真摯に向き合う気持ちは無駄にはならない。結果を急ぐ若者たちへ「焦るな、結果は今後の君次第だ。」と語りかけているようなヒューマンドラマ。オリジナルのエンディング曲はじめ、ピアノの音にも魅せられる。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年05月06日

『モリーズ・ゲーム』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 米 (140 min)
【監督】アーロン・ソーキン
【出演者】
ジェシカ・チャステイン(ゼロ・ダーク・サーティ、オデッセイ、インターステラー、テイク・シェルター)
イドリス・エルバ(パシフィック・リム、マンデラ 自由への長い道、ダークタワー、テイカーズ )
ケヴィン・コスナー(13デイズ、ラブ・オブ・ザ・ゲーム、Mr.ブルックス〜完璧なる殺人鬼〜、アンタッチャブル)
マイケル・セラ、ジェレミー・ストロング、クリス・オダウド、ビル・キャンプ
【あらすじ】アメリカのコロラド大学を首席で卒業した女性モリー・ブルームが思い描いていたのは、冬季オリンピックのモーグル競技で金メダルを獲得し、法科大学院を卒業して会社を設立するという人生設計。 ところが、怪我で競技を断念した彼女は、ひょんなことからセレブたちが集うポーカールームの経営者となる…。 実話から生まれたクライム・サスペンス。
原作:モリー・ブルーム

『モリーズ・ゲーム』象のロケット
『モリーズ・ゲーム』作品を観た感想TB

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molly1.jpg 【解説と感想】飲む(酒)・打つ(ギャンブル)・買う(女)は男の甲斐性と言うが、破滅させるのもこの3つ。多少の嗜みは「文化」とも言えるが、昔も今も歯止めが利かなくなる人は多く、近年は「依存症」という病名まで付き治療の対象となっている。日本の大会社の役員がカジノで数十億円擦ったというニュースを覚えておられるだろうか。先日カジノ法案が成立し、日本でもリゾート型カジノが作られることになった。レジャー施設で遊ぶだけのつもりだったのに、ついつい賭けにハマってしまったということのないよう気をつけたい。

molly2.JPG さて本作の主人公は、トップアスリートから高額ポーカールームの経営者となり、一大スキャンダルを巻き起こした、実在(1978〜)のアメリカ人女性モリー・ブルーム(ジェシカ・チャスティン)。

今までこの女優にはあまり興味がなかったが、本作を見て、多用されている理由がやっと解かった気がした。大学時代のモリーは、前途有望なモーグル選手としてのオーラを放ち、なおかつ厳格な父親(ケヴィン・コスナー)との関係に悩む優秀な学生だった(若い!)。その後、ポーカー・ゲームのサロンの雑用係となり、徐々に洗練されていく。26歳でポーカークラブを経営するようになってからは、場を取り仕切る美貌の経営者としての貫禄十分。見た目も立場も変わっていくが、どんなモリーをも彼女は魅力的に演じていた。

molly3.jpg ハリウッドスターや映画監督、スポーツ選手、ミュージシャン、実業家ら富裕層がずらりと顧客リストに並び、最低の掛け金は1万ドル(約100万円)。オーナーの招待がなければ入室出来ない。一見さんお断りなのも、金がかかることも、口の堅さが求められるのも、枕営業をしないのも、高級クラブと同じ。ポーカーのシーンはスリリングで、ギャンブラー(マイケル・セラ)らの表情に惹き付けられる。莫大な金が動く場を提供してはいるが、モリーは大事な常連客を一文無しにすることまでは望んでいなかった。ほどほどに楽しんで金を落として欲しかったのだろうが、掛け金によっては金持ちでさえ破産するのがギャンブルの怖さである。

molly4.jpg モリーの裁判を引き受けた弁護士(イドリス・エルバ)とのやり取りで、モリーの性格や信条が浮かび上がってくる(原作はモリーの回想録だが…)。モリーが終盤で父親と顔を合わせるシーンには、ちょっとグッとくるものがあった。浮き沈みの激しい人生を送ってきたモリーだが、現時点で40歳。これからまだ幾波乱もあるかもしれない。何度でも這い上がる女性のガッツを感じる半生記。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2018年03月27日

『友罪』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (129 min)
【監督】瀬々敬久(64 ロクヨン 前編、感染列島、RUSH ラッシュ、8年越しの花嫁 キセキの実話)
【出演者】
生田斗真(脳男、先生! 、、、好きになってもいいですか?、予告犯、僕等がいた)
瑛太(サマータイムマシン・ブルース、嫌われ松子の一生、まほろ駅前多田便利軒、ワイルド7)
夏帆(天然コケッコー、うた魂♪、海街diary、きな子 見習い警察犬の物語)
山本美月、富田靖子、佐藤浩市、忍成修吾
【あらすじ】町工場で働くことになった、元週刊誌記者の男・益田と、同い歳の無口な男・鈴木は、同じ寮で暮らし少しずつ親しくなっていった。 ある事件をきっかけに益田は、17年前の連続児童殺人事件の犯人“少年A”が鈴木ではないかと疑い始める一方で、中学時代に自らが犯した罪を思い起こす…。 ヒューマン・サスペンス。 ≪心を許した友は、あの少年Aだった。≫
原作:薬丸岳

→『友罪』象のロケット
→『友罪』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)薬丸岳/集英社 (c)2018映画「友罪」製作委員会

yuuzai1.jpg 【解説と感想】たとえ法に触れなくても、罪(過失を含む)を犯したことのない人はいない。自分や家族の罪(道徳的罪であっても)には厳しく向き合うべきだが、他人の罪にはある程度、寛容にならなければいけないと思う。しかし何でも検索出来てしまう昨今では、マスコミやネットでの「社会的制裁」がどんどん大きくなっている。そういうことを仕事にしている人だって、清廉潔白ではないはずなのだが…。

yuuzai2.jpg 本作は、かつて「罪」を犯した人のその後を描いたストーリーで、少し前に公開になった「羊の木」と対になっているような作品だ。話が進むにつれ、誰もが1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件の衝撃を思い起こすだろうが、これはあくまでもフィクションである。主人公・益田純一(生田斗真)は生活に困窮し、寮のある工場で働くことになった。一緒に入社したのが同い年の鈴木秀人(瑛太)。ところが、ひょんなことから益田は、鈴木が17年前の連続児童殺人事件の犯人“少年A(本名:青柳健太郎)”ではないかと疑い始めた。

yuuzai3.jpg 「暗い過去」を持つ者が多数登場する。益田自身は、中学時代に同級生を救えなかったことに負い目を感じている。鈴木と親しくなる女性・藤沢美代子(夏帆)と、少年Aの矯正担当だった白石弥生(富田靖子)にも、悔やまれる過去がある。タクシー運転手の山内修司(佐藤浩市)は、息子(石田法嗣)の罪を背負っている。そうは言っても、少年Aの罪と彼らが抱える罪では比較にならない。登場人物たちが時折見せる爽やかな笑顔や、和ませるエピソードが、重いストーリーを多少なりとも軽減させている。

yuuzai4.jpg 鈴木は意外と人懐っこく、結構いい奴のようにも思える。彼の内面について詳しく描かれていないから、彼がもし少年Aだった場合の「罪の意識」がどれほどのものかを知ることは出来ない。少年Aこと青柳は、医療少年院出所後も身元がバレないよう当局に厳重に保護されていたらしい。二度と同様の事件を起こさぬよう見守り、社会復帰を応援するためにあるのが少年院や少年法だからである。被害者家族が彼を許すはずはないが、周囲の思惑とは関係なく、既に彼は一般人として社会生活を送っている。あなたも私も殺人の加害者になる確率は低いが、多数いるであろう「元少年A」と偶然関わることはあるかもしれない。

yuuzai5.jpg メインは鈴木が果たして「少年A」なのかを巡る物語だが、私が心引かれたのはタクシー運転手一家の話だ。運転手・山内の息子は、過失事故で子ども2人の命を奪った。山内は嫌がられながらも被害者遺族への見舞いと送金を欠かさない。ところが、加害者である息子自身は結婚しようとしていて、山内にはそれが許せない。自分も息子も一生幸せになってはいけないと戒める父親と、償いは続けるが自分だって幸せになりたいと願う息子、理解ある息子の結婚相手、心の中では息子の幸せを願う母親(西田尚美)。あなたは誰に共感するだろう。自分の罪を償うということと、加害者の未来について考えさせられる問題作。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 12:16| Comment(0) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする