2012年03月24日

『アーティスト』お薦め映画

★★★★★ 2011年製作 仏(101 min)
【監督】ミシェル・アザナヴィシウス
【出演者】ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、ベネロープ・アン・ミラー、ミッシー・パイル
【あらすじ】1927年、ハリウッド。 サイレント映画の大スター、ジョージとエキストラ女優のペピーは、短い共演シーンの中で互いの存在を意識する。 1929年、セリフのあるトーキー映画が登場するが、サイレント映画にこだわり続けるジョージは観客に見放され落ちぶれていく。 一方、トーキー映画の人気女優となったペピーは、彼を復活させようと陰ながら助力するのだが…。 白黒&サイレントで描くロマンティック・ラブストーリー。
アカデミー賞作品賞・主演男優賞・監督賞・衣装デザイン賞・作曲賞、ゴールデングローブ賞作品賞・主演男優賞・オリジナル作曲賞、他多数受賞
『アーティスト』象のロケット
『アーティスト』作品を観た感想TB

画像(C)La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions - uFilm All rights reserved.

artist1.jpg 【解説と感想】エネルギー革命、技術革命という生活が便利になる進化の陰で、必ず絶望し泣く人がいた。しかしデジタル化が進んだ今でも、活版印刷で名刺を作る人、昔の一眼レフカメラで写真を撮り自宅で現像する人、レコードをコレクションしている人、DVD化されている映画をわざわざ映画館へ観に行く人がいる。なぜか? そこには新しいものにはない味があるからだ。その感覚は曖昧で数値化しにくいものである。

ところが、白黒のサイレント映画である本作は、今年のアカデミー賞作品賞・主演男優賞など世界の映画賞を総なめにして数字的にも分かりやすい結果を出した。テリア犬のアギーまでがカンヌ国際映画祭でパルムドッグ賞を受賞して笑いを誘った。快挙である。

artist3.jpg 俳優ジョージ(ジャン・デュジャルダン)は、もうトーキーの時代だよと誰が言っても耳を貸さず、サイレント映画にこだわり続けた。それも一つの生き方だが、世界大恐慌の影響で生活もままならなくなった。一方、ペピー(ベレニス・ベジョ)はトーキー映画で一躍スター女優となった。彼女はサイレント映画の時代にはエキストラだったので、無理なく抵抗なくトーキーに移れたのかもしれない。声を出すのと出さないでは演技方法が大きく異なるからだ。

セリフを発しない俳優の演技、ダンス、印象的な音楽が白黒のスクリーンを鮮やかに彩り、短い挿入字幕だけでストーリーがダイレクトに伝わってくる。主演のこの二人、ちょっとレトロな顔立ちだ。躍動する頬、大きな口、よく動く目、力強い手、哀愁を漂わせる背中、リズミカルにタップを踏む足…、全身で声なきセリフを発している。

新しいものが持てはやされ、古い物は廃れてしまう。特に現代ではその速度が増していて、あっという間に流行遅れになってしまう。老舗の味や着物の柄も少しずつ変化しているくらいだから、時代を受け入れることも必要だ。今持っているものを、大事にするか、捨てるか、改良するか、新しいものを生み出すかで、未来は大きく変わってくる。

artist2.jpg ジョージの主演映画にペピーがエキストラで出演し、何度も取り直しになってしまう印象的なシーンがある。手と手が触れた瞬間、心が一つになる運命の出会いだ。だが二人の恋はなかなか進展しない。ジョージとペピーが共に歩む道はないように思える。忘れられたスターが復活する秘策はあるのか? あっと驚く展開は、映画の歴史に裏付けされている。

最新の特撮技術に驚かされていた昨今だが、サイレント映画にもトーキー映画にはない素晴らしい表現力がある。世の中の流れが全て同じ方向では恐ろしいし面白くない。ミシェル・アザナヴィシウス監督のガッツと、ジョージとペピーの映画人生を賭けたラストに拍手喝采! 幸せな気持ちで映画館を後に出来る、That's Entertainment!なお薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 

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2012年01月31日

『ドラゴン・タトゥーの女』お薦め映画

★★★★★ 2011年製作 米 (158 min)
【監督】デヴィッド・フィンチャー
【出演者】ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ステラン・スカルスガルド、スティーヴン・バーコフ、ロビン・ライト、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
【あらすじ】スウェーデン・ストックホルム。 雑誌「ミレニアム」に財界汚職事件の告発記事を書いたジャーナリストのミカエルは、名誉棄損で訴えられて敗訴し現在休職中。 彼は財閥の元会長ヘンリックから、40年前に起きた一族の娘ハリエット失踪事件の真相究明を依頼される。 一族の住む島ヘーデスタへ向かったミカエルは、自分の身辺調査を担当した女性調査員リスベットを助手に雇い、事件を洗い直すが…。 ミステリー。 R-15。

『ドラゴン・タトゥーの女』象のロケット
『ドラゴン・タトゥーの女』作品を観た感想TB

dtatoo1.jpg 【解説と感想】リメイク作品は独創性ではオリジナルには敵いっこないが、そんな心惹かれるストーリーだからこそリメイクされる。同じ題材を使って全く新しい作品を生み出したいという意欲と、ある程度の集客が望めるという利点などがあるのだろう。しかし正直なところ、何のためにリメイクしたのか分からない、ガックリ来るような作品もある。

本作は、2009年製作のスウェーデン映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のリメイクである。あまり馴染みのない俳優がほとんどだし、お子様には見せられないショッキングな内容だったが大評判。北欧の重厚なミステリーというのが新鮮で、とにかく全身タトゥーの謎めいたヒロイン、リスベットの強烈なキャラクターに引き込まれた、ピカイチ作品だ。

dtatoo2.jpg 今回のリメイクは、オリジナルと互角の面白さであった。 雑誌記者ミカエル(ダニエル・クレイグ)が女性調査員リスベット(ルーニー・マーラ)を助手に、40年前に起きた富豪ヘンリック(クリストファー・プラマー)一族の娘ハリエット失踪事件の真相に挑むというストーリーは同じだが、オリジナルと違う展開も楽しめる。

dtatoo3.jpg 全体的な印象として、艶っぽい。 この艶っぽさを醸し出しているのは、ミカエル役のダニエル・クレイグである。オリジナルでミカエルを演じたミカエル・ニクヴィストは、生真面目でお人好しのジャーナリスト役が似合っていたが、こんな色気はなかった。

古女房然とした恋人が「ちょっとぉ、ワタシ明日帰るのよ。ベッドに来ないの?」と抜かした時の、ダニエル演じるミカエルの表情には笑った。
仕事一徹の硬派のように見えて来るもの拒まず。立派な胸板を無駄にしない拷問シーンもあるが、007ジェームズ・ボンドとは一味違う頭脳戦を見せてくれる。

dtatoo5.jpg ルーニー・マーラは、本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも頷ける体当たりの演技。オリジナルでリスベットを演じたノオミ・ラパスほどの凄味はないが、若干の可愛らしさが垣間見えるタイミングが絶妙で、新しい展開にも気持ちよく入って行ける。色っぽいとは言い難いが、リスベットにこれ以上の色気は不要なのだ。

dtatoo4.jpg ミカエル役はダニエル・クレイグ、リスベット役はノオミ・ラパスが私の好みだが、ストーリーも役者も、皆さん好みが分かれることだろう。ラストの印象も違っていて、オリジナルでは温かみを感じたし、リメイクでは甘酸っぱさを感じた。いずれにしろ甲乙つけがたい極上のミステリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


http://fanblogs.jp/rubeus/archive/16/0
http://piyomame.exblog.jp/17842134/
http://blog.livedoor.jp/irigomafair-norimakimame/archives/6086988.html
http://hobomovie.exblog.jp/15754541/
http://kyoukensatou.blog37.fc2.com/blog-entry-777.html
http://blog.goo.ne.jp/pa-da/e/14e26a9c9b2eb25a736c5e726a625339
http://watchmovies.seesaa.net/article/264633239.html
http://blog.livedoor.jp/hinokio603/archives/51389397.html
http://trpshionoya.blog10.fc2.com/blog-entry-2920.html


 
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2011年11月27日

『ピアノマニア』お薦め映画

★★★★★ 2009年製作 オーストリア・独 (97 min)
【監督】リリアン・フランク、ロベルト・シビス
【出演者】シュテファン・クニュップファー、ピエール=ロラン・エマール、ラン・ラン
【あらすじ】ドイツ人調律師シュテファン・クニュップファーは、老舗ピアノメーカー・スタインウェイ社の技術主任。 オーストリア・ウィーンを代表するコンサートホール“コンチェルトハウス”で行われるピアノ演奏の調律の責任を担う他、世界各国の音楽祭に参加するクライアントに同行することもある。 ピエール=ロラン・エマールが演奏するJ.S.バッハ『フーガの技法』のCD録音時の調律を任された彼の1年間を追う音楽ドキュメンタリー。

→『ピアノマニア』象のロケット
『ピアノマニア』作品を観た感想TB

画像(C)OVAL Filmemacher / WILDart FILM All rights reserved.

pianomania1.jpg【解説と感想】ピアノの調律師とはピアノのメンテナンスを行う技術者である。ピアノのあるご家庭なら、年に一度くらいは来てもらうだろう。ピアノは乾燥や湿気に弱く、ちょっとしたことで音が狂う。調律に機械を使用する場合もあるが、耳が良いに越したことはない職業だ。

本作はドイツ人調律師シュテファン・クニュップファー(1967〜)が、フランス人ピアニストのピエール=ロラン・エマール(1957〜)が出すCD「J.S.バッハ:フーガの技法」録音時のピアノ調律を担当した1年間を追ったドキュメンタリーである。

イメージ通りの完璧な音の響きを求めるピアニストの注文の意味を瞬時に理解し、卓越した技術と工夫、そして感性で応える。バッハはピアノがなかった時代の作曲家なので、「チェンバロ(バッハの時代のピアノのような楽器)風の音」を出したいと懇願されれば、何とかその音に近づけようと試行錯誤する。
スタインウェイ245番のピアノに、ピアニストが満足できていないようだと見ると、予備に用意した780番と弾き比べた上で、どちらかを選んでもらう。

顧客の要望には最大限の努力をして応えるが、ホールの大きさに応じてピアノの向きを変えたり、オーケストラと共演する場合などは、ピアニストに自分の意見を提案したりする。全て顧客のためであり、最良の音を響かせるためだ。

pianomania2.jpg 根気強く注文に応じるシュテファンは、ユーモアの才能があり笑顔が印象的。エマールは録音で気が張りつめているせいか、神経質で少々気難しい。ピアニストを志した時期もあるらしいが、自分は裏方で良かったと語るシュテファンの言葉は、調律師としてのキャリアを積んだ今の気持ちとしては本音だろう。本番を目前にしたピアニストが抱えるストレスを理解し、それを少しでも軽減しようとする思いやりが感じられる。

お気に入りの調律師を連れ歩くピアニストもいるという。難しい注文をする客ほど、ひとたび気に入られれば贔屓にしてくれる。シュテファンが、ラン・ラン、アルフレート・ブレンデル、ジュリアス・ドレイクなど、多くのピアニストから絶大なる信頼を寄せられているのは、技術はもちろん誠実な営業努力があってこそ。当たり前のようでなかなか出来ない働く人の理想の姿、どんな仕事にも通じる社会人としての基本がここにある。

世界中の調律師の中でも、きっと彼は最高クラスだろう。ピアニストと同じく、厳然たるピアノマニアで音のアーティスト。その仕事ぶりは見事だった。著名ピアニストの演奏も楽しめるので音楽好きな方はもちろん、これから社会へ出る学生の方々にも是非見て頂きたいお薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




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2011年11月26日

『ルルドの泉で』お薦め映画

★★★★ 2009年製作 (99 min)

【監督】ジェシカ・ハウスナー
【出演者】シルヴィー・テステュー、レア・セドゥー、エリナ・レーヴェンソン
【あらすじ】不治の病により車椅子生活を送っている女性クリスティーヌは、「ルルドの泉」への巡礼ツアーに参加する。 そこには病や孤独を抱えた人々が奇蹟を求めて集まり、真剣に祈りを捧げていた。 「普通の生活をしたい。」と訴える彼女に、「歩ければ幸せなのか?」と問う神父。 旅も終わりに近づいた頃、クリスティーヌの身体に変化が起こり始めるのだが…。 ある奇蹟のドラマ。

→『ルルドの泉で』象のロケット
→『ルルドの泉で』作品を観た感想TB

画像(C)2009(c)coop99 filmproduktion, Essential Filmproduktion, Parisienne de Production, Thermidor All rights reserved.

lourdes1.jpg【解説と感想】近年パワースポットブームである。神社仏閣、山や湖や滝、公園へ。なぜ、人はパワースポットへ行くのか? 恋愛運や金運アップなどの現世利益が目的の人もいれば、純粋に場のパワーや静けさを求める人もいるだろう。

難病のため車椅子生活を送っている本作の主人公クリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は、世界的パワースポットであるカトリックの聖地「ルルドの泉」へのツアーに参加する。そこには大聖堂があり、年間600万人が訪れる一大巡礼地・観光地となっている。 

彼女は神父に「なぜよりによって自分が車椅子生活を送らなければならないのか。普通の生活がしたい。」と涙ながらに訴えるが、決して熱心なカトリック信者ではないようだ。ところが、なぜか彼女に奇蹟が起こってしまう! そのシーンは決して神がかり的ではないし、彼女の喜びや不安もリアルに感じられる。

lourdes2.jpg クリスティーヌの介護担当の若い女性マリア(レア・セドゥ)は、最初は奉仕活動に喜びを感じていたが、慣れてくるとスタッフ同士の男女交際に気を取られてしまう。熱心なボランティア・リーダーの中年女性セシル(エリナ・レーヴェンソン)や、クリスティーヌが恋をする男性クノ(ブリュノ・トデスキーニ)が奉仕活動を始めた理由の詳細は語られないが、興味をそそられる。

神父や修道女の中には、奇蹟に懐疑的な者や、奇蹟を求めることに否定的な者もいる。ルルドの泉はローマ教会にも認められている聖地だが、聖職者の信仰と教義、奇蹟への認識にも幅があるようだ。

lourdes3.jpg 巡礼者たちは重い病や孤独など、解決策が見つからないような悩みを抱えており、ルルドの泉に最後の希望を託している。だが、彼女に奇蹟が起こったことを知ると素直に喜ぶことができない。「どうすれば奇蹟が起こるのか?」「なぜ自分ではなく彼女なのか?」「その奇蹟はずっと続くのか?」

舞台はルルドだが宗教色は薄く、女性好みのロマンティックな題材なのに、意地悪なくらい冷静な目で、奇蹟をめぐる人々の心の葛藤を描いている。一見地味だが、かえってこのくらいの方が、ヒューマンドラマとしては面白い。

奇蹟を求めるのではなく、今の自分の状況を受け入れ、魂の癒しを求めるべきだというようなことを神父が発言する。奇蹟が起こらない人への慰めの常套句のようにも聞こえるが、深い示唆に富む言葉でもある。

本作は、交渉の末ようやく現地での撮影許可が下り、オールロケを行ったという。ドキュメンタリーのように、洞窟での巡礼の様子をうかがい知ることができる。

果たしてクリスティーヌに起こった奇蹟は本物なのか? 奇蹟が起これば幸せになれるのか? 聖地への旅行気分が味わえて、奇蹟を求める意味について考えさせられるお薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
 

 

posted by 象のロケット at 16:06| Comment(0) | TrackBack(3) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月11日

『ブラック・スワン』お薦め映画

★★★★★ 2011年製作 米 (108 min)
【監督】ダーレン・アロノフスキー
【出演者】ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー
【あらすじ】ニューヨーク・シティ・バレエ団の新シーズンのオープニング演目は「白鳥の湖」。 芸術監督ルロイは、キャスティング・オーディションを実施する。 可憐で繊細な白鳥だけでなく、自由奔放にして邪悪な黒鳥にもなりきらねばならないこの役は、極めて難易度の高い表現力を求められる。 プリマに抜擢されたニナは、「白鳥としては理想的」だと言われるのだが…。 心理サスペンス。
アカデミー賞主演女優賞、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞他多数受賞
『ブラック・スワン』象のロケット
『ブラック・スワン』作品を観た感想TB

画像(C)2010 Twentieth Century Fox. All rights reserved.

bswan1.jpg 【解説と感想】 虚構の世界から現実に引き戻されることの一つに、「その道の世界」を描いているのに、出演者たちが「その道のプロ」のように見えないということがある。スクリーンの中で、専門知識がない「素人」から見て「プロ」らしく見えればそれで良いのだが、これが簡単なようで難しい。“らしく”見えないと、ストーリーよりそちらにばかり気を取られてしまう。

bswan3.jpg 本作はバレエ団の物語。王子役のダンサー以外の主要キャストはバレリーナではない。にもかかわらず、それがちっとも気にならない見事な演技と編集だったので、私は余計なことを考えずストーリーを追うことができた。バレエの経験があるナタリー・ポートマンはじめ、出演者たちはみなハードなトレーニングを積んだと言う。役に適したプロポーション作りも、バレエの練習も演技以前の問題ではあるが、彼らは全ての面で“バレリーナらしく”見えた。途方もない努力の賜物であろう。

主人公ニナ(ナタリー・ポートマン)が所属するニューヨーク・シティ・バレエ団は、新シーズンの演目を「白鳥の湖」に決定した。主役を演じるのは、プリマ・バレリーナと呼ばれるそのバレエ団の最高位のダンサー。清純なオデット姫こと白鳥と、魅惑的なオディールこと黒鳥を、一人二役で演じる容姿、テクニック、表現力が求められる。

bswan2.jpg ニナは元ダンサーの過保護な母親(バーバラ・ハーシー)の下、バレエ一筋の生活を送っている世間知らずなお嬢さんである。白鳥そのものだが、黒鳥への変身は難しいだろうと芸術監督ルロイ(ヴァンサン・カッセル)に言われてしまう。彼はこんなセリフで今まで何人のプリマと関係を持ったのかと、暗に匂わせる場面もある。人生すべて“芸の肥やし”。深みのある表現は技術だけでは生まれないのか?

だが様々な経験を積んで成長してめでたくプリマに選ばれても、花の命は短い。ニナの憧れだったプリマ、ベス(ウィノナ・ライダー)は冷たくお役御免を言い渡される。主役をめぐるダンサーたちの攻防は凄まじく、ニナはプレッシャーのあまり妄想に駆られていく。

一方、リリー(ミラ・ニクス)は白鳥というより黒鳥タイプのダンサーで、殻に閉じこもりがちなニナを夜遊びに引っ張り出したりもする。彼女たちはお互いに、自分にないカラーを持っている相手に複雑な思いを抱くのだ。

bswan4.jpg ナタリー・ポートマンは、本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞。役に打ち込むバレリーナの極限心理を全身全霊で演じきった。彼女の演じる聖女と悪女、あなたはどちらに心惹かれるだろうか。観る者の心を鷲掴みにするクライマックスは圧巻。バレリーナの執念が引き起こす美しきサスペンス・スリラー。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 12:52| Comment(0) | TrackBack(33) | 超お薦め映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする